小林一郎著「ガード下」の誕生-鉄道と都市の近代史(祥伝社新書)が糞だった(その3)
「ガード下の範囲」の本当の範囲
小林一郎氏は、ガード下の定義に建運協定を引用している(19頁~20頁)のだが、違和感がある。建運協定は、道路と鉄道の費用負担の話であって、貸付を受ける範囲とは関係ないよねー。
(本稿とは、直接関係ないが、建運協定については、 http://blogs.jsce.jp/2013_08_01_archive.html の仁杉巌元国鉄総裁のコメントが興味深い。)
ということで、その2でも引用した日本国有鉄道施設局用地課課長補佐 大村 充氏の「国鉄高架下の貸付けと管理について」から改めて正解となる部分を引用してみようと思う。(大村さんすいません。不都合があればお申し出ください。)
高架下を部外に貸し付ける場合、高架橋工作物本体の下の土地に属する部分が対象となるのが通常であるが、時には高架橋工作物の本体から外れた土地に属する部分も含めて貸しつけられることもあるので、部内の用語として「高架下」、「附属用地」及び「附帯用地」という表現により取扱上、これらを区分しているので以下用語の意義と解釈について略述する。 (1)「高架下」とは「高架線橋下の土地及び当該土地の地表と高架橋工作物の内壁に囲まれた空間」をいう。貸付における高架橋工作物としては主にアーチ型(図例1)とスラブ型(図例1-2)とがあり、アーチ型の場合は前述の意義で問題はないが、二柱式又は三柱式のようなスラブ型の場合においては、「高架橋工作物の内壁に囲まれた空間」とは、「高架橋スラブ外側線内及び高架下スラブ下橋から当該高架下の土地の地表面に囲まれた空間」と解することになる。 ![]() (2)「附属用地」とは高架下と一体として使用することが適当と認められる高架下の土地と接続している土地をいう。(略) ![]() ![]() (3)「附帯用地」とは「高架下又は附属用地と地続きでない土地であって貸付ける高架下の巡回管理に併せて管理することが可能、かつ適当と認められる土地をいう。(略) ![]() |
この図例と、小林氏『「ガード下」の誕生』48頁の図と比べて、大きな違いは、「用地境界線」の有無であろう。実際の高架下では、隣接地との境界(側道との境界)次第で、建物がどのくらい出てよいのか否かというのが変わってくると思うが、「ガード下」の誕生では、その辺が無視されている。最初見てモヤモヤしていたものが、国鉄大村課長補佐の文と比べ見て、モヤモヤの原因が良く分かった。
『「ガード下」の誕生』の読者の方は、上記の図例を切り取って、20頁と48頁に貼りつけておくとよいのではないか。
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