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2012年7月10日 (火)

小林一郎著「ガード下」の誕生-鉄道と都市の近代史(祥伝社新書)が糞だった(その2)

社史に書いていないからといって、あらぬ方向に「推測」していいわけではない。それは妄想か?メルヒェンか?

頁を開いて、早々に、糞呼ばわりしてしまったのであるが、気を取り直して頁を進めてみよう。

     
 わが国におけるガード下は、明治から大正にかけて誕生したのが最初だが、そのガード下はどのようにして利用されてきたのだろうか。ガード下空間の利用についての研究は、どこまで進んでいるのだろうか。
 利用形態を調べるため、各社の社史を覗いてみよう。社史を綴ったなかには、日本の鉄道開通から戦後の高度経済成長期の1972年(昭和47)までの百余年の歴史を綴った『日本国有鉄道百年史』(全19巻)という膨大な資料がある。一万ページを超す膨大な著書である。この資料をあたってみよう。日本国有鉄道とは現在のJRの前身企業だ。
 同書を読み進むと、明治時代、すでに駅舎内で新聞を販売、さらに売店を設け小間物(中略)を販売したこと、」などが記述されている。さらに、構内食堂を設けたといったことも「駅構内での営業」という見出しを立て、誇らしげに書きこんでいる。現代流に言葉を変えていえば「駅ナカ」である。
 ところが、この一万頁をめくってみても、駅間の高架下でなにをやったかという記事は、1ヶ所のみ。1931年(昭和6)、「貨物輸送の付帯事業として秋葉原駅にはじめて直営倉庫を設置して、営業を開始した」という「倉庫としての利用」との紹介文が載るのみである。
 これらは何を意味するのだろうか。社史を鵜呑みにすると、1970年代当初まで、有楽町のガード下や、上野のガード下に展開されるアメ横、秋葉原のガード下電器街はなかったことになる。そこで、現在のJRに問い合わせてみたが、「ホームページで公表している情報以外は公開できない」という官僚的な答えで遮断されてしまった。隠すほどのことではないと考えられるが、さらに追及すれば、「プライバシーの侵害にあたる」という優等生的な答えが用意されているのだろう。

小林一郎著「ガード下」の誕生 21~22頁から引用  

引用にしては長くなってしまったが、小林氏の『「ガード下」の誕生』は、「ガード下は、社史に載らない鬼っ子」というところをきっかけにストーリーが進んでいくので、お許しいただきたい。
まあ「なにを言うてまんのん。国会議事録を検索すれば、バンバンHITしまっせ」ということなのだが、せっかくなので、これまた引用で恐縮なのだが、私の手元にある7頁ほどの小論から「社史に載っていない」部分を紹介したい。
題名を「国鉄高架下の貸付けと管理について」といい、著者は「日本国有鉄道施設局用地課課長補佐 大村 充」氏ということで、まさに高架下のプロの方とお見受けする。
これまた長くなるのだが、非常によくまとまっているので、引用させていただこうと思う。

     
 高架下利用の社会的な関心は終戦後特にヤミ物資が横行する世の中において地理的に優位で、かつ比較的少資本による経営に適する等の理由から次第に脚光をあびて盛り場を形成するに至ったものである(代表的なものとしては御徒町、上野間の通称アメ横といわれている第一・第二上野町高架橋及び下谷町高架橋がある)が、これに対し当時の国鉄の管理体制は非常に不十分であったものと言えよう。昭和28年、いわゆる鉄道会館問題が起り、国鉄財産に対する国民の批判がきびしくなるに至って、国鉄ではその年の11月国鉄本社内に臨時財産監理部を設け、国鉄財産の管理の改善を図った。その後臨時財産監理部を廃して恒久的な機関として感材部を設け、東京・大阪の地方管理局における管財要員の充実を図るとともにこれが管理体制を整備していった。一方国鉄の財産監理に関する規定類については、国鉄が公共企業体となって国有財産法の適用を排除されたため、基本法としての国鉄法・内部規定として日本国有鉄道会計規程(中略)及び日本国有鉄道固定財産管理規程(中略)のみでは不十分であり、不動産貸付けの管理事務が他の固定財産の貸付けに比し、複雑な問題を含んでいるため、昭和32年4月日本国有鉄道土地建物貸付規則(中略)及び土地建物貸付取扱細則(中略)を制定したが、高架下管理上の諸問題は単に手続上の問題のみならず、後述するように、法制の不備、不明確による点が多く使用関係の正常化については現在もなお困難な問題が残されている現状である。
 即ち国鉄の高架下は戦前国鉄が国であった当時から、住宅、店舗、倉庫等種々の目的で部外に貸し付けていたが、特に終戦後は戦災による住宅難や経済事情から鉄道高架下への関心が高まり、広範囲の部外貸付けが行われたが、これら高架下の使用状況は昭和32年3月の国会で高架下の問題が国民の関心と批判の的となっていることを背景として「日本国有鉄道の固定財産管理運用に関する決議」がなされ、国鉄ではこれに答えるため「高架下管理刷新委員会」を設置して、高架下の管理刷新に関する基本事項、不当使用の排除等を強力に推進してきたところであるが、当時の貸付件数約2,300件のうち約300件が問題とされ指摘を受けた高架下不当使用の実態は大略次のとおりである。
 ①高架下の使用権を国鉄の承認を得ないで第三者に譲渡又は転貸し、第三者が建物を建て使用しているもの
 ②高架下に建物を建築し、国鉄の承認を受けないで、その建物の全部又は一部を第三者に譲渡しているもの
 ③使用名義人が所有する高架下の建物の全部又は一部を国鉄の承認を受けないで、第三者に賃貸しているもの
 ④高架下の建物を使用して、名義人と第三者とが共同経営をしているもの
 ⑤業務委託契約により第三者が高架下での建物を使用しているもの
 ⑥いわゆるケース貸しをしているもの
 ⑦高架下の目的以外使用について使用目的の追加変更の手続を怠っているもの
 ⑧不法占拠のもの
 これらの事例は高架下の使用について複雑な権利関係を発生せしめ、一部にはそれによって高額の中間利得を得ているものがあり、その外高架下が一種のスラムとなり(■■市■■附近、■■市■■附近高架下の一部(※伏せ字は引用者による))或いは乱雑な飲食店街を形成するなど、都市美観上からも誠に好ましくない現象が見受けられるに至った。

きりがないので、引用を終わるが、この報文を読んでいると、「高架下にロマンを感じるで」とはなかなかいかないものである。(国鉄職員が自分の路線の沿線に対して「スラム」と公言するのにはびっくりしたが。)

なお、昭和28年に起きた「鉄道会館問題」とは、東京駅八重洲口にあった旧・大丸の駅ビルをめぐる疑獄であり、昭和32年の国会で取り上げられた高架下は、新橋の京浜百貨店(現・京急ストア)、有楽町の日本交通公社(現・JTB)等である。唯一国鉄百年史に出てくる秋葉原の倉庫もやり玉にあがっている。これらは不正に国鉄OBがからんでいる事例等である。
また、(その1)で引用した国会答弁に「木藤の問題」というのが出てきているが、これは高架下に入居に係る便宜をはかるために国鉄の高架下担当木藤氏と業者の間で贈収賄事件が発生し多数の逮捕者が出たものである。 これも昭和32年の国会で厳しく追及されている。

国鉄の十河総裁というと、昔の国鉄について少しかじった方なら「新幹線の追加予算をとおすために自分の地位には恋恋としなかった気骨のある新幹線の父」というイメージがある人も多いのではないかと思うが、この国会の答弁を見ると全くそのようなイメージはなく、陳謝につぐ陳謝である。
なぜに国鉄百年史に掲載されないか分るような気もする。しかしながら、それでは「暴力(小倉副総裁による答弁)」にもまけず正常化のために高架下をはいずりまわったであろう国鉄管財担当者の皆様がうかばれないように思う。

いずれにせよ「各鉄道会社の社史にも書きこまれない鬼っ子として誕生した「ガード下」は、それまでの既成概念の破壊と新たな価値を創造した。これを第一次ガード下改革と呼ぼう。」(小林一郎著『「ガード下」の誕生』218頁から引用)というにはほど遠いイメージがある。

最後に昭和32年国会での岸首相等に対する追及の議事録を掲載しておく。詳細については機会があればまとめてみたい。

     
      

昭和32年03月04日-衆議院-予算委員会-

      

○吉田(賢)委員 岸さんの時間の都合もありますので、私は直ちに綱紀粛正の問題に入っていきたいと考えます。
 今、岸内閣の一つの大きな今国会における仕事は、国鉄運賃の値上げ問題の成功するかいなかにあるだろうと思うのです。しかし同時に、もしこのまま値上げを無理押しに実現することになりましたならば、おそらく私はあなたの内閣の大きな黒星になるのではないかと思われます。私はこの運賃値上げの当否、必要性の有無等を論議する前に、まずもって国鉄財政を粛正せなければならないと思っております。国鉄財政を粛正することは、同時にこれは綱紀の粛正なくしては不可能であります。この関係を十分に認識いたしまして、初めて私は経営の合理化にしろ財政の再建にしろ論議し得ると思うのであります。もしこの基盤をなす財政の紊乱ということを軽視いたしましたならば、運賃値上げがかりに多数党によって実現するといたしましても、おそらくは悔いを将来に残すこととなると思うのであります。国鉄運賃値上げを論議する前にまず綱紀を粛正せねばならぬ、こういう点についてあなたはどうお考えになっておりますか。

      

○岸国務大臣 国鉄の運賃値上げの問題に関しましては、かねてより国鉄の経営の合理化の問題を検討し、今御指摘のようなあるいは綱紀問題に触れるものがあるかと思いますが、いわゆる広い意味における経営の合理化、ここにいろいろなむだやあるいは間違ったことがあるのを直して、できるだけ経営を合理的ならしめた上において、その最後に幾ら値上げすることが必要であるかというふうな研究の結果、運賃値上げの結論が出たものと承知いたしておりまして、もちろん今お話のように、国鉄の経営上あるいは不合理な点があるとか、あるいは綱紀問題に触れておる点があるということであれば、これを粛正し是正することはもちろん前提として考えなければならぬ、かように考えております。

      

○吉田(賢)委員 綱紀問題は、国鉄に関する限りにおいては実に根深いものがあり、またこれは単に国鉄の内部だけの問題ではなくて、外部との関連におきましても相当広範な根深い関係にあることは御承知と存じます。この問題につきましてはあらゆる面から検討いたしまして、粛正の実を上げていかねばならぬと考えるのであります。試みにたとえば財政再建の問題を検討しようといたしましても、いかにして多く収入をはかり、いかにして支出を節減するかということが直ちに問題になって参りますが、その前に、そのときに当面することは、例をあげますと膨大な固定資産の管理の問題があるのであります。世界一番の公共企業体である国鉄に限って、この固定資産の管理運用の問題をめぐりまして、かくもひどい乱脈がなぜこんなに長い間放置されておったか、こういう感を深くするのであります。あなたはこういう点は詳しく御存じないかもしれませんけれども、しかしながら、東京におられ、政治の中心におられて、この固定資産の管理の問題がいかに重大であるかということは、これは御認識にならなければなるまいと思います。この固定資産の管理について、たとえば収入の面から見て、これはわずかでないだろうか、こういうお考えならば、これはとんでもないことであります。収入が少いとか多いとかいう問題のほかに、この財産の管理をめぐりまして、あらゆる財政的な乱脈があるわけであります。たとえばこの間決算委員会におきまして、高架下の問題、特に新橋駅の百貨店問題を取り上げて論議をいたしておりました。なぜ粛正の実が上らないのか、なぜ粛正できないのかということをだんだんと追及しておりますと、ついに副総裁は暴力によってこれが妨害せられておるという事実を指摘なさるのであります。よろしゅうございますか。国会で暴力によって粛正の実が妨害せられると言われるようなことは、これはまことに聞き捨てがたいことだし、よくよくのことである。刑事局長がそばに列席しておりますので、刑事局長に聞いておいて下さい。たといそれがどういう形で現われるにしろ、国鉄が資産を守らんとするときに、合理的な経営をなさんとするときに、暴力がこれを妨害するというようなことを国会で発言せられるということは、これは大へんなことです。こんなことで一体国鉄の資産管理を全うし得るでしょうか。あなたはその席にはおらなかったが、ここに国鉄の財産管理をめぐりまして、きわめて深刻な泥沼のような腐敗と乱脈があるのであります。外から中においてあらゆる力が錯綜しておるのであります。こういう事実を明らかにするのでなければ、あなたの方で年間数百億円の増収を目ざして進んでいきましても、こういうところからみな漏れてしまう。国民はそう言っているんですよ。ざるで水を受けるようなことになる。この財政の紊乱のその一つの穴が固定資産の管理にあるのであります。現に神田の駅の高架下をめぐりまして、御承知と思いまするが、係長が今収容されております。前課長も逮捕されております。前後十人ほどの者が贈収賄の嫌疑を受けて、今逮捕され取り調べ中であります。三十年の五月には、国鉄みずからが五百件にわたって高架下を調査した事実もあるのです。その中にはいろいろな外廓団体が巣くっておりまして、そして国鉄に損害をかけておる。二重、三重、五重の転貸し、又貸し、それをやっておる。途中で利益を収奪しておる。中間搾取をしておる。それをまた、国鉄の者が入り乱れて利益の分け前を受ける。こういうことが三十年の五月に発見されておるのであります。そして名前も全部出ておる表がある。現に国鉄においてはそれを持っておるのであります。そのうち一部が現われたのが、この間の新橋の百貨店問題なのであります。こう見て参りましたならば、あなたは、経営の合理化をよく考えて、収支のことも、財政再建のことも考えて、そして値上げ問題の結論を得ておるというような考えでは甘過ぎますよ。本気に綱紀粛正をやろうとするならば、こういう問題がもし芽を吹いておるならば、少しでも出ておるならば、それは氷山の一角として、深くぐっと鋭く追究していくだけの熱意と、誠意と、努力と、真剣さと、勇気がなければ、綱紀の粛正なんということは百年河清を待つにひとしいことです。そんな念仏を国会は聞こうといたしませんので、こういうような最近のなまなましい事実をあなたに申し上げるのであります。暴力問題さえ国会に出たときに、あなたは総理といたしましてどうお考えになります。

      

○岸国務大臣 私は、今おあげになりましたような事実は詳しく承知いたしておりませんが、しかし、言うまでもなく、国鉄は国鉄として、その不動産の管理等につきましては、あくまでも厳正に、公正に、かつ合理的にこれを行わなければならぬということは、言うを待たないのであります。その管理について不正があり、もしくは不合理な点があるならば、これはあくまでもその事実を明らかにして、これを是正するというのは、政府として当然やらなければならぬ、こう考えております。

      

○吉田(賢)委員 政府は、かつて経営調査会、あるいは運輸省におきまして、いろいろな諮問機関等々によりまして、いろいろと運賃値上げの問題も協議し、意見も聴し、答申も得ておるのでありますけれども、しかしながら固定資産の管理等をめぐりましてこんな大きな乱脈があり、綱紀の紊乱があるということについては、深く触れておりません。またいろいろな公聴会におきましても、国鉄その他政府が呼びました人は、その真相を知りませんから、うわさだけでは公けに発言をしておりません。従ってこれを究明するところは国会以外にないのです。町でやろうとしてもできないのです。警察なり検察庁も、それはほんに事件となって現われたものだけなんであります。国鉄がみずから手を下そうとするならば、暴力がこれを妨害するのであります。国会以外にないのであります。そこで国会におきましては、この事実を徹底的に究明いたしまして、それによってどんなに財産の管理上、収支の関係におきまして、国鉄財政の健全化のために寄与し得るか、こういったような数字まですっかり出しまして、それはよし十億になろうと、三十億になろうと、あるいはそれ以下になろうと、その総額は別であります。いずれにいたしましても、国鉄財政の将来のことを考えますときに、この種の問題については、まずもって徹底的に究明をしていくということが先決でなければなりません。でなければ国民は納得しませんよ。運賃だけ値上げして、全国の鉄道の利用者からよけい運賃を、取って、そしてあらぬ方に流れていってしまうということ、乱脈があり、汚職があり、暴力があるということが国会で明らかになり、これに対する究明が遂げられておらぬというようなことで、国鉄の運賃値上げを決定することは、本末の転倒であります。前後の撞着であります。まずもって粛正をし、まずもって財政の再検討をし直さなければならぬ。深刻にこの種の方面から財政の再検討をしなければいけません。こういうふうな手段に出ることが私は順序としては正しいと思います。いかがでございますか。

      

○岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、この運賃値上げの問題に関しましては、これに関係して相当長い間、各般の権威ある調査審議を重ねてきた結論でありまして、もちろん高架下あるいは何に関する不動産の管理を合理化するという問題も頭に置いて出てきた結論でありまして、今御指摘のありましたような具体的な事例等は、これはあくまでも究明し、それを明らかにしなければならぬことは、私は言うまでもないと思います。しかし、この運賃値上げの問題そのものの大きな結論を、それがためにおくらせるということは適当でない。あくまでも、輸送が隘路になっておる現状から見ますると、国鉄の経営を健全、合理化して、そしてこの隘路を打開しなければならぬという大きな命題の前には、結論としては、私はそう動かす何はないと思うが、しかし今吉田さんがおあげになりましたような事態を決して等閑に付し、それを全然調査しないということは間違っておりますから、あくまでもそれは究明し、明らかにし、また将来そういうことのないようにすることは、当然考えなければならぬと思いますが、私は、運賃値上げの問題をそれがためにおくらすとか、結論をどうするという問題じゃないと思います。

      

○吉田(賢)委員 そこが根本的に考え方が違うのであります。国民に納得をせしめて、その上で正しい運賃の改訂をする。国民に納得せしむるということは何かといえば、疑獄あり、汚職あり、紊乱あり、財政が紊乱しておるということであれば――そもそも運賃値上げは、国鉄の財政問題がもとであります。国鉄財政が紊乱の結果正しい収支が行われておらぬ。財政の執行が正しくないということがありとして指摘されるならば、その大小は別といたしまして、これを検討するということが先決でなきゃならぬ。たとえば、雑収入という小さな費目がある。雑収入は、三十二年度の予算によると、八十八億円になっております。そのうちのこの種のものの収入は、三十六億円ということになっております。しかし、三十六億円でも、これの管理運営のいかんによりましては七十億円になるのです。あなたはそういうこまかいことは知らないかしりませんけれども、今の新橋の百貨店でも、毎月百三十万円も鉄友会がふところに入れておったのです、中間搾取、中間利益を一つの小さな場所で。そのくらい利用価値があるのです。でありまするから私は言うのです。上野・新橋間を調査した先般の国鉄の調査結果を見ましても、ほんとうにりつ然とするのであります。ようもこんなにひどい状態がほったらかしてあった。現に、たとえば朝日新聞のそばの高架下に交通公社が借りている場所があります。これも転貸しです。二百五十万円の権利をもって小さな洋品店に貸しております。そんなことはしちゃいかぬのです。けれどもやっておるのです。月々五万円の家賃をとっております。こういうことなのです。ですから何十億円という雑収入をまぬがれておるということ。これを増収するだけでも数十億円生ずるのであります。数十億円を小さいとお思いになってはいけぬ。七十三億円の固定資産の増税も、現に運賃値上げの理由に述べておられるじゃありませんか。答申の実情を見ても、数億円ならともかく、七十億円をこえなければならぬということすら調査会の答申に出ておる。だから雑収入は、これを倍額にいたしましても、おそらくは三、四十億円はふえるのであります。これを小さしとすべきじゃありません。ですから、こういう問題をほんとうに解決して国民に納得させなさい。そして終局におきましてどういうふうに運賃が改訂されようと、これはまた別の問題です。こんな問題をほったらかすということは、これは断じて間違いであり、本末転倒であります。あなたと考え方が根本的に違っております。運輸大臣、どうお考えになりますか、あなたの所管事項ですよ。この問題については、いいかげんになさったら全国民の恨みを買いますよ。どうお考えなさいますか、この問題については。

      

○宮澤国務大臣 お答えいたします。ただいま御指摘になりました国鉄の固定資産の運用につきまして、あのような不祥事の起っておること、これは今回に限らない、数年前からもときどきそういうことが起っておりますが、まことに遺憾にたえないのであります。たといいかに多くの人が従業しておろうとも、かくのごときことの起るということは、やはり私どもとして国民に対して申しわけない。ことに国鉄運賃値上げをするというこの機会にこういうことの起りましたことは、なおさら申しわけないと考えておる次第であります。また、もちろんこれに関しましては、国鉄当局においてもなおざりにしておるわけではないのでありますけれども、しかしながら、ただいまお話のように、こういう席上においてお話を承わることは非常に刺激となって、実際これにまた刺激されまして、特にいろいろな手を打ってもおるのであります。ことに国鉄の資産の権利が生じて、又貸しを幾つもするということには――実はこれは国有財産もそうだそうでありますが、国鉄の資産を貸しますときには、いつでも期限なしに取り上げるという約束になっておる。そのために貸賃を安くしておる。市価というか、つまり普通の値段で貸しますと、取り上げるというわけにいかないのですけれども、安く貸しておるから、いつでも取り上げられるという約束になっておる。そういうことからいろいろな事柄も起ってくるので、これに対してはやはり相当に改めなければいけないのじゃないか。御指摘のように普通の市価をもって貸せば、それは収益も相当上ってくる。しかしそれはそのままその権利に移ってしまう。国鉄が必要なときにこれを取り返すことができないというようなこともありまして、非常にこれは考え直すべき問題ではないかというようなことも考えておるのであります。ただいま御指摘になりましたような点に、私どもは決して弁解もなにもない、すなおに承わってこれに対処しなければならぬということを、実は苦慮しておるのであります。御期待に沿うような運びをいたしたいと考えております。

      

○吉田(賢)委員 それなら伺いますが、国鉄の有力なる旧幹部がいわゆる外郭団体と称せられるものを作って、これが上野――新橋間の最も利用価値の高いところの土地を借りて、又貸しし、権利を譲渡するという例がずいぶんたくさんあるのであります。今あげました新橋の例もその一つでありますが、こういった国鉄に損害をかけ、いつでも取り上げられる約束によって借りておるにもかかわらず、契約に違反してこのような不都合なことをいたしましたすべてに対しまして、直ちに断固これを取り上げるという処置をして粛正したらどうですか。それを約束できますか。

      

○宮澤国務大臣 あれだけのものを貸して、それぞれ仕事をしておるものを、今ここで直ちに取り上げるということを、原則的に、一般的に取り扱うことは困難であろうと思いますが、しかし事実御指摘のような、約束に反する又貸しのようなことをするような行き過ぎたものに対しては、これはそういう処置をとらなければならぬと思います。この点に関しましては、一つ国鉄を激励いたしまして、御期待に沿うような成績を上げるよう努力してみますから、一つしばらく時日をかしていただきたい。
 

「人・モノを運ぶのが鉄道輸送の目的で、駅と駅の間はあくまで通路。その通路下が空いているから使おうというのはあくまで副次的な利用。人やモノを輸送するという本来の業務とはまったく交わらない。あえていえば、鉄道会社がやるべきものではない。つまり通路である高架下空間を金をとって利用させるといことに抵抗感があったのではなかろうか。」(小林一郎著『「ガード下」の誕生』31頁~32頁から引用)と比べて如何お感じになるだろうか。

(追記)

http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/01-09/01-09-0190.pdf

土木建築工事画報 第1巻第9号 大正14年11月発行(1925年) の「鉄道省東京市街線工事」という記事に「高架下の利用 高架線軌條面は地表面より平均22、3尺鉄道諸詰所、駅設備、工場、倉庫、民間商店、御徒町、上野間の中間に省電のため変電所の設けあり」という記載がある。小林一郎氏の著書の記載とは異なり、わざわざ「高架下の利用」という章立てがなされているのですね。

http://library.jsce.or.jp/Image_DB/mag/gaho/kenchikukouji/16-01/16-01-2883.pdf

同じく土木建築工事画報 第16巻第1号 昭和15年1月発行 (1940年) の「東京駅改築並に東京新橋間高架新設工事」という記事では、「型式 高架橋は、在来高架橋の径間、高架橋下の使用上の便宜並びにその構造等に依り、(中略)等の種類あり」という記載があり、高架下の利用を考慮して高架橋の構造が選定されていることが分かる。

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コメント

管理人さん、はじめまして。
HPを拝見致しました。

小林一郎著「ガード下」の誕生-鉄道と都市の近代史(祥伝社新書)が糞だった(その2)(その3)で出ております、
「国鉄高架下の貸付けと管理について」の大村氏の小論文が大変気になりました。

その小論文を拝見したいのですが、どのようにすれば入手出来ますでしょうか。
差支えなければ教えて頂ければ幸いです。
宜しくお願いいたします。

投稿: | 2015年5月15日 (金) 01時30分

書込みありがとうございます。
「道路セミナー」という道路関係の業界誌がかつてありまして、そこに載っていたものをコピーしました。すでに廃刊されておりますが、国会図書館で閲覧・コピーできます。
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000016987-00
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/?func=find-c&=&=&=&=&=&=&ccl_term=001%20%3D%20000000016987&adjacent=N&x=0&y=0&con_lng=jpn&pds_handle=&pds_handle=
大変申し訳ないことに何年の何月号か分からない(コピーだけとってあってその辺のデータをメモしていない)ので、頑張って探していただくことになるのか。。。

投稿: 革洋同 | 2015年5月16日 (土) 02時38分

革洋同さん

お返事どうもありがとうございます。
掲載されていた専門誌のことを知ることができて大変嬉しいです。
国立国会図書館で探してみます。

どうもありがとうございます!

投稿: | 2015年5月16日 (土) 13時35分

革洋同さん

国立国会図書館で「道路セミナー」を探し調べましたところ見つけることが出来ました。

1971年第4巻第7号(No.39)にでておりました。
「道路セミナー」に掲載されていることを教えて頂きどうもありがとうございました。

投稿: | 2015年5月30日 (土) 14時29分

ああ、お手数をおかけしてすいませんでした。
無事に発見できたということでほっとしました。

お目通しいただいて気づいた点等があればご教示いただけますと幸いです。

宜しくお願いいたします。

投稿: 革洋同 | 2015年6月 7日 (日) 18時48分

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