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2014年2月22日 (土)

封印したい「封印された鉄道史」(小川裕夫)とウィキペディアと堤さんの所業

「封印された鉄道史」という本をたまたま本屋さんで見かけたのでパラパラめくってみたが、いい加減なことを書いているので、買わなかった。

家に帰ってから検索すると「トンデモ本」扱いのようでいろいろと突っ込みが入っているようですなあ。

私も突っ込みに参加しておくついでに、「ウィキペディア」での記載にも突っ込んでおくか。

小川裕夫氏は、「近江鉄道が、新幹線が沿線を通過することにあたり眺望が妨げられることを名目に国鉄に1億円を請求したと言われている。実際に訴えたわけではないが。」

てな趣旨のことを書いている。(買っていないので正確な引用ではないし、きちんと引用する程の中身でもない。)

また、ウィキペディアによると(注:下記はブログ記載時のもので、後日修正対応していただいております。)

かつて東海道新幹線の建設に際し、自社路線との並行区間で鈴鹿山脈の眺望が遮られるという名目で国鉄に交渉し、補償金を得たという逸話が伝えられているが、真相は異なる。詳しくは「近江鉄道本線」を参照のこと。
高宮駅 - 五箇荘駅間で東海道新幹線と並行している。この新幹線建設時に伊吹山鈴鹿山脈の眺望が失われるとして、近江鉄道が当時の国鉄に補償を求めたという話があるが、実際には新幹線によって交差する道路の安全確認が困難となり、踏切改良、警報器設置などの「防護補強工事費」および新幹線の「併設による旅客収入減」等への補償を求めた[2]というのが真相で、協議の末、実際に当時で1億円が支払われている。この時、影響の一つとして眺望も付記したことを新聞に「景観料」と面白く書き立てられて風評が広がったと、2000年に林常彦近江鉄道取締役(当時)は鉄道雑誌『鉄道ピクトリアル』で話している[3]

果たして実際はどうなのか。

まずは、会計検査院の報告から見てみよう。
http://report.jbaudit.go.jp/org/s37/1962-s37-0149-0.htm

(647) 会社線との並行敷設に伴う損失補償の処置当を得ないと認められるもの

 (工事勘定) (項)東海道幹線増設費

 日本国有鉄道大阪幹線工事局で、昭和36年12月および37年6月、近江鉄道株式会社に滋賀県彦根市ほか4町村地内延長約7.5キロメートルにおいて東海道幹線を同会社線と並行して敷設するに要する同会社線用地の買収費および旅客収入減等に対する損失補償費として総額250,000,000円を支払っているが、うち旅客収入の減少に対する補償100,000,000円については、同幹線の並設により旅客収入減が確実に生ずるものとは認めがたく、従来からその例をみないもので処置当を得ないと認められる。

 本件用地買収および損失補償は、36年10月、東海道幹線を同会社線に並設施行するにあたり、同会社から同会社線施設の防護補強工事費等2億6215万余円および沿線風致阻害観光価値減殺による旅客収入減補償1億5410万余円計4億1626万余円の要求があったのに対し、36年12月、取りあえず用地費および防護補強工事費等として150,000,000円を概算払し、一方、旅客収入減に対する補償は、その査定が困難であるが、これを支払わないときは同会社との設計協議等において協力を得られず、幹線増設工事に支障を生ずるおそれがあるとして、観光旅客収入および普通券一般客収入の予想減少率をそれぞれ50%および25%とするなどして並行区間の向う13年間の旅客収入減額見込みを算定し、37年6月、100,000,000円を概算払し、38年11月、それぞれ同額をもって精算を了したものである。

 しかしながら、旅客収入減に対する補償についてみると、現地の実情等からみて同幹線を並設することによって同会社線の観光旅客等が減少するものとは認めがたく、前記収入予想減少率等も全く根拠がないと認められ、一方、同会社との設計協議等に関しては、地方鉄道法(大正8年法律第52号)によりその促進をはかるなどの余地があったと認められるのに、これらの配慮も十分でないまま、このように将来確実に発生するとは認められないものに対して補償したのは、従来からその例を見ないばかりでなく、通例の補償限度を著しく逸脱するもので、その処置当を得ないと認められる。

wikipediaの「新幹線の「併設による旅客収入減」等への補償を求めたというのが真相」という記載だけを見ると「なんだ、眺望権の補償というのは嘘なのか~」と思うかもしれないが、会計検査院の「沿線風致阻害観光価値減殺による旅客収入減補償1億5410万余円計4億1626万余円の要求があった」という記載を見たあとでは、如何思われるだろうか?

おまけに、会計検査院は、「従来からその例を見ないばかりでなく、通例の補償限度を著しく逸脱するもので、その処置当を得ない」と厳しく指弾しているのである。

「影響の一つとして眺望も付記したことを新聞に「景観料」と面白く書き立てられて風評が広がったと、2000年に林常彦近江鉄道取締役(当時)は鉄道雑誌『鉄道ピクトリアル』で話している。」なんてなまっちょろいものではなさそうだ。

(追記)「新聞に面白く書き立てられて」なのかどうか検証してみたのでこちらもどうぞ

もっと生々しいやりとりが当時の国会審議に残されている。「新聞に面白く書き立てられて」なんてレベルのものではない。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/043/0016/04303080016012c.html

第043回国会 運輸委員会 第12号
昭和三十八年三月八日(金曜日)

○久保委員 国鉄総裁にお尋ねするわけでありますが、最近聞くところによりますれば、東海道新幹線の工事にからんで、近接せる地方鉄道あるいは軌道といいますか、そういうようなものに対してどうも当を得ない支払いをしているようなものがあるという話であります。特に具体的な問題の一つとしては、近江鉄道に対しての補償というか、この問題があるわけであります。いわゆるその言っているところは、減益補償をしたということ、あるいは踏切整備ということでこれまた補償をしているということでありますが、その中身について一応御説明いただきたい、こういうように思います。
○十河説明員 補償の問題は、大体新幹線総局長に一任してありますので、具体的の事情を私よく覚えておりませんから、新幹線総局長の大石君からお答えいたしたいと思います。
○大石説明員 ただいま御質問の近江鉄道と新幹線との関係につきまして御説明申し上げます。
 滋賀県下におきまして新幹線の路線をきめて参りますときに、非常に難航したのであります。と申しますのは、私たちが考えました計画につきまして、ほとんどの方々から、新幹線通過反対ということで拒否の空気が盛り上がって参ったのであります。これは他のことを申し上げてはいけませんが、新幹線を計画いたします前に、名神高速道路がやはり滋賀県下を通るというような問題がございましたときに非常な反対がございまして、ただいま名神高速道路が決定しておりますように、山間部の方に線を持っていかざるを得ないような状況でございました。しかしながら、新幹線の経過地を決定いたしますときには、道路の構造より以上に、勾配、曲線半径その他規格が荷いと申しますか、非常にむずかしいことでございますので、線路を曲げて人家の少ないところを通るということができませんので、種々折衝し、また考慮いたしました結果、近江鉄道に沿いまして一部近江鉄道の用地を使いまして、全く近江鉄道と並行していくことが、農地の構造また市街地の構造を変えることもなく、また市街地、農地のつぶれ地を一番少なくするというようなことからいたしまして、この近江鉄道に並行する以外に方法がないので、さよう決定をしたのであります。こういうようないきさつからいたしまして、近江鉄道に並行して路線を決定いたしました。
 しかしながら、次の問題は、御承知のように近江鉄道は滋賀県下におきましてほとんど路面を通っております。地表面から約五十センチないし一メートルというような高さで通りまして、従いまして踏切その他はほとんど全部平面交差であります。これはあの程度の鉄道でありますので、そういう構造もしかるべきかと存じますが、そういうような状態のところに参りまして、これに沿いました新幹線は踏切を除去するということからいたしまして、フォーメーションの高さが約六メートルということに相なっておりますために、近江鉄道との高低差が約五メートルないし五メートル五十というものができてきたのであります。二つの鉄道が並行して走りまして、一部は地表を走り、一部は高架でこれは築堤でございますけれども、高架構造のような、こういうふうに高さが違ったものができた、こういうことでありまして、いろいろとこの構造につきまして近江鉄道と交渉をしたのであります。そういたしまして、今お話しのように、過大な補償、こういうようなお話でございましたが、私たちといたしましては、踏切の防護の補強工事、そういったものをいたしますために算定いたしました金額、また今までは両方が平らでございましたのに、隣に大きな構造物ができましたので、保線保守その他そういったものにつきましての困難性を増してくる、これはほこりもたくさんかかりましょうし、いろいろな関係のものが増加をしてくる、こういったものの算定をいたしました。また沿線を沿って参りますために、近江鉄道の用地でございました用地、また途中近江鉄道の駅構内を通過する区間もできて参ります。この区間の用地買収その他のものにつきましてのそういう物件的な補償というものを算定をいたしまして、補償額を決定をいたしました。また一方、近江鉄道は観光的な鉄道でございますので、お客さんが、沿線の景色をながめながら走っていくというようなことを大きな目的にした鉄道でございますのに、これが隣に大きな築堤ができまして、あたかも谷の下を走っていくような状況になったということによりまして、この営業上の損失と申しますか、観光客が減っていくというようなことの算定もいたしました。先ほど申しました実害が二つの面があるということから算定をいたしまして、補償額を決定をしたのであります。
○久保委員 実害を算定したというが、具体的に土地等を買収するのには当然費用が要ります。これは当然だと思う。ただその線路のわきに高い東海道新幹線をつくるから、それによって――今お話があったように近江鉄道は観光鉄道だ、そういう重大な観光地域で並行線があるのかどうか、これはよくわかりませんが、この算定基準ということはどういうことになりますか。あるいは踏切というか、線路保守の困難性というか、そんなに近接してぴたっと密着してやっているのかどうか、両側を包んだのならば、もちろん中に電灯もつけねばいけないでありましょうが、少なくとも片側で並行していく場合に、今お話しのような減益というか、観光客が減ったりあるいは線路の保守に困難があるとかいうようなことがあるのかどうかという問題、よしんばあったにしても、その補償の算定基準というものはいかなる基準から出したのか、どういう名目でそういう費用を出すのか。
 それからもう一つは、踏切の防護を補強するというが、どの点なのか。きょうは時間もありませんけれども、国鉄も今日まで七、八十年になりますが、今までそういう前例があったのかどうか。そういう点どうなんですか。
○大石説明員 踏切の警報機をつけましたり、自動遮断機をつける、こちらの構造のためにこういうものをつけなければならないということで補償をした実例はたくさんございます。しかしながら線路が全く並行したところをつくりまして、これは起点が同じに、Aという駅からBという駅に私鉄がございまして、そこに新しい建設線ができてお客さんが全部減ってしまって、そちらの私鉄としての効能がなくなったというような例は、また別の例でございますけれども、いわゆる買収とか営業補償といったような例はございます。しかしながら、ただいまのように、長い区間全く別の性格の線路が並行していくというような場合は、今まであまりケースを見ておりません。これはそういうような線路をつくったことがございませんので、最近におきましてはさような例はございませんが、そのために近づきましたり、また道路をつけかえましたために踏切の改良をいたしましたり、またその他につきましての補償をしたという例はたくさんございます。
○久保委員 今までも先例はあったようでありますが、並行したのは新しいというのですか、今回初めてですか、何キロほど並行しておるのか、図面その他われわれはわかりませんけれども、どの程度に密着しておるのか、それはどういうのですか。
 それともう一つは、さっきあなたのお話の中に、具体的な物件を補償した、それ以外にこの鉄道が観光客を輸送するので、ながめが悪くなるからそういう点も補償したというのでありますが、そういう補償が今まであるのか、おそらくないだろう。ないとすれば、算定基準はどういうふうにしてなされたのか、総額どういう費目で幾らこの鉄道に払ったのですか。
○大石説明員 並行しております延長は約七キロ半でございます。
 それから密着の程度というのは、全く線路ののりが近江鉄道ののりにかぶさってくるということでございます。その間何ら余裕がなく、完全に複々線のような格好にくっついております。ですからこれは密着と申しますか、ほとんど同じ格好に線路がついております。
 それからながめが悪くなったために営業が減ってくるということは非常に算定がむずかしくて、近江鉄道の申し出と私どもの算定には非常に大きな開きがございましたけれども、結論といたしましては私たちの方でこまかく毎年毎年の収入を算定いたしまして、その累計いたしました結果を総合したので補償をいたしました。額は総額において二億五千万円でございます。
○久保委員 そののり下が全く密着しておるというが、密着しておるだけであって、近江鉄道ののり面には新幹線ののり面は乗っておりませんね。
○大石説明員 近江鉄道ののり承りにぴったりくっついておるわけでございます。ですから近江鉄道ののりしろの用地はこちらに買収をして、その間に何ら間隙のないような構造をとっております。
○久保委員 そうしますと局長、のりじりだけが密着している、あとその余裕地は買収した、買収したものについては当然代価を払わなければいかぬ、高い安いは別です。それ以外に線路保守に困難であるものがあるとおっしゃいましたが、そういう要素も入って二億五千万円ですね。
○大石説明員 お話の通り用地の買収費も含めまして、全部含めまして総額二億五千万円でございます。
○久保委員 線路の保守が困難だという費用の算定方式は、具体的にどういうふうにしなさいましたか。
○大石説明員 ただいまこまかい算定の資料を持っておりませんが、後ほど御報告いたすことにいたしまして、今先生がおっしゃいました線路保守その他の経費の増額分といたしましては、二億五千万円のうち七千七百万円あまりがその中に含まれて算定されております。
○久保委員 七千七百万円というと、これはキロ一千万円に相当する、七キロ五百が並行しているのですから。それに対して七千七百万円の補償をする、そういう形に現われるものとして。そうですね。これは資料もわれわれは見ておりませんからよくわかりませんが――新幹線の予算は今参議院でやっておりますが、国鉄の新しい予算の比重は何といっても東海道新幹線であります。従来しばしばこの工事費や土地買収費の値上がりについてもいろいろ御説明がありました。しかし片方において汚職に類するようなものも巷間伝えられておる。どうもこれは大尽ぶるまいに類するものではないかと思うのでありますが、さように考えておりませんか。
○大石説明員 私たちといたしましては、大尽ぶるまいとか、何かの圧力によってやられたのではないかというような話もいろいろ耳にはしておりますけれども、私たちが直接やっておりますものといたしましては、さようなことは毛頭考えておりません。純事務的に積み上げたものだと確信しております。
○久保委員 あなたはそうお考えにならなくても、私を含めて世間はそう考える。無形の何かに対して一メートル一万円の補償費。だからこれは少なくとも算定基準はおありでありましょうが、これに対する資料を今持っておらぬとすれば、あとで出してもらいたい。さらにその密着の度合いもありますから、大へん恐縮ですが図面をつけて下さい。
 そこで、二億五千万円というのは全体としていつ払いましたか。
○大石説明員 これは二回に分けて支払いをしておりまして、第一回は三十六年十二月に一億五千万円を工事着手を条件に支払いました。それから残余の分につきましては、三十七年の六月に一億円を支払っております。
○久保委員 資料をいただいてから再び申し上げますが、そのほかにやはり新幹線工事で丹那の隧道のズリ捨て場に使おうとした鉄道用地をあるホテルに払い下げたそうでありますが、事実でありますか。
○大石説明員 丹那の隧道のズリ捨て場を某ホテルに払い下げたという事実はございません。おそらく先生のお話はズリ捨て場の予定地をお話だと思いますが、これは前から西武鉄道に――丹那付近のくぼ地でございますが、ここをケ-ブルカーをつくるということで西武に貸してあったのであります。丹那トンネルの着工前にすでに貸してあったのであります。しかしながら直ちにその工事はやらないで、むしろ私たちといたしましては丹那トンネルのズリを捨てるのに適したくぼ地であるということを見まして、返してほしい、丹那トンネルのズリを捨てる間はこちらへ返せということで、丹那トンネルの着工と同時にそのくぼ地はこちらに返していただきました。そうして工事中そこにズリを捨てて工事を進めたのであります。最近に至りましてその土地を再び貸してくれ、ないし売ってくれというようなお話がございますので、私たちといたしましては、今申し上げましたようにもともと貸してあった土地でございますから、丹那の工事のズリをそこに一ぱい捨ててしまったのでありまして、国鉄といたしましては使用の目的もございませんので、これの適当な値段につきましては国鉄内に土地建物評価委員会というものがございますので、その委員会にかけまして値段をきめていただきまして、そうして運輸大臣の認可が得られましたならば貸す――ということよりも売却をいたしましょうというお話をしておりますので、まだ売却をしたというところまではいっておりませんが、そういうような意思を持っておる次第でございます。
○久保委員 そうしますと、今まだ国鉄の所有地でありますね。賃貸借というか、貸借関係は今あるのですか。
○大石説明員 ただいまは貸借関係もございません。まだ国鉄の用地になっております。
○久保委員 それじゃその以前の貸借関係の書類の写しをいただきたい。以前に貸借関係があったのでしょう。それからいつ返してもらったのですか。
○大石説明員 それは丹那トンネルの着工と同時に返していただきました。
○久保委員 それではその資料を出して下さい。
 それから先ほどのお話でございますが、観光客のための鉄道であるからそれに対する補償もしたんだ、こういうお話ですが、近江鉄道はそうですね。
○大石説明員 これは観光客だけではないのですが、観光客が非常に多いということでございますので、そういう面を見ましての収入減を見込んだ算定をいたしたのでございます。
○久保委員 そうしますと、その性格は減益補償というものに当たりますか、お説の通りだとするならば。
○大石説明員 その通りでございます。
○久保委員 今あちらの方で声もありましたが、そのものに権益があると認めたその根拠ですね。これもあわせて一つ資料として出していただきたい。いずれにしてもこの問題は資料をいただかぬことにはなかなかむずかしいかと思うのであります。
 そこで最後にもう一点お尋ねしたいのは、東海道新幹線はいろいろな地方鉄道あるいは軌道、こういうものの場所を横断したり、あるいは交差しているように伺っているのでありますが、その全体に対してもやはり同様の補償をお払いになっておるわけですか。
○大石説明員 たくさんの私鉄と交差をしておりますけれども、このように並行しておるところはほかにはあまり例はございません。他は立体交差と申しますか、ある地点におきまして交差をしておるのはたくさんございますけれども、並行しているところはほかにあまりございません。
○久保委員 並行しているところでそんなに長いところはないと言うが、ほかに多少そういうふうに並行しているところはありますか。
○大石説明員 京都と大阪の付近で一部並行しておりますが、これは阪急の方でレベルが違いますのをきらいまして、新幹線と同じレベルにする工事をやっておりますので、段がついた並行というのはここだけでございます。
○久保委員 その工事費は国鉄負担ですか。
○大石説明員 これはおのおの分担の範囲をきめて分担をいたしまして、こちらも分担をしておりますし、阪急自身が持つべきものは阪急自身が持つというふうに分担をしております。
○久保委員 それではそれも資料として出して下さい。その例ですね。
 それから踏切というかいわゆる立体交差ですね。新幹線が他の鉄道と立体交差する場合の算定方式はどうなっておるか、その算定方式を具体的なものをあげてやはり資料として出してほしい。
 きょうは時間もありませんですから大体以上にいたしますが、東海道新幹線は、国鉄というよりは日本全体の鉄道の焦点になっていると同時に、新幹線の早急完成というか、これも望まれているところでありますが、ともすれば、言葉は悪いのでありますが、金はもうどんなに使ってもよろしいということで気前よくふるまって、とにかく早くできればいいのだというふうな気風がありやしないかと思うのであります。でありますから、巷間そういうふうな声が出てくるので、あなたの方は了解するかもしれませんが、国民全体としてはなかなか了解しにくい部分が相当出てくる。これはもうどう言ってもそういうことなのですから、やはり当委員会としてもこの問題に対してはこれから掘り下げてみなければならぬと思う。単にうわさ話でなくて、今お聞きすれば二億五千万円も一応お払いになったというのですが、その値打があるかどうかの問題も一つあると思う。もちろんこういう大きな工事でありますから、多少のゆるみというか、そういうものもあるかと思うのでありますが、やはり国民の鉄道として運営する場合には、厳正にやっていかなければならぬと思うのであります。しかも聞くところによれば、ここで金を出さぬとどこか別なところで何かじゃまをされるというと語弊があるが、そういうことがあるというのですが、そういうことがありますか。もちろん公式に聞けばないと言うでしょうが、もしそうだとすれば、少なくとも国鉄幹部は腹がすわっていないのではないかと私たちは思うのですが、念のために伺っておきたい。
○大石説明員 今の近江鉄道その他の関連いたしました系列会社のものにつきまして、一つのものが話がつかなければほかのものの話がつかないというようなことはなく、私たちは個々の会社に個々の立場で折衝をしております。むしろこれは私たちのところでは、他の面ではそういう点ももちろんございますけれども、この部分につきましては個々に問題が解決をしておりますし、一つのものが解決したから全部解決するというものではございませんので、一つずつ別個の立場で解決をはかった次第でございます。
○久保委員 いずれにしてもその程度にしておきますが、最後に総裁に一言お尋ねします。
 あなたは、今大石常務理事からお話があった通り、こういう二億五千万円もお払いになることは、総裁としてその程度の金はあまり関心を持っておりませんか、いかがですか。
○十河説明員 もちろん関心を持っております。持っておりますが、東海道新幹線は従来の鉄道と違いまして、たとえば東海道の現在線には百数十の駅があるのであります。それが東海道新幹線はわずかに途中に十駅しかない。駅が方々にありますと、その地方の地方民にいろいろ便益があるということで、土地の買収なり補償なりが比較的楽に行なえますが、東海道新幹線はそれが少ないために、非常に困難が多いのであります。そういう点において担当の大石理事もいろいろ苦労しておることと思います。今のような金も払わざるを得ない、払うのが至当である、こう考えてやったことと存じております。
○久保委員 いや総裁、こういう一つの鉄道に二億五千万円もの金を払う、そういう工事なり補償なりについては、あなたは面接に決裁されるか相談されるか知りませんが、そういうものはされないのかどうかということをお聞きしているのです。
○十河説明員 初めに申し上げましたように、用地の買収とか補償は、他の工事も同様でありますが、全部大石常務理事を信頼いたしましてまかせてあります。私は二億五千万円払ったということは当時は存じておりません。
○久保委員 大国鉄でありますから、なかなか気前がいいといっては語弊があるが、総裁も大事な仕事をされているし、信頼する部下だから、一私鉄会社に二億五千万円払うのは大石常務理事の全責任でやらしてもよろしいということにとりましょうが、今の新幹線のいわゆる予算執行については、十分監督するといっては信頼する部下に対して語弊があるが、しかし、あなたは総裁としての地位にあるものでありますから、ある一定限度のものは当然あなたが目をお通しになるのが当然ではなかろうか、私はそう思う。二億五千万円もの金を払う契約に、あなたがあとから知りましたということではないと私は思う。そう信じたいのです。あなたが知らぬで、大石常務理事の一つの判こでよろしいというような仕組みになっていても、あなたが全然御存じないということはないと思うのです。計算基礎やこまかいことはもちろん総裁は御存じないにしても、あなたの高い判断でこれはどうかというような考えがちっとも入らぬということは、私自身もおかしいと思う。いずれにしても、総裁も大物でありますから、常務理事もそれに相応した責任を持たれると思うので、大へん困難な仕事をおやりになっているのでありますが、どうも今までお聞きした範囲だけでは釈然としません。われわれは、実際言うと、こういうことをこの席で言いたくないのです。新幹線について世間ではいろんな批評をしております。本委員会にいる者は、新幹線はやはり必要であるという考えは、最小限度だれも持っているわけです。しかし、だからといっていかなることも許せるという気持は持っていないのです。しかも、まだ計算基礎を見ておりませんが、どうも今までのような雲をつかむような話で銭を使うということについても、これは当然国民から相当な批判を受ける。これを単に巷間のうわさであり、それは何かの政治的な配慮でやっているのだというふうに受け流すとすれば、これは大へんな間違いだと思うのです。一言だけ最後に申し上げておきます。
○木村委員長 矢尾喜三郎君。
○矢尾委員 ちょっとお伺いしたいのですが、この問題は私の選挙区の中のことでありますから地理は十分心得ております。それで、今の答弁の内容があまりにもでたらめでありますので、私はその実際を申し述べて、質問を簡単にしたいと思うのであります。資料が久保委員の方から要求されましたので、資料が出ましたらまた詳細に質問することといたします。
 今の答弁を聞いてみますと、二億五千万円の補償をされた、これに合わすためにこういう理屈が並べられている以外に何ものもないと私は考えます。というのは、近江鉄道をごらんになれば、大体北から南に走っておる鉄道です。新幹線は東から西に走っておる鉄道です。もしも並行線があるとすれば、米原-彦根間の、彦根から曲がって南に行く、この間が並行線なんです。こういう並行線を取り上げて補償の対象にするならば、京阪神電車と並行しているのは一体どうなんですか。もっと長い間ずっと並行しているじゃありませんか。神戸の方面に行けばもっと並行しているところがずっとあるじゃありませんか。そういう並行線によって近江鉄道の観光客が減る、よそからながめられたときにおいては、そういう説明が全面的に受け入れられるかもわかりませんけれども、電車をごらんになったことがあるのですか。観光客を乗せる電車が通っておるのです。あの電車は、ここらに走っている電車とは違って、何か板の上に薄いかっぱみたいなものを敷いているような電車じゃありませんか。改良もしていないし、日本で一番悪い電車でしょう。その内容を調べてみて、観光客を乗せる電車が走っておるかどうかということ。そうしてまた、この踏切の補償ということでやっておりますけれども、近江鉄道が通っている上を新幹線が通るでしょう。そうすると、近江鉄道というのは直接にこれは関係ないのです。近江鉄道が下に通っているのを、上を高架で通っていくのです。そうすると、近江鉄道がこれによってどういうような被害を受けるか、米原―彦根間においてどういう観光があるのですか。風致を害するようなことがあるのですか。彦根-米原間は近江鉄道が後に延ばした線なんです。並行するとすればこの間で、従来の近江鉄道に関しては何ら並行しておらぬのです。そういうことも十分に御検討になった上でこういうことをされたのであるかどうかということ。また、最初大石理事が申されましたように、滋賀県下においては、土地の回収について大きな反対があって地価が暴騰して困難であったということは、前の名神国道ができる前に、それも七、八年前に、弾丸道路建設反対という期成同盟ができて、全面的な反対運動をやったことがありますけれども、それの買収にかかる、あるいは着工するという最近の段階におきましては、全面的に協力の態勢をとっておるような状況です。その後に新幹線が計画されたのであって、新幹線に対しても反対するという機運はなくなったわけです。その大きな原因は、名神国道の工事が始まる、そうすると土地の者も相当雇われて農村の方から出て行った。そうしてこれはありがたいことだというようなことで、反対の機運というものはずっと下がってしまった。土地も進んで買ってもらいたいというような、前とは打って変わったような現象が現われておるのです。そういうときのことを理由にして、この新幹線の問題を理由に取り上げられておるということは、ちょっとふに落ちぬのです。そして並行線であるとかなんとかということに対しても、並行線に対して補償するというならば、東海道における並行線というものは、今答弁されたことを前堤として今後補償の要求が来た場合においては、国鉄当局はその補償に応じられるかどうかということをお伺いいたしたい。
 それからこの近江鉄道の補償の問題について、実地に十分調査されたのであるか、これが観光鉄道であるかどうかということ、乗客の分布その他について十分に調査されたのであるかどうか。それは先に久保委員が要求いたしました資料の中で十分に回答してもらえると思いますが、そういうようなことにつきましても十分に――一部には、多賀の会社であるとか、彦根から三、四キロ行ったところはありますが、そのほかは農村を通っておる汽車です。そういうような点につきましても私はお伺いいたしたい。七キロ並行しておるということはいかにも理屈が立っておりますけれども、並行したからといって、新幹線の性格というものを考えてみると、各駅停車でいけばそれは被害がありますが、東京を出れば名古屋にとまって、特急は大阪までいって、そして急行にしてもあまりとまらない。近江鉄道にどういう影響があるのですか、何ら影響がないと思うのです。そして南北に走っておる汽車と東西に走っておる汽車と、これが会社に及ぼす影響というようなものは、かえってよい結果を与えるか知らぬが、悪い結果を与えるようなことはあり得ないと私は考えておる。そういう点についての御見解をお聞きしておきたいと思う。
○大石説明員 近江鉄道と新幹線が並行しておる区間は米原-彦根間ではないかというお話でありますが、現に並行しておりますのは、近江鉄道では高宮という駅から五個華という駅までの間で、東海道線で申しますと彦根-近江八幡間を並行しております。この並行の仕方は、先ほど申しましたように、久保委員の御要求によりまして図面を提出をいたしますが、ぴったりとくっついた上を通って――お言葉がちょっと了解いたしかねますけれども、並んでおりまして高さが違っておるということでございますので、今まで近江鉄道の方といたしましては、踏切番や警報機のない踏切であったのが、片方に高いものができますから見通しが非常に悪くなって、踏切が危険の度を増しますので、そういうところに自動遮断機をつけましたり、あるいは警報機をつける、こういうような費用が要るようなことでございまして、この点につきまして国鉄と近江鉄道の間でいろいろと折衝をいたしました結果、補償額を算定をしたのであります。
 また、よく見ておるかという問題につきましては、この工事を担当しております大阪の工事局は、ここにもちろん局長以下全部が何回も視察をいたしますし、また現地も拝見をした結果、さような基礎をつくり上げたのでございます。現地を見ないできめたというようなことではないのでございます。
 それから並行しておるのはどうだというのは、ただいまお話のような補償というのではないということを先ほどちょっと申し上げましたが、御説明が足りなかったと存じますが、駅と駅が同じ駅でございまして、向こうのお客さんがこちらの鉄道に乗り移ってくる、こういうのが普通の営業補償というようなことによく出てくる例でございますが、今度の場合は、もちろんお話のように途中に駅はないのでございますが、今までまわりが広々としておりましたものが、今度はここに土盛りのこういうものができ上がってくるということによりまして、乗客が減ってくるというような主張がございまして、この問題につきましても、相当多額な要求がございましたが、後ほど資料を提出いたしますが、国鉄といたしましても、こまかく各面の乗客の減少を想定をいたしまして、その想定いたしましたものに対します補償額を決定した次第でございます。
○矢尾委員 あの鉄道ができたからといって、客が減るということについても、それは向こうの主張を全面的に認められておるのであって、実際にそれを利用しておる者は、そのなにができたからといって、あの線には乗らぬというような――大体土地の人が多いんです。観光といっても、あの沿線に何の観光があるのです。両方とも田んぼとか山じゃないですか。そういうような、私は観光面において補償したとかなんとかいうようなことは理屈にはならぬと思う。そういうことにつきましても、どういう支障があって乗客が減るかというようなことにつきまして、今すぐお考えにならぬと思いますが、資料の中へ、それも資料として十分調査していただきたいと思います。並行線ができたからといって、その新線とそれから近江鉄道との間の間隔はどれほどあるのですか。
○大石説明員 ほとんどぴったりくっついておりまして、間隔と申しましてもむずかしいのでございますが……。
○矢尾委員 距離ですよ。
○大石説明員 後ほど図面を差し上げますが、ぴったりくっついております。
○矢尾委員 七キロほど並行しておるのですか。
○大石説明員 そうでございます。
○矢尾委員 この七キロというのは、近江鉄道の営業キロですか。
○大石説明員 これは言うのはむずかしいのでありますが、私どもといたしましては本キロと申しますか、実際にはかりました距離でございます。
○矢尾委員 実測の七キロですか。
○大石説明員 そうでございます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/043/0016/04303130016014c.html

<p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p><p>衆議院会議録情報 第043回国会 運輸委員会 第14号</p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p></p> 第043回国会 運輸委員会 第14号
昭和三十八年三月十三日(水曜日)

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本日の会議に付した案件
 踏切道の改良促進及び踏切保安員の配置等に関する法律案(久保三郎君外九名提出、衆法第一五号)
 日本国有鉄道の経営に関する件(東海道新幹線等に関する問題)
     ――――◇―――――
○高橋(清)委員長代理 これより会議を開きます。
 木村委員長は交通事情のためおくれますとのことで、指名により私が委員長の職務を行ないます。
 日本国有鉄道の経営に関する件について調査を行ないます。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。久保三郎君。
○久保委員 先般資料提出を要求いたしまして、本日出て参りましたが、この中で、二、三お尋ねをしたいのです。用地補償の方針並びに基準については後刻お尋ねしますが、具体的な問題として近江鉄道に対する補償の算定基準の中で、一つは業務員の待遇改善というのが、額は少ないのでありますが、出ております。これは運転手、車掌に対するということでありますが、こういうのはいかなる観点からこれは補償の対象になるのか。さらにもう一つは、まくら木の腐食が増加するということで、これまた出ておる。それから踏切設備の保守でありますが、これはいわゆる一方的な補償であって、この施設をやるかどうかはどういうふうになっておるか。言うなれば、こういう踏切設備の保守のごときは、人件費は別として、国鉄においてその設備をして近江鉄道に与えるべきではなかろうかと思うのです。そういう点についてまずさしあたり御答弁をいただきたい、かように思います。
○大石説明員(日本国有鉄道常務理事) ただいまの御質問にお答えいたします。
 この踏切警報機また踏切の幅を広める、その他そういうような工事を仰せのように現物をこちらでつくりまして補償する場合と、これを算定いたしまして相手方の基準で相手方にやっていただきます場合と二つの方法がございますが、私たちといたしましては、実はこちらでやりますと、設備の大きなよりよきものを要求されるというようなことと、またそれができましたあとに、もしそれが故障を起こしました場合に、工事と申しますか、設備の責任といいますか、それをこちらに転嫁されてくるようなケースもございますので、打ち切り補償的に金で補償いたしまして、相手方の責任においてやっていただくということの方が、国鉄の施設に直接影響がございますものはさようなことは申しておりませんが、そういうようなものでないものは、できるだけ相手方にやっていただくということの方があとくされがないと申しますか、そういうようなことを考えまして金で補償をしたのでございます。
 それから乗務員の待遇改善費というようなものにつきましては、これは相当問題がありまして、私たちといたしましても折衝をしたのでありますけれども、ここの十三ページに図面がございますように、近江鉄道と新幹線の構造並びに位置は、この十三ページの図面のような格好に相なりまして、今までは踏切が平面で遠くから乗務口の踏切に対します注意また停止もできたのでございますけれども、こういうふうに片方が高架になりますと、穴の中から踏切に飛び出してくるというようなケースもございますので、相当な労働過量になるということで、これに対しまして乗務手当と申しますか、そういったものも多少改善をしなければならぬというような要求がございまして、かような算定をしたのでございます。
 それからまくら木につきましては、やはりこの図のように風通しも悪くなりますし、また排水その他につきましても、前よりもまくら木に対しましては条件が悪くなるということで、かようなまくら木に対します処置を考慮したのでございます。
○久保委員 ただいまのお話で、まず第一に踏切でございますが、総体としてこの対象になった踏切は何カ所ありますか。この資料の七ページで全部尽くしておりますか。
○大石説明員 踏切につきましては、自動遮断機をつけましたり、あるいは警報機をつけたり、また踏切の幅を広げるというような踏切の改良をいたすことも含めまして、この補償の対象になりました踏切は五十三カ所ございます。
○久保委員 五十三カ所だと、全部補償というか設備改善の対象にしたわけだと思います。そこでたとえば七ページの踏切補償及び防護設備のところでありますが、自動遮断機三千九百万円、これは何カ所でありますか。
○大石説明員 自動遮断機の対象になりましたのが十五カ所でありまして、単価が一カ所二百六十万円、合計三千九百万円、こういうことに相なっております。
○久保委員 たとえば一カ所二百六十万円という単価は、現実的に国鉄でやる場合は大体どのくらいですか。
○大石説明員 この一カ所二百六十万円というものは、国鉄でやりますものを基準にいたしまして算定をした結果でございます。
○久保委員 それから乗務員の手当の問題でありますが、これは見通しが悪くなるというのだが、それ相当に踏切は全部五十三カ所に防護措置をとったわけであります。今までは何らの防護措置がないのがほとんどだと思いますが、こういう観点から言って、これはいかなる算定基準をもっておやりになったのか。科学的根拠は何もないように思うのでありますが、これはどうなんですか
○中畑説明員(日本国有鉄道新幹線総局総務局長) 御説明いたします。乗務員と出しますのは、運転手と車掌の二つの職種に対してでございます。問題になっております並行区間七・五キロの運転時分を計算いたしまして、それに運転手と車掌の平均賃金を単位当たり出したもので計算いたしたわけであります。運転手が一割、車掌が一割程度疲労度が増大するということで単価計算をいたしまして、その総額が二百三十万円になったわけであります。
○久保委員 疲労度の計算で一割とか二割とかの割掛をしたようでありますが、それは別段に根拠がおありですか。
○中畑説明員 これは会社の方の従業員からの非常に強い要望があるというので、一割、二割という目安できめたようなわけであります
○久保委員 別に根拠がなくて要求に従ったということでございますが、百歩譲って疲労度が増すということになりますれば、運転手にはあるいは理由がつくかもしれない、百歩譲っても・・。しかしこの疲労度に関しては、車掌はこの鉄道では前方注視も全部しょっちゅうやっているんでしょう、いかがでしょう。
○中畑説明員 さいぜん説明申し上げましたように、七・五キロの並行区間にはたくさん踏切を設けざるを得なくなりましたので、運転手並びに車掌にいたしますと、従来の業務に比べて非常に骨が折れるということでございまして、従業員からの要求があるからというので、強い要望がございましたので、きめましたようなわけでございます。
○久保委員 そうしますと、とにかく理由はいずれにしても、要求があるから補償した、こういうことでありますね。
 そこで、この問題でありますが、額は少々でありますが、要求があるから出したということではどうも筋が通らぬように思うのです。こういう点についていかように考えておりますか。
○中畑説明員 もちろん会社が要求いたしましたから、それをそのまま認めたというわけではございませんで、七・五キロの並行区間を私ども判断いたしまして、疲労度がそれだけ加わるんじゃないかということを認めましたから、その要求を認めることにしたわけでございます。
○久保委員 それは結局妥協というものであって、別に理論的な根拠があるわけでもないということであります。これは、要求があって、いうならばいい待遇でありましょうが、これより過大の要求があったのだが、これに値切ったのだということになるわけですか。しかし、それはそれでいいのかどうかという問題が一つありますが、これはあとで申し上げます。
 それからもう一つ、まくら木の腐食増ということ、これも額は小さいのでありますが、二百七万ほど、これは積算基礎になっておるようでありますが、「枕木耐用年数を平均八年とする。年間所要額に対し幹線の影響により一ケ年短縮するものとし」八分の一、イコール一二五%を補償した、こうなっておりますね。これはどうなんです。人間の問題じゃなくて、まくら木の腐食度が増加するということは科学的に出るわけです。先ほどもお話がありましたが、ここにも現場の写真がたくさんございますから、局長はごらんになったかもしれませんが、総務局長はごらんになっているかどうか知りませんが、こういうのがいわゆる理由だろうと思う。こういう写真がある。幹線ののり下と近江鉄道の間に適当な排水溝をとればこれは問題がないはずです。これは聞くところによればたんぼの中だそうであります。たんぼの中にあるものがどうして八分の一補償しなければならぬのか、科学的の根拠が出ているのかどうか。国鉄には鉄道研究所というものもございまして、こういうものに影響を与えるのはどの程度与えるものか、こういうものでも研究して補償されましたか
○中畑説明員 今回新幹線を建設いたしました七・五キロの並行区間は、水路の非常に低いところでございますので、雨が降り、雪が降りますと、在来におきましても線路がやられて、その保守に骨が折れるところであるということは、現在の東海道線につきましても同じような傾向がございますので、そのような土地の状態を勘案いたしまして、査定をいたしたようなわけでございます。
○久保委員 中畑局長、どうも答弁がはっきりしない。人間の問題でなくて物の問題でありますから、もう少し科学的な御説明があろうかと思うのでありますが、東海道新幹線にしても、この写真を見ますと、こののり面に排水溝が相当あります。穴があいております。これは当然であります。この水が落ちた場合、当然排水しなければのり下の方がくずれるという心配も出てきはしないかと思うのであります。国鉄の防護のためにも排水溝が必要である、そういうことになるのでありまして、まくら木の問題ではなくて排水溝の問題ではありませんか。近江鉄道自体従来もこういう地盤のところにあったので、東海道のお話が出ましたが、必要ならば当然排水溝を設備すべきであって、新幹線ができたからまくら木の腐食度が増すということは、ちょっと理由にならぬかと思うのであります。これはいかがですか。これも仕方ない、要求が過大であったが、ここまで値切って落着したという数字でありますか
○中畑説明員 まくら木の耐用年数を通常八年と見ておるのでございますが、約一年間程度腐食率が高いという判断をいたしましたのは、先ほど申し上げましたようなことからでございます。
 建設いたしました現場の地形から考えますと、ちょうど琵琶湖の湖水と反対側に、新幹線の路盤でございますが、高い築堤を工事いたしておりますので、水はけも悪くなりますので、腐食率が高い、こういうふうに判断をいたしました。
○久保委員 中畑局長、今のお話は逆でしょう。近江鉄道の琵琶湖の方から見れば外側に新幹線ができておるのです。だから、本来ならば、琵琶湖に向かって水は流れるわけです。それを防ぎとめる役目を新幹線がするわけですよ。そういう理論から言うならば、まくら木の腐食度はさらに軽減されるということになる。逆に向こうから補償をもらわなければいかぬ。そういうことになればそうでしょう。近江鉄道の琵琶湖側から見て中側に新幹線ができるならば、なるほどあなたのおっしゃる通りです。これは外側ですよ。しかも一年短縮すると言うが、一年の根拠がないのではないか。どういう要求があったのですか。具体的に一つだけ聞きましょう。近江鉄道からまくら木腐食度についてはどういう要求がなされたのですか。
○中畑説明員 ただいまお話のございました初めの点でございますが、路盤ができますと、それで水をとめるように考えやすいのでございますけれども、そこは判断でございますが、水をとめてかえって新幹線の路盤のすぐ横にある近江鉄道の線路に浸水の可能性が生ずる、こういうように私ども判断したわけでございます。
 それから一年間という見方でございますが、いろいろ見方もあろうかと思いますけれども、私どもの東海道現在線での事情などから考えまして、この程度でないか、こういうように査定をいたしたわけでございます

  〔高橋(清)委員長代理退席、委員長着席〕
○久保委員 幹線工事は全部技術屋が主としてやっておられるので、専門であるから、ただその程度であろうということではどうも納得できない。
 それからもう一つは、この前の質問でもお話がございました七・五キロの並行線と新幹線ののり下と近江鉄道の路盤とかそういうものが一致するというお話でしたが、ここに私どもは現地の写真を何枚かとってあります。一番密着したところがこういう形です。ここにもございますが、相当の間隔があるわけです。お出しになった図面は、ここにあるのかもしれませんが、ちょっと迷うように私は思う。いかがですか。この写真をごらんになりますか。これは密着していますか。ここに間隔がございますね。一番狭いところらしいですが、片方は築堤になっている場所ですが、いかがですか。
○中畑説明員 さいぜんあの図面でごらんいただきましたように密着いたしておりまして、私も工事中現地を見て参りましたが、場所によりまして多少離れておるところも、七・五キロの区間でございますから、あるかもしれないと思いますけれども、工事中の現場を見ましたところは大体密着して並行しているように私見て参りました。
○久保委員 局長、この写真、これは築堤でなくて暗渠です。
   〔久保委員、中畑説明員に写真を示す〕
それが密着していますか。そういうものまで補償の対象ですか。――局長、写真をごらんになったようですが、こればかりでなく、もっとたくさんありますよ。二、三十枚あるのですが、みんなごらん下さい。これは地元の要求その他があって、築堤にやるべきところを全部こういう形にしたのです。築堤の場所が何カ所かあります。築堤の場所はかなりこの間隔がとってあります。これで影響があるというならすべて影響があるようになりますよ。それでこれはまくら木の腐蝕度が増すなんて、これはまくら木の腐蝕度は増しません。全然関係ありません。あなたが今お話しした琵琶湖の方に注ぐ水がどうのこうのという問題じゃありませんよ、築堤じゃありませんから。これはわれわれしろうとはそう思うのですよ。結局問題は、要求があって泣く子と地頭には勝てないから、値切れるだけこれも値切ったんだという結果がこれじゃないかと思うのですが、そうでしょうね。
○大石説明員 ただいま私は実は現地を図面でしか存じておりませんが、高架の部分もございますが、全部が高架ではございません。全部が築堤でもございません。高架の部分もありますが、築堤の部分もたくさんございますので、その点につきましては私たちは今先生の写真全部がそういうことじゃないということを言わしていただきたいということと、もう一つ補償について妥協したのかという面につきまして、全体的なお話を申し上げたいと思いますが、実は近江鉄道と並行いたしますところにつきましては、種々路線につきまして検討いたしました結果、ただいまのように近江鉄道に並行して路線をつくることが地元に対しましても一番被害が少ないというような観点からいたしまして、路線をきめたのであります。そのときにいろいろな補償の中で、その線路が大阪-京都間におきます京阪神と並行した部分がございます。これは図面の十六ページにちょっと概略書いておきましたが、このところでは約二キロ余り並行しております。ここは地元の方々またその他の要求からいたしまして、踏切が非常に不安全になるので、新幹線と同じレベルにその私鉄を上げてくれ、こういうことで結局上げるということに相なりまして、三キロ余りで一億六千五百万円ほどの分担をこちらがやったのでございます。これと同じような考え方で近江鉄道は要求されて参ったのでありますが、その場合の金が約四億あまりになります。そういうことで私たちといたしましては、近江鉄道にはまことに申しわけないのでありますけれども、近江鉄道のあの程度の鉄道で京阪神のように上げてしまうようなことをする必要はなかろうということを強く会社側にも申し上げまして、その四億円余りというものは困るということで、できるだけそうでないことで安全を増していただきたいというような交渉をいたしたのであります。そういたしまして、今ここにお手元に資料を差し上げましたような項目につきまして、近江鉄道からしからば高架にすることはやめるが、これこれの項目について補償をしていただきたいということを申し出て参ったのでございます。その項目がこの前申し上げましたように、最初は五億余り、次に七億数千万円というような数字になって出て参ったのでございます。高架にしてしまって四億余りで工事ができますものに対しまして、五億ないし六億の補償をするというようなことはとうてい考えられませんので、私たちといたしましては、その項目について逐一折衝と申しますか、こちら側の考え方を当てはめまして折衝をして参りまして、お手元に差し上げましたような一応の内訳を、相手方と折衝をしながら相手に了承をさせて、その総額を二億五千万円としたのでございます。そういうことでございますので、私たちといたしましても、この補償の項目を、相手が申し出てきた項目について一つ一つ説得をいたしまして、額を書きましたので、この点は今お話しのようにまことに不手ぎわなことになったのでございますが、むしろこれは逆に全然別な観点から私たちがはじき出すというやり方もあったのでありますけれども、相手がなかなかその折衝に乗ってこない。自分の方で出した項目についてこれは幾らにする、これは幾らにするというふうにしてくれ、それでなければ話に乗らぬということでございまして、私たちとしてはあくまで立体交差で全部を上げてしまって四億も金を出すということはこれはむだであるということで、極力その中を押さえまして、この前申し上げましたように最初にとにかく一億五千万円で押さえて、工事だけはやらしてくれ、あとの一億円についてはもう少し待とうということで引き延ばしをやったのでございますけれども、ついにそれ以上の説得が私たちの努力が足りなかった結果できませんので、二億五千万円という総額になり、しかもその内訳を相手の出して参りました要求書の項目について算定をしたのでございますので、いろいろな点において私たちの説明の不備な点、また御了解を得られますのに対しましてなかなか困難な点も多々ございますと思いますけれども、今申し上げましたように、高架にすれば四億かかる、これを私たちはどうしても近江鉄道程度の交通量であり、あの路線では高架にする必要はないということで、それをもっと内輪にしていこうということで折衝の結果、相手方の交渉にわれわれが押されたということを言われるかも存じませんけれども、今申し上げましたように項目別に、相手が出して参りました項目について話し合いをしてもらわなければ困るということを強く要求されましたので、相手方の言われたものについてかような算定をいたしました。個々につきましていろいろ御不満な点があり、また私たちといたしましても説明の不十分な点がございますと思いますけれども、そういう事情でございますので、御了承をいただければしあわせと、かように存じております。
○久保委員 どうも御了承いただければと言うが、気持はわからぬわけではありませんが、たとえばこの踏切設備保守の中の人件費の中の間接割掛というのは何ですか。これは大へん多いですね。俸給が二千百七十五万円、諸給与が五百十万円で、そのほかに間接割掛一千八十七万五千円、これはどういうことなんですか。
○中畑説明員 御説明いたします。この近江鉄道の人件世の立て方から計算いたしましたので、間接割掛の額が少し多いのでございますけれども、これは会社の経理の立て方によったものでございまして、今非常にこまかい会社の出しました会社の要求の基礎であるその資料を手元に持ってきておりませんので、数字によって御説明申し上げることができないのですが、人件費の立て方が非常に違ったやり方をしております。
○久保委員 どうも中畑局長、これは何の意味かわからぬですな。もう少しはっきりした意味を言って下さい。何の意味ですか、間接割掛というのは。積算の基礎は別として、どういう費用なんです。間接割掛というのは。
○中畑説明員 これは踏切警手の人件費につきまして、踏切警手の福利的な施設でありますとか、そういった直接の人件費でない間接的な人件費を含めたものをここで間接割掛、こういうふうに呼んでおります。
○久保委員 間接割掛なんというのは、今の話だというと、もう雲をつかむような話でありまして、しかも額は人件費の中で相当なものです。こういうのを大体向こうの出してきた要求に対して討議して結論を得たと言うが、どうもわれわれにはこれは納得いかぬものが多いですね、実際いって。これは各所においてこういう形がとられておりますか。これは大石常務に聞いた方がいいですかな。名所においてやはりこういうものを対象にして補償しておられるのですか、ほかの私鉄に対して。
○大石説明員 ほかの私鉄は、先ほど申し上げました京阪神の場合とこの場合と、二カ所しかこういう場合はございません。先ほど申し上げましたように、京阪神につきましては、立体交差にしてくれということで、工事を全部線路を上に上げてしまうということにいたしまして解決をいたしましたので、かような補償の内容はございません。また近江鉄道につきましては、先ほど申し上げましたように、総額四億のような立体交差化というようなことは、私たちといたしましては、少しあの鉄道、あの地区におきましては過大である、もったいないというようなことからいたしまして、繰り返して申し上げますが、その範囲以下において折衝をするというような交渉をいたして参りまして、どういうものがかかるかということを相手方と折衝をいたしましたところ、今中畑総務局長から話がありましたように、相手方からこういう項目について補償を要求するのだということで持って参りましたのが五億余りのものに相なったのでありまして、その項目々々につきまして私たちはあくまで四億以下にこれを査定しなければならぬということで査定をして参りましたので、一つ一つにつきましては多少精度が落ちるという点もあろうかと存じますけれども、相手方の帳簿なり相手方ののみ込みやすいように、相手方の出して参りました方式によって、これを二億五千万円に押えて参りました。個々につきましては説明のつきかねる点もあるかと存じますけれども、総額において四億を、私たちとしては、あるいは立体交差にしなければならぬかというふうに考えておりますものを極力押えて、ここまで持って参ったような次第であります。
○久保委員 私が聞きたいのは、京阪神の場合はいわゆる並行線でありまして、近江鉄道と大体似通っている。近江鉄道は東海道新幹線と同じように高くすれば四億かかる。それをそういう必要はないというのでこの二億五千万円で実は解決したのだ、こういうお話は一応わかりますが、しかし私の聞いているのは、他の私鉄等についても立体交差の部面は相当あるだろう、そうしますれば踏切の問題が出てくるのだが、この踏切の問題については、たとえば今の間接割掛というか、そういうものを含めて交渉の対象になって、そうして補償しておられるのかどうか、あるいはその防護措置についても同様なものをやっておられるのかということなんです。
○大石説明員 そうした立体交差の場合には、あとから参った者と申しますか、原因者が全額を負担するという原則ができておりまして、新幹線の場合ですと全部あとから新幹線が現在の私鉄をまたいでいくというような関係でございますので、全部こちらで負担をしております。また道路につきましても同じように、あとから行く者がやるということでございますので、全額こちらで負担をし、また交差をするような場合でございますと、直接国鉄に関係がございますので、工事も国鉄でやっておるというようなことでございますので、金を補償するというようなケースはあまり例がございません。
○久保委員 そうしますと、立体交差の場合はまあそれでいい。それじゃ踏切が所在する付近の並行区間というのは全然ほかにはない、ほかの私鉄に関してはない、こういうことですか。
○大石説明員 こういうふうに並行いたしまして相手の踏切を直す、またこちらの工事がほかの沿線の私鉄に影響を及ぼしまして、そこに補償を払うというようなケースはほかにございません。
○久保委員 この防護補強工事の算定基準というか補償基準というか、これは今まで申し上げたような問題どれ一つとっても、やはりどうも割り切れぬものがたくさん残るわけであります。こういうことはこの鉄道と同様のものばかりではないと思うのでありますが、たとえば形を変えていろいろな補償の問題があります。これは前に掲げてある補償基準によってそれぞれやっていると思うのでありますが、そうですね。この「用地補償の方針と基準について」というこの基準についてやる場合に、たとえばこういう人件費の中の間接割掛とか、あるいはまくら木の腐食増とか、あるいは乗務員の手当とか、そういうものに類するものも一般的に補償しておられるのかどうか、それはどうなんですか。
○大石説明員 一般的に、あるいは例が悪いかもしれませんが、この四ページに書いてございますように、工事をやりますために商売をされておられます方が移転をされる、その間にお仕事を休まなければならぬというような場合、またその間にそこに働いておられます職員の方の給料、またもし廃業してしまう場合には、職員の方に対するいろいろなお手当、こういうようなものにつきましては、私たちはここに書いてございますように、こちらの工事に基因いたしましてそういうふうに影響いたしますものにつきましては、それぞれ算定をいたしまして、補償をいたしておるのでございます。あるいはそれが今のお答えに適切かどうかわかりませんが、そういったような無形の補償というものも他の場合にやっておるのでございます。
○久保委員 たとえばこの東海道新幹線が取得した用地に近接して家庭があるとします。その場合に、たとえば築堤のために雪の吹きだまりになる、そういう場合には除雪費がよけいにかかる、たとえばですよ、あるいは排水が悪いので土台が腐るか垣根が腐るかは別にして、そういうものの要求も入れて補償されておるわけですか。
○大石説明員 今の場合で、新幹線ができまして、あるいは排水が悪くなる、通路がなくなってしまうというような場合には、もちろんこれは排水路をつくったりあるいは通路をつけたりというようなことは、沿線の方と協議をいたしてやっております。ただ日陰ができるとかいうようなものにつきましては、いろいろ今まで問題がたくさんございましたけれども、ここにも書いてございますように、訴訟問題まで――これは国鉄の場合にもございますし、その他の例もございますが、そういうような問題まで持って参りましても、こういうものについてはあまり払わないというような判例ができておりますので、日陰とかいう問題については補償をいたしておりませんが、お話しのように、排水が悪くなるとか通路がなくなるというような問題につきましては補償をしておる次第でございます。
○久保委員 あとからまたお尋ねがあるそうでありますから、最後に伺いたいのはこの減収補償費、これは妥当なものですか。方法的にも妥当なものですか。内容的にも妥当なものですか、――内容的には妥当だという御返事だったのですが、方法的にこれは妥当であるか。
○大石説明員 これは事務的に考えましても妥当と申しますか、正当な手続を経てやっておりますので、違法なものではありません。
○久保委員 鉄監局長、あなたの方ではそういう補償について承知しておるわけですか。
○岡本政府委員(運輸省鉄道監督局長) 私の方は全然承知いたしておりません。私の方でもし関係がありとするならば、地方鉄道軌道整備法に基づく減益補償ということに相なりますと、最終的には運輸大臣に申請がございまして金額を決定するということになりますので、当方も承知する関係に相なりますけれども、この場合は全然そういう申請もございませんで、国鉄独自の判断でやったものでございます
○久保委員 これは地方鉄道軌道整備法に基づくものの減収補償ではないですかな。
○大石説明員 この減収補償のものとは性質が違ったものでございます。
○久保委員 違った点を説明して下さい。
○大石説明員 整備法の補償の対象になっておりますのは、同じ地区において同じような営業をいたしましたためにその鉄道に営業上の被害を加えたというときが対象になるのでございまして、今回の場合はこの間に新幹線の駅もございませんし、全然別個のものができ上がったのでございますので、この法律の精神と違っておるというふうに解釈をしたのでございます。
○久保委員 それじゃ関係がないでしょう。もちろん性格が違うのですから全然関係ありませんよ。これはそうでしょう。通るところは同じかもしれぬが、大体営業の範囲が違う。乗る人が違うのですから、影響を与えないですよ。影響を与えなければ補償の関係はないでしょう。ところがあなたが今おっしゃったように観光の客が減るというが、減るかどうかわからないですよ。減ったときにこれは補償すべきであって、減るかどうかわからないのに先に持っていって減るという算定はどうなんです。おかしいでしょう。
○中畑説明員 私からお答えいたします。ただいま先生からお尋ねがございました点でございますが、今回補償いたしましたのは国鉄と近江鉄道の線路が並行いたしまして、近江鉄道が営業上受ける損失というのが、端的な例を申し上げますと近江鉄道のお客さんが国鉄のお客さんになるからそれだけ損失がある、こういう意味のものではございません。国鉄が幹線工事をいたしましたために、その工事によって近江鉄道のお客さんが少なくなる、それによって損失を受ける、こういう考え方で補償いたしたものでございます
○木村委員長 井手以誠君。
○井手委員 ただいまの減益補償についてお伺いをいたします。
 法制局お見えになっておりますか。
○木村委員長 来ております。
○井手委員 会計検査院はお見えになっておりますか。
○木村委員長 まだです。
○井手委員 それではまとめてお伺いいたしますが、近江鉄道に対する減益補償は幾らでございますか。
○中畑説明員 お手元へお配りいたしました資料にございますように、一億円支払っております
○井手委員 今から簡単でけっこうですから御答弁願いたい。いつお払いになりましたか。
○中畑説明員 昨年の六月だったと記憶いたしております。
○井手委員 法制局にお伺いいたしますが、減益補償というのは、これはいわゆるその後に収益がなかった、減ったという実績に対して補償するのが建前ではございませんか。簡単に御説明願いたい。
○關(道)政府委員 仰せの通りだと思います。
○井手委員 久保委員からお尋ねになっておりました減益補償については、法的根拠がなくてはならぬはずであります。いやしくも日本国有鉄道の建設でございますから、法的根拠がなくては補償はできないはずでございますが、その根拠をお伺いいたします。
○中畑説明員 通常の民事上の損害賠償をいたします場合のケースであるということで考えております。
○井手委員 大石政務次官にお伺いいたします。今近江鉄道に対する減益の補償は、通常の民事上の問題だとおっしゃいますが、国会にきょう出されました資料には、その基準はないようです。そういうことができますか。法的根拠がなくて民事上の補償ができますか。簡単にお答え願います。
○大石(武)政府委員 法律上のむずかしい問題でございますので、私よりもっと正確な答弁のできます鉄監局長にお答えいたさせたいと思います。
○岡本政府委員 できると考えております。
○井手委員 それではどういう場合にどの根拠でできますか。
○岡本政府委員 先ほど大石常務理事が申し上げましたように、一般的な民事上の補償であると考えております。
○井手委員 民事上の補償の場合は、法に基づいて補償の基準があるはずです。その民事上の補償を行なう基礎になる法律はどこにございますか。
○岡本政府委員 民法によるものと考えております。
○井手委員 考えてごらんなさい。そんな答弁でいいですか。
 では別な面からお伺いいたします。地方鉄道に迷惑のかかった場合の補償の法律は別にあるはずであります。いわゆる減益補償を含んだものは、法律があるはずです。それにはどう書いてありますか。
○岡本政府委員 地方鉄道軌道整備法第二十四条でございまして、補償の規定がございます。読み上げてみますと、「日本国有鉄道が地方鉄道に接近し、又は並行して鉄道線路を敷設して運輸を開始したため、地方鉄道業者がこれと線路が接近し、又は並行する区間の営業を継続することができなくなってこれを廃止したとき、又は当該地方鉄道業の収益を著しく減少することとなったときは、日本国有鉄道は、その廃止又は収益の減少による損失を補償するものとする。」こうございます。
○井手委員 地方鉄道に迷惑を及ぼしたときには、それによって補償すべきではございませんか。
○岡本政府委員 これも先ほど国鉄の方からお答え申し上げましたように、この地方鉄道軌道整備法二十四条の場合は、新しく国有鉄道が線路を敷設したために既存の地方鉄道がこれによって営業上の影響を受けまして、つまり今まで地方鉄道で運んでおった旅客が全部、新しく敷設された国有鉄道の線路に移る、あるいはそのために営業が成り立ち得なくなった、こういう場合とか、あるいはお客が減ってきて現実に収益が減ってきたというふうな場合でございまして、この近江鉄道と東海道新幹線の関係は、営業上の競合は全然ないわけでございます。つまり近江鉄道の言い分は、自分の線路で運んでおった観光客が、東海道新幹線の築堤によって観光価値が減少するために、その観光旅客が減るという主張をいたしまして、その補償を要求いたしたのでございますので、この第二十四条によるべきものではないというふうに考えております。
○井手委員 鉄監局長、この問題はこの近江鉄道だけを言いのがれすればいいという問題ではございません。これは今後に大きく影響する重大な問題でございますから、慎重にお答えを願いたいと思うのですよ。この地方鉄道軌道整備法というものは、目的は何でございますか。国有鉄道が「地方鉄道業に対する特別の助成及び補償に関する措置を講じて地方鉄道の整備を図ることにより、廃業の発達及び民生の安定に寄与することを目的とする。」とあるのです。こういうための法律ではございませんか。補償の基準、国鉄の敷設によって地方軌道に影響を与えた場合の補償の基準となるものを定めたものではございませんか。そうであるなら、この際に、国鉄に対する思いやりもあるでしょうけれども、はっきりした態度を示してもらわなくてはならぬのです。
 それでは国鉄側にお伺いをいたします。あなたの方から出されましたこの補償基準には、どこに景色が悪くなったことによる収益の減少に対する補償を行なうという文字がございますか。お伺いをいたします。
○中畑説明員 お手元にお配りいたしました資料の四ページ、この条項がそれに該当するかと思います。
○井手委員 どこですか。
○中畑説明員 四ページの「その他通常受ける損失に対する補償」というケースだと考えて処理いたしました。
○井手委員 そのどこに当たるのか、明確にして下さいよ。今お読みになった「その他通常受ける損失に対する補償」というのは、これは(2)の「営業損失補償及び工事に基因する損失補償に対する方針。」の内訳でございます。そのイの「店舗等の敷地が国鉄用地に該当したため、休業又はその他損失を蒙ると認められる場合の補償額は次によることにしている。」こうなっております。そして(イ)は「休業補償」、(ロ)は「得意喪失補償」、(ハ)は「休業手当の補償」、(ニ)は「固定経費の補償」、(ホ)が、今お話しになった「その他通常受ける損失に対する補償」は、この前提になるものは何か、それはカッコじゃない、(2)のイに該当する「店舗等の敷地が国鉄用地に該当したため、休業又はその他損失を蒙ると認められる場合の補償額は次による」ということになっております。わかりましたね。そういたしますと、店舗等の敷地に該当しないで、近くを走っておる近江鉄道、これは入れませんよ。よく見ておって下さい。これには該当いたしませんよ。そうしますと、次に第五ページです。五ページの中ほどを見て下さい。(イ)「国鉄の工事施行中又は工事施行後における日蔭、臭気、騒音等により生じた損害等については補償しない。」ということが明確にあなたの方で書いてある。それじゃどこにあなたの景色が悪くなったから補償いたしますという項目が、原則の補償基準にございますか。
○中畑説明員 ただいまの点でございますが、近江鉄道の場合は、四ページの(ホ)に該当すると申しますのは、国鉄が新幹線を建設いたしますために、近江鉄道の用地を必要といたしました場合でございますので、四ページの(ホ)に該当すると考えましたわけでございます。
○井手委員 うそをおっしゃいよ。何が該当します。店舗等の敷地が国鉄用地に該当するという、そういうための補償ですよ。鉄道用地、国鉄用地にはなっていないのじゃございませんか。建前は、近江鉄道の用地が国鉄の用地に該当したために受ける損失に対して、あなたの方は損失を補償しようというのですよ。これは当然なことなんです。そして日蔭になったとか、あるいは臭気がするとか、あるいは音がやかましくて困るという、どんどん音がして寝られぬような場合でも補償はいたしませんと書いてあるのですよ。だから店舗等の敷地が国鉄用地に該当しておりますか。近江鉄道の敷地がここに該当しておりますか、そこをはっきりして下さいよ。ここに該当しておりますというだけではだめですよ。
○中畑説明員 四ページの(ホ)に書いてございますように、これは例示したものでございますが「営業者の土地の一部が国鉄の工事上必要となり、或は建物の一部が工事上直接支障することになったため、」となったような例示いたしますようなこういう場合に該当すると考えましたわけでございます。
○井手委員 あなたがおっしゃるのは、この場合の「その他通常受ける損失に対する補償」とある。「営業者の土地の一部が国鉄の工事上必要となり、或いは建物の一部が工事上直接支障することになったため、従来の財産価値が減少しもしくは、新たに経費の支出を要することになった場合で、相当因果関係があるときに限り補償する。」と書いてある。その場合には、営業者の土地の一部が国鉄の工事上必要になった場合ですよ。わかりますか。国鉄が幹線の工事に必要になった場合、あるいは建物の一部が工事上直接支障を受けることになったためですよ。近江鉄道は、どこに国鉄工事上必要な敷地になりましたか。いつ近江鉄道の建物が工事上直接支障になるようなことになったのですか。そのときに限って補償するとなっているのですよ。「また、将来の期待利益については、これを喪失することが確実であると認められる場合に限り補償する。」となっておる。これはその工事上必要になり、あるいは建物の一部が直接影響を受けた場合に限るわけですよ。景色が悪くなった場合には、これは該当いたしません。これはあなたの方の文章にはっきりしておるじゃございませんか。そんなでたらめなことはないはずだと思って、特に基準の提出を願ったわけです。案の定はっきりしておるじゃございませんか。これくらい明々白々な事実はございません。
○大石説明員 お言葉を返して失礼でございますけれども、近江鉄道の用地も、新幹線の工事をいたしますための用地を私たちの方では約三千平米といっておりますが、会社では約七千平米と言っておりますが、これは境界がはっきりしないような点がございますので、お手元の資料にも書いてございますが、そういうことで駅構内とか沿線におきます近江鉄道の用地というものを、合計私の方のあれでは三千平米、会社の方では七千平米と言っておりますが、その程度近江鉄道の用地を使用しております。
○井手委員 それは用地を買収したその分については、別に補償があるはずですよ。私が聞いておるのは、あなたの方が説明をなさり、私がお伺いしておるのは、景色が悪くなったからお客さんが減る。それに対して補償いたしましたというのが問題の中心ですよ。その景色が悪くなってお客さんが減るための補償の基準は何ですかと聞いているんですよ。近江鉄道の用地を買収した場合には、買収費にあがっておるでしょう。使用する場合には借上料が入っておるでしょう。それを聞いておるのではございません。
 それではかためてお伺いします。収益が減った場合には、これは今法制局がおっしゃったように、たとえば地方鉄道軌道整備法によっても、これはこうなっておるのですよ。これは一つの基準なんですよ。これは法律ですからね。今鉄監局長も読み上げましたが、「日本国有鉄道が地方鉄道に接近し、又は並行して鉄道線路を敷設して運輸を開始したため、」云々となっております。法制局でも、これは減益の実績が明らかになってから補償しますということをお話しになりました。しかも減益の補償というのは、これは五カ年に規定をされております。あなたの方は十何カ年間補償されておりますよ。法制局、これは正しいことですか。すでに昨年の六月に十数カ年分お払いになっておるそうですか、これは正しいことですか。まだどのくらいお客さんが減るかわかりもしない。東海道新幹線はまだでき上がっておりません。景色が悪くなったためにどのくらい観光客が減るかわからない今日に、十三カ年にわたってすでに――運転開始じゃありません、営業開始ではございません。まだ建設中の今日、すでに昨年の六月一億円も払っておられることは、その内容の妥当性は別です。支払いについてこれはけしからぬことだと思うのです。これは政務次官と法制局からお伺いいたします。
○關(道)政府委員 事実関係を私は今初めて伺うので、本件について具体的に申し上げることができないのでありますが、かりにこの補償が、地方鉄道軌道整備法に基づいて行なわれたものといたしますれば、その法律の二十六条にも明確に補償金額の算出の仕方が書いてございますので、それによったものと考えております。
○大石(武)政府委員 どうもはなはだむずかしい御質問をいただきまして恐縮でございますが、これの法律的な詳しいことは専門家に答弁をまかしたいと思います。先ほど大石常務理事から申し上げましたように、この鉄道を早くつくらなければならぬ、これは国民のためにも、すべての点から急いでつくらなければならぬというところに一番の問題点があったわけでございます。そういうわけで工事を非常に急いだために、多少そう言っちゃ失礼でありますが、足元につけ込まれた傾向があるんじゃなかろうかと私は感じておるわけでございます。そこで私は先ほど申し上げましたように、四億円の立体交差にするための費用であるとか、そうでなかったならば七億円の補償を要求されたということで、できるだけこれを少なくしようとする努力の結果、このような結果になったんではなかろうかと私は考えるわけでございます。そういうわけで、この補償の問題につきましては、総体的にこれを見てやらなければ、やはり国鉄として立場がかわいそうではなかろうか、その努力を一応見てやるべきだと思いますので、実際理屈から言いまして、今の損失の補償の考え方が妥当であるかどうかということにつきましては多少無理があるかと思います。たとえば今の井手委員の質問された点について、解決の仕方に国鉄の側に少し無理があるんではなかろうかと思いますが、総体的な面から考えてやるということに観点を置いてやっていただけば、議論の方法が変わってくるんじゃないかと考えております。
○井手委員 かねがねの大石さんの信念にも似合わないお言葉葉でございます。受け取りかねます。東海道新幹線が急がれておることは私もよく知っております。しかし、急がねばならぬからといって、補償をやみくもに、でたらめにしていいというわけには参らぬのであります。いやしくも日本国有鉄道の東海道幹線でございますから、これはやはり国民の血税で建設されるんですから、あるいは旅客収入で建設されるんですから、これはきびしい態度をもって臨まなくてはなりません。ところが景色が悪くなったためにお客さんが減るための補償というのは、どこにも基準がございません。減益補償というのは、五年間運転を開始してから、実績があがってから支払うのが正しいということは、すでに法制局からお話がございました。これがすでに支出されたことは違法である、この点は明らかになりました。そこで私は続いてお伺いをいたします。
 今の基準です。日陰になったとか、臭気がするとか、騒音があるからというものは、補償しないということははっきり書いてあるんです。景色が悪くなるからというので補償されたためしは聞いたことはございません。
 それじゃ順次にお伺いいたします。近江鉄道というのは、日本でも有数な観光の路線でございますか。
○中畑説明員 私の方で調査いたしましたところでは、お手元の資料の十ページに書いてございますが、観光によるお客さんの乗る収入が二割五分程度くらい占めておるという実績を持った会社であると承知いたしております。
○井手委員 この資料は会社から出されたものであると思いますが、二割五分くらいの観光客というものは、地方鉄道としては普通に達しない程度じゃございませんか。それほど景色を見なくてはならぬような、なるほど近江の国は景色がいいかもしれませんけれども、その汽車の窓に映る景色でお客さんがたくさん乗られるとは私は承っておりません。ここにも矢尾さんがいらっしゃいます。一番詳しいお方です。国鉄の審議会の委員もなさったお方です。その人のお話でも、それほどの観光路線であるとはおっしゃっておらないのであります。今まであなたの方で景色が悪くなったために補償されたためしがございますか。一つずっとあげていただきたい。
○中畑説明員 ほかに例があるかというお話でございますが、ほかに今回の場合のような営業収入の損失を理由といたしましたケースはございません
○井手委員 景色が悪くなったため補償した例は今までなかった、近江鉄道が初めてでございます。そこで突っ込んで聞かなければなりません。初めてだそうで、しかも金は払ってあるそうですよ。私は運輸委員ですから、あまりここで内輪のことをあれこれ言いたくございませんが、とにかくあなたはこの辺でお考えになるところじゃございませんか。総裁も隣にはいらっしゃる。私はここであまり傷つけたくないんですよ。いかに逃げられても、私はいつまでもこの問題は追及しますよ。でたらめです。なお、あなたの方で至急調査してお答えなさるならば、私は待ってもよろしいと思います。きょうはみな私の方の精鋭をそろえてここに来ております。今までの論議で明らかでございませんか。法律に違反して一億円の金を払っておる。今までに例のない補償をしている。これだけでも明らかじゃございませんか。基準はここにはありませんよ。どうですか、至急に調査して国会に御相談になるようなお考えはございませんか。
○大石(武)政府委員 井手委員のいろいろな御質問の内容あるいは御不審の点はよくわかります。私自身も、常識的な考え方からすれば、多少・・(「多少じゃない」と呼ぶ者あり)多少かどうか知りませんが、とにかくいろいろな意見はあると思います。ただ問題は、結論はあとで申し上げますが、私の考え方を先に申し上げますと、御承知のように、日本の国はまだ残念ながらわれわれが考えている理論通り、筋書き通り運ぶ国ではありません。ごね得という考え方が非常に根を張っております。国鉄だけではない、すべての補償問題につきまして難航しているのは、ごね得精神、一つは役所の方、あるいは工事を実施しようという方の無理解、あるいは官僚的な考え方もございましょうけれども、一面にはごね得という思想が強く日本人の間に支配しているというところに大きな原因があるように私は考えております。そういう意味で、今回の問題もその例に漏れなかったと思うのであります。御承知のように、相手がああいう名だたる強力な会社でございますから、私はこれで国鉄は非常に苦労したと思います。こういうことで、何とかして新幹線を早く通さなければならぬという努力があったために、このような多少と申しますか、いろいろな議論がある。だれが考えても多少議論のあるような解決の仕方ではなかったかと思いますが、その間に私は別にさしたる悪意はなかったように考えているわけでございます。
 しかし、いずれにしても、このような事実問題にもなりましたし、やはりこのような不審の点が相当残るとすれば、われわれ運輸省としましても十分にこれを調査して、監督する義務がございます。補償をどうするかということにつきましては、われわれ一々口を出す権限はございません。一つのりっぱな存在でございますから、口を出す権限はございませんが、問題が起こりました場合には、監督所としての立場から十分に監督しなければなりませんから、お説のようにはたして不正があるかどうかということを十分に調査して、その結果によりましてしかるべき措置をとりたいと考える次第でございます。
○井手委員 総裁にお伺いをいたします。
 今までの質疑応答で大体問題の所在は御理解になったと思います。総裁は信頼する大石常務理事にすべて一任をしておるとおっしゃいました。従って大石常務理事のおやりになったこと、またその発言は全部あなたが御承認なさると考えるわけであります。ところが先刻お聞きの通り、景色による減益補償は今まで一回もありません。近江鉄道が初めてだそうであります。ところが近江鉄道の沿線はそれほど景色がいいかといえば、ここに写真を持って参った人の写真を見ましたけれども、なるほど遠くには山が見えます。たんぼも見えます。しかし近所に東海道新幹線が通ったためにそれほどお客さんが減るとは私どもにはどうしても理解できないのであります。しかもあなたの方からお出しになった補償基準には、どこにもそういうものの補償をするとは書いてございません。日陰になったとか、臭気がするとか、あるいはやかましい音がするとかいうものについては一切補償しないということが書いてあります。景色が悪くなったために補償をしたためしはございません。これについて十河総裁はいかにお考えでございますか。私はなお法律的にもずっとお聞きいたしますけれども、ここで一つ総裁のお考えを承っておきたいと思います。
○十河説明員(日本国有鉄道総裁) 運輸省及び国鉄の大石理事や中畑局長からたびたびお答え申し上げましたように、この近江鉄道の場合とよく似た例をたずねてみますと、京阪神鉄道がこれに当たるのじゃないかと思います。京阪神鉄道は、先ほども御説明申し上げましたように、レベルの線路を高く上げることにいたしまして、その上げる費用を国鉄が分担したのであります。近江鉄道もこの例にならって線路を上げてくれ、こういう強い要求があったことは先ほど御説明のあった通りであります。そういうふうにいたしますと、四億とか五億とか金がかかる、国鉄はそういう金を負担しなければならぬということに相なりますから、国鉄といたしましては、でき得る限り東海道新幹線の建設費を安くしたいという考えから、いろいろ折衝をいたしました結果、二億五千万円ですかに落ち着いたわけであります。そこを落ち着けるためには向こうさんでこれこれだといったその申し出を、多少問題のあるところも、これを取り入れることによって妥協ができることになったということでありますから、そういう点を考えていただければ、私も今お話のありましたような点で、いろいろ理論上問題はあろうかと思いますけれども、総合的に考えまして、国鉄の経営、国民の負担をできるだけ軽減しようと努力してやった結果が、四億とか五億とかかかるところを二億五千万円で落ちつけるようにしたということは、先ほど大石政務次官からもお話のありましたように、新幹線総局の努力の結果だと思って、これはやむを得ないことじゃないかと考えております。
○井手委員 総裁がただいま国鉄当局の努力の結果ではないかとお話になった点は、私は総裁の言葉としては受け取りかねるのであります。もう少し謙虚な気持を私はほしかった。私がお伺いしているのは、総合的な問題を政治的なふうに聞いておるわけじゃございません。もし無理なものまとめようとするならば、まとめる方法は別にあるはずです。補償基準にない景色の減益補償までしなくてはならぬはずはどこにもございません。総裁はただいま国民の負担を軽くしたいためのことだとおっしゃいましたが、この景色補償の減益補償は何でございますか。本来ならばびた一文も要らないものを、一億円も払っておるじゃございませんか。国民の負担をそれだけよけいかけておるじゃございませんか。これでどうして国民の負担を軽くするという言葉が言えますか。答弁をすり変えてはいけませんよ。私がお伺いしているのは、景色が悪くなったためにその減益補償をやっておることはけしからぬじゃないか、それは違法行為だ、しかもすでに金を払っておることも違法行違だと私は申し上げておるのである。だからそれに対してお答えを願いたい。近江鉄道が初めてですよ。それを一億円も払っておる。一銭も払わぬでいいものを、あなたが言うならば、なぜ用地買収の補償費で解決しませんか。例のないようなものを、後日ほかの方に非常に波及するような景色補償でやるようなことは絶対いけませんよ。景色補償をしたことは、なぜそういうことをやりましたか、聞いているのです。一億円もの金を、かつてないものを、近江鉄道に限ってなぜ払ったか、これをどうお考えになりますかということを総裁に承っておきます。その点のお答えをいただきたい。
○十河説明員 先ほど申し上げましたように、また同じことを繰り返すようでありますが、四億円、五億円と要求されたものを二億五千万円に切り詰める、圧縮して妥協をするためにそういういろいろな名義を使った。景色の補償とか何とかいう名目にはいろいろ問題があろうかと思いますけれども、やったことはできるだけ補償を少なく圧縮しようというためにやったことであると私は申し上げた次第であります。その名目にはいろいろの問題がありましょうけれども、それよりかできるだけ補償額を少なくしたいということに私は重きを置いているのですから、そういうことの努力を相当やったんじゃないか、そう認めておるということを申し上げた次第であります。名義については、お話の通りいろいろ問題があるかと思います。そういう次第でありますから、これはやむを得なかったのではないか、こう思っておるところであります。
○井手委員 それでは総裁は名義の点についてはいろいろ問題はあるけれども、まとめるためにはいたし方なかった、こういうことですね。それじゃ近江鉄道が二十億も三十億もふっかけた場合はどうなりますか。半分くらいに、あるいは六割くらいに妥協したんだからいいじゃないかというお話です。しかし出すべきものと出してはならぬものは峻固としてあらねばならぬと私は思うのです。景色の補償はしてはならぬはずですよ。そういうものが例になったらどうしますか。今後の鉄道建設に、景色の補償をやるようになったらどうなりますか。相手が実力者だからといって、そういうものをどんどんやったらどういう結果になりますか。そういうやり方は、絶対慎まなくてはならぬのですよ。名義は悪いけれども、しようがなかったということでは、これは済まされません。済ますものではございません。これは後日に大きな尾を引く問題でございますから、この際に明確にしておきたいと思いますが、この近江鉄道に対する支払いは、私はやり直してもらわなくてはならぬと思う。もし土地買収に対して国鉄に誤りがあるならば、それは是正してよろしい。けれども景色の補償をしてはなりませんよ。しかもまだ幾ら減益になるかわからないものに、すでに金を払っておることは、これは断じて許されません。これは近江鉄道から取り戻してもらわねばなりません。それはそうでしょう。景色の補償はしてならぬのに補償しておる、金を払っておる、これは近江鉄道に対する補償はやり直してもらいたい。その御用意があるかどうか。総括的にまとめようという問題ならば、それはほかにやる方法があるはずです。それくらいのことができないような鉄道幹部ではないはずです。そのくらいの政治力がないとは私は思っておりません。やり直しなさい。そういう例のないような、後日に悪例を残すような景色補償はやめてもらいたい。そして別途の方法で考えてもらいたい。違法な金は取り戻してもらいたい。それに対する総裁のお考えを承っておきたいと思います。
○十河説明員 先ほど申し上げましたように、類似の例をとりますと、京阪神鉄道のように、線路を高くしなければならぬのでそういう要求をされた、それと同じようなことをすると大へんな金がかかるからということで、二億五千万円の補償をしたのであります。その補償の内訳に景色の云々という名目を使ったことには、これはお話の通りいろいろ問題があると思いますが、総休の補償額を切り詰めたということについては、非常な努力をした結果ではないか、そう思っております。今のところは私どもこれをあらためてどうこうしようというところまでは考えておりません。
○井手委員 大石政務次官にお伺いいたしますが、十河総裁のお話では、先刻も申し上げたように、名目としては思わしくなかったけれども、まとめるためにこういうことにしたのだ、こういうふうにおっしゃる。しかし景色の補償をするということは、これは大へんな悪例になりますよ。その地方鉄道に及ぼす補償の根拠というものは、地方鉄道軌道整備法によらなくてはならぬはずです。もし今後各方面から景色に対する補償を要求されたらどうしますか。かりに総額において二億五千万円が正しかったとしても、そのやり方は、これはいけませんよ。内容が悪うございますよ。悪いならばこれを直させる必要があると私は考えます。また将来のために運輸省はここにはっきりした態度を示さなくてはならぬと考えておりますが、大石政務次官はこれに対する用意があるかどうか。鉄道に対して、これを直させる御用意があるかどうか。もう国鉄の態度はわかりました。景色に対する名目、これは悪かった、しかし総額において妥当だからがまんしてもらいたいという話です。しかし、そういうことでは今後に悪い影響がございますから、許すわけには参りません。これを直させる御用意がありますか。
○大石(武)政府委員 ただいままでの井手委員の御発言は、十分に考慮の価値があると私は考えます。なるほどその気持においては、あるいは金額においては、必ずしも私は不当であるとは思いませんけれども、その内容に関しましては、あるいは批判につきましては、十分にこれは考えなければならぬと思います。従いまして、十分にその内容を検討いたしまして、なるほどその支払いあるいは補償の項目が不当であるならば、当然これは返還を命ずるとか、あるいはしかるべき措置を講ずるのが妥当であろう、私もそう思います。そのような方法に出て参りたいと考えます。
○井手委員 支払いの内容が不当であるということになりますと、どういうことになりますか。今返還させるとおっしゃいましたね。そうすると景色の補償は返還させるということになりますね。そうでしょう。
○大石(武)政府委員 その内容は、もう少し十分に検討さしていただきます。はたして景色の補償ということでありますかどうか十分に検討しなければなりませんが、もしいろいろな不当な項目がありましたら、これはお説のように返還を命ずることも必要でありましょうし、いろいろな処置をとることも必要であろうと思います。
○井手委員 先般の委員会で、大石常務理事が、あれは景色に対する減益補償であるとはっきりおっしゃいました。速記録にも載っております。もし必要ならば取り寄せましょう。あなたも御記憶がありましょう。それならば返還を命ずべきではございませんか。調査の必要はないと思います。
○大石(武)政府委員 私は、景色に対する補償で払っているのではないと思います。景色が悪くなることによって乗客が減るということの予想に対する補償であろうと思いますが、その考え方が妥当であるかどうか、私今個人で判断できません。従って、しかるべき方法によりましてこれを十分に横付して、妥当であるかないかを検討することが先決だ。その検討した結果によってしかるべく処置を私は命じたいと考えております。
○井手委員 妥当であるかどうかわからぬとおっしゃいますが、それじゃここでもう一つやってみましょうか。
○久保委員 今まで井手委員からお話がありました減収補償のもう一点でありますが、総額一億六百二十万二千円と計算してあります。そのうち普通券の一般収入減価補償額というのが十三年間にわたって補償をするようになっておる。これは観光客が減るということについては今までお話がありましたから、これは除いて、それじゃこの普通券一般収人減についての補償は妥当なりやどうなのか、普通の場合。これは法制局の見解をお伺いしたい。
○關(道)政府委員 具体的な事実は私全然承知しておらないものですから、ちょっとお答えしかねるのでございます。
○久保委員 主たる理由が、その景色が悪くなるから観光客が減るのだ、だから減収だ、それに対する十三年間の補償だ、こういうことを今まで論議されたわけでありますが、普通の収入減というのは、これはちょっとまた話が違うと思うのです。むしろこれは地方鉄道軌道整備法に基づくところの減額補償というか、減益補償というか、そういうことだと思うのです。これで約一億の半額払っているわけですよ。これは鉄監局長、どう思いますか。
○岡本政府委員 たびたび申し上げておりますように、この補償は、地方鉄道軌道整備法第二十四条に基づく補償ではないのでございます。もちろんそういう手続もいたしておりませんし、いわゆる一般の民法による損害賠償に対する補償である、かように考えております。
 そこでこの普通券の場合はどうだというふうなお話でございますけれども、まあいろいろ考え方はあろうと思いますが、観光客がどの程度減るかという一つの推定でございますので、これにつきましては見方によっていろいろあると思うのでございますが、一応国鉄の方でこの程度が妥当であろうというふうに判断したものと思います。私の方でこの判断がはたして妥当であるかどうか、まだ十分検討いたしておりませんが、要するに将来の推定でございますので、なかなかその適否につきまして云々することはきわめて困難な性質のものじゃないか、かように考えております。
○久保委員 私はこれは減額補償の対象にはならぬと思う。たとえば、国鉄の言うことで観光の問題を百歩譲っても、普通券の減益補償というのはあり得ない。なぜなら国有鉄道と東海道新幹線は全然無縁のものですよ。何がゆえに減るのか。しかも補償基準には前段に問題があるが、この後段言いたかったのだろうと思うけれども、さっき中畑局長が言うところの「将来の期待利益については、これを喪失することが確実であると認められる場合に限り補償する。」そうでしょう。これを言いたかったのでしょう。何をもって確実というのです。あなたの方の言うところの観光客が減るということは、なるほどあなたの論法からいえば減るかもしれない。しかしこれは事実に反する。しかし普通券はなぜ減るか。普通の旅客がなぜ減るか。どうして東海道新幹線がわきにできたら減るか。全然無縁のものじゃないか。しかもなぜ確実なんです。確実という証拠は何ですか。ちっともないじゃないですか。十三年間の補償というのは、これは確実だという見込みがどこに立っているのか。こういうところにも問題があるのです。どうもこれは理由にも何にも合いませんけれども、これはどうなんですか。大石常務理事からお答えいただいた方がいいのですか、中畑さんですか、どちらでもけっこうです。
○中畑説明員 旅客収入の減収の影響があります中で、観光旅客の減が一番大きな要素であると考えましたので、その観光旅客収入減について主として今までお答え申し上げたわけでございますが、ただいまお話がございました普通旅客の場合につきましては、近江鉄道の線に並行いたしまして新幹線の大きな路盤ができますので、お官さんがその会社線を利用する機会が減るのじゃないか、その推定に基づいて一般旅客収入減も見込んだようなわけでございます
○久保委員 作文としてもちっともどうも理由にならぬ。大体こういう問題が今まで表へ出なかったこと自体に私は問題があると思うのです。この前お話ししたときに、十河総裁は知らなかった、大石常務理事以下に全部まかせるという。なるほど特殊な事業でありますから、それもけっこうでありますが、こういうこじつけで金を出すというようなことじゃ断じてまかりならぬ。しかも、鉄監局長もおりますが、鉄監局長はこれはもう地方鉄道軌道整備法とは別のものだという、これでなるほど答弁はいいかもしれませんが、少なくともこれは国鉄にまかしておけぬじゃないかと私は思うのです。大石政務次官は政治的な立場から苦しい答弁をされています。これは単に一つの問題ではなくて、幾つもあるわけです。先般お尋ねした熱海の用地の問題にしても、聞けば聞くほど奇怪しごく。この問題はきょうはやりませんけれども、あとでやります。しかも、私は国鉄総裁と政務次官に聞いておきたいのだが、先般ある報道機関によれば、国鉄は昭和四十一年からかもしれませんが、第二次五カ年計画で東海道から先の山陽線中心の新幹線を中心にしての五カ年計画をやるというのだが、今修正五カ年計画が参議院の予算委員会にかかってまだ可決しない、しかも東海道新幹線で幾多の問題が出てきておる。その中で言っておることは、言うならば山陽の新幹線をつくろうというのが主であって、あとはつけ足しだ。そういうものを今日発表するところに政治的な陰謀がある。これは謙虚に反省してもらいたい。疑わざるを得ない。いまだ五カ年計画が国民の期待にも沿い得なくているのに、ことしの予算は東海道新線に比重を置いて目一ぱいの増額をして、三十九年秋までには開通させよう。そのために既設線区は今日ないがしろになっている。これはどうするのかと言ったら、四十年度までにやるという。ところがそのめども今日ついていない。ついていないのにその先をさらにやろうとする政治的陰謀だ。こういうものでごまかされてはいかぬ。政務次官はそのことを知っていますか。
○大石(武)政府委員 現在の五カ年計画を今実行中でございまして、ワクの先の新しい、昭和四十一年からですか何かの五カ年計画ということは、全然われわれは相談にもあずかっておりませんし、そういうことは何も考えておりません。これは単なるうわさではなかろうかと私は思います。
○久保委員 きょうは東海道新幹線の問題でありますからそれにあまり触れませんが、これは私はうわさではないと思う。こういう世間を甘く見た、国民をばかにした、愚弄したような形はとるべきでない。謙虚に、今やらなければならぬ事業について国鉄の幹部は精励すべきだし、運輸省も大臣以下十分な指導をすべきだと思う。私はこれ以上申し上げませんが、少なくともこういう問題は不愉快しごく。
○矢尾委員 今までの質問で大体補償の問題等につきましては、最後に運輸省の方で十分調査して検討するということでありますから、私は一つ踏切の問題についてお伺いしておきまして、そのことにつきましても運輸省として調査を進めていただきたいと思います。
 その前に一つ申し上げておきたいと思いますのは、先ほど総裁が京阪電車の補償問題について申されましたが、京阪神方面のような交通事情のところと、近江鉄道は大体一時間に一本くらい通っている、そういう五分に一本とか三分に一本通っているところとそれを同じような立場で高架にやれというのは笑いものです。一時間に一本しか通っていないいなかの線路を高架にせよというようなことは、これはしろうとだましにはよろしいけれども、実際問題として笑われます。こんなことになぜ金を使うかと笑われます。そうするとこの前の委員会におきまして大石理事が、近江鉄道は観光を阻害されたということを言われました。しかしながら近江鉄道の延長は相当長い、そのうちの七キロです。七キロの間は、ごらんになるとわかりますが、大体田んぼです。そして遠くに山が見える。そうするとあの幹線ができたことによって回りの景色が見えぬようなこともあります。そうして国鉄の工事の現場の担当者にも私はちょっと聞きましたが、近江鉄道からいろいろ要求があって、いわゆる築堤でいいやつを高架でやっていったのがずっと長いのです。現地に行きますと踏切のあるところ、見通しのきかぬところは全部これは高架になっております。そして築堤になっているところは、これは大体田んぼです。そして町になったところはちゃんと高架になっています。ずっとなっています。それで見通しがきくとかきかぬとか、踏切ということになりますけれども、私は踏切は行って見てきました。しかしながら一番大きな町、愛知川町ですが、その町の踏切も踏切番はおりません。踏切注意という札というか、こんな看板が横になっています。一番大きな踏切において踏切番がおりません。そうすると、これは沿線に五十三カ所の踏切をこしらえるということでございますが、ちょっとお聞きしたいのは、こういう七キロの間に現在幾つ踏切があるかということです。現在ある踏切は幾つあるか。国鉄と並行しているのです。ずっと米原から彦根にいく間においては国鉄の踏切がありますけれども、大体において近江鉄道としての踏切が幾つあるか。そうすると、今度七キロの間に五十三カ所も踏切をこしらえるということは、納得することはできないのです。そうしますと、今まで踏切番がおらなかった踏切に踏切番を置く、また多少交通のひんぱんでないようなところには警鐘機を置かれるいうようなことで、いわゆる踏切というものを完備されるのか、現在ない踏切を完備されるのか。現在幾つあるかということを、そうして今度こしらえる五十三カ所という踏切がどういうような配置になっておるか。わからなければ、運輸省の方においても調査されるということでございますから、そういう点においても調査していただきたい。そういう築堤の下をくぐれるように、将来を考えて、工事の方で三つか四つあけています。しかし道路はないのです。両方は田んぼになっている。田んぼの中に将来道ができたら――あぜ道ができるか何ができるか、できないかわかりませんが、人があっちに行ったりこっちに行ったりしますために、幹線の方に穴はあけておりますけれども、そういうところにも踏切番を置いてやられるのであるかどうか。その踏切に対する構想ということについても、八千五百万円からの補償を出しておられるのでありますから、詳細に私は報告もあり調査をされておると考えるのでありますが、この内容につきまして、一応お答え願いたいと思います。
○中畑説明員 在来どれだけの踏切があったかというお尋ねでございますが、手元にはっきりした数字を書きました資料を持っておりませんので、お答えいたしかねるのでございますが、先刻私の方の大石常務から御説明いたしました、踏切の数五十三と申し上げましたのは、その中に現在の踏切を改良いたしますものが入っておりますので、五十三全部新設をするというわけではございません。踏切の中で、将来の交通量を考えまして、自動の遮断機にいたしますものとか、あるいは警報機を置きますものとか、あるいは踏切の幅を広げますものとか、いろいろございますので、それをひっくるめて全部で五十三と申し上げております。
○矢尾委員 資料を置いてきたということでございますから、今すぐというわけではありませんが、八千五百万円からの補償をせられるのであるから、詳細にその報告なり調査をせられたと思いますが、それにつきまして、次会までに一つ御報告を願いたいと思います。
 先ほどの話にまた戻りますけれども、片一方の築堤のまくら木が腐るとかなんとかということを言っておりますけれども、それも実際まくら木が、築堤のやつは――線路の上を流れるならまくら木も腐るかわからないけれども、相当間隔があるのですから、そこに小さな溝があれば水が流れるということもあり得るから、そしてそういうことも考えますならば、私は補償のことにつきましても、運輸省の方としても、十分――現地にいってもらう、そして調べてもらったらよくわかると思いますので、一つ踏切の問題につきまして、次の機会に資料を提出してもらいたいと思います。
○井手委員 関連がございまして中断いたしましたが、ただいま矢尾さんから、怪談みたいな近江鉄道五十三次のお話がございましたが、私はこの機会に会計検査院にお伺いをいたしたいと思います。
 大体お聞きになっただろうと思いますが、この近江鉄道に対する防護補強工事費補償、それから減益補償について、会計検査院でも相当関心を持っておられるということを承っておるのでありますが、調査をなさいましたか、その結果は大体いかがでございましたか、お伺いをいたしたいと思います。
○白木会計検査院説明員 お答え申し上げます。
 近江鉄道に対します補償につきましては、御承知の通り三十六年の末に一億五千万の概算払いが行なわれておりまして、これにつきましては、昨年の三月に国鉄から関係書類等全部いただいております。従いまして私の方でも昨年来内容を検討し、国鉄当局からも御説明を聴取しておりますが、これは担当の方の話では、本年度内には一応精算ということになるようでございますけれども、概算払いでございますので、内容を検討しておりますけれども、まだ結論を下しておりません。
 それから、昨年の六月に出されました減益補償の分、この分につきましては、三十七年度の他の国鉄の経費と同様、私どもの方の業務の建前上、現在及びこれから検討する事態でございまして、いずれも、ただいま結論的なことを申し述べることを差し控えさしていただきたいと思います。
○井手委員 昨年六月であれば三十七年度でございますから、ただいま検査中であることはわかりましたけれども、大体印象としてはわかるはずであります。これは好ましくないというので、内容を重大と見て深刻に御調査をなさっておりますかどうですか、その点だけでけっこうです。
○白木会計検査院説明員 近江鉄道に限らず、新幹線関係の工事は、ただいま国鉄においても特に重点的に施行されておりますので、私どもでも全般的に特に重点を置いて検査しております。近江鉄道に対する補償の分も、もちろん検討いたしております。ただ結論的なことにつきましては、先ほど来申し上げますように、私どもの業務の建前上ここで申し上げかねるわけでございます。
○井手委員 鉄監局長にお伺いをいたしますが、ただいま会計検査院のお話では、昨年の三月にはかなり詳細に国鉄から説明を聞いたということでございますが、鉄監局長は、大体そういうようなものはもう御承知でございましたね。今の減益補償をやったとかなんとかというものについては、御承知でございましょうね。あるいは今の一億円については昨年の六月――昨年の三月の説明にはなかったと思うのですけれども、国鉄がどういうことをやっておるかについては、あなたはかねがねよく御存じであったろうと思いますが、その点はいかがでございますか。
○岡本政府委員 遺憾ながら全然知らなかったのでございます。もちろん監督上、法律に定められた手続をいたしますような事柄につきましては、私としても当然承知すべきでございましょうし、また承知もいたしておるつもりでございますが、個々の補償につきましては、全然報告も受けておりません。従いまして某新聞に出るまで全然知らなかったような次第でございます。
○井手委員 この近江鉄道に関する補償問題やその他の問題、いろいろ私どもは国会として審議しなくてはならぬ問題が多々あると思います。承れば承るほど奇々怪々なものばかりでございます。先刻せっかく総裁からお話がございましたけれども、それでわれわれは承知するわけには参らないのであります。十分検討いたしたいと思っております。しかしただいま鉄監局長からもお話があったように、残念ながら報告を聞いていないということでございますし、大石政務次官も内容については詳しくまだ承知しない部分がおありだろうと思います。またこの席でこの重大な問題に対する結論的なお話を言明なさるわけには政務次官として参らぬだろうと思う。当然ここには運輸大臣の出席を願わなくてはなりません。そういう意味で、私はこの近江鉄道の補償に対しては、きょうのところはこれ以上追求はいたしませんが、今まで論議いたしましたところでは、明らかに不法行為であります。不当じゃございません。違法行為であります。出してはならないものを出しておる、莫大な補償を払っておることに対して、運輸当局はすみやかに調査をしなくてはならぬと考えます。これは野党ばかりの意見ではございません。与党の方々もこれは大へんだというお顔をなさっておる。私に私語もなさいました。そこで運輸当局においては、この内容をすみやかに調査をして、不法なもの、また一部不当なものに対しては、直ちに訂正を求め、是正を行なう適当な処置をとることが私はきわめて必要であると考えますし、おそらく運輸当局はそうなさるであろうと私どもは考えておりますので、この次まで私はこの問題の追及を控えておきたい、運輸当局は、すみやかに内容を調査して、そしていかにこれを阻止したか、是正したかという報告をここに行なわれる御用意がおありになるかどうか、この点を承っておきたいと思う。
○大石(武)政府委員 先ほど申し上げましたように、ただいまの御意見に賛成でございます。私どももこれをうやむやにするわけには参りませんし、これを鮮明にして、しかるべき処置をとりたいと思います。そういう意味におきまして、十分に調査いたしまして、その調査の結果によって適宜な処置をとることをはっきり申し上げます。ただしそれを明確にするには多少時間がかかると思います。従いまして、この次というわけには参りませんかもしれませんが、できるだけ敏速に取り上げますから、その間多少のお時間を拝借いたしたいと思います。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/043/0016/04303260016013c.html

第043回国会 参議院運輸委員会 第13号
昭和三十八年三月二十六日(火曜日)
○岡三郎君 前回国鉄の新幹線工事に関連して衆議院においても問題になった近江鉄道の問題について、国鉄当局から、その間の経緯並びにその後における事情といいますか、そういった点について聴取したいと思うので要求したわけですが、その間の事情の説明をお願いしたいと思います。
○説明員(大石重成君) 近江鉄道と国鉄新幹線との関係につきまして御説明いたします。御質問の個所は、近江鉄道――新幹線が滋賀県下を通ります区間でございます。彦根から近江八幡、ちょうどあの辺のところを通ります区間におきまして、近江鉄道と新幹線が全く並行をいたした区間が約七キロ半ございます。この並行区間の線路を決定いたしました経過といたしましては、いろいろ、国鉄におきまして、新幹線の計画につきまして調査、研究をいたしたのでございますが、いずれの線につきましても、地元の方が、農地をたくさんつぶす、また町をつぶすことによりまして、移転家屋がたくさんできる、いろいろな観点からいたしまして、最初は、滋賀県下を新幹線が通りますことにつきまして、全面的な反対を申されたのでございます。その後、地元の方々といろいろ折衝をいたしましたところ、大体、御指摘の、近江鉄道の線路に沿いまして――近江鉄道の用地でございますが、これが帯状に鉄道用地といたしまして残っておる区間がございますので、地元といたしましては、この新幹線を近江鉄道にできるだけ密着をさせまして、近江鉄道の法尻と申しますか、近江鉄道の用地を使いまして、なお不足の分は民地を提供することによりまして、民地の被害を最小限度にして通ってくれと、こういうようなことで地元の方々とお話し合いがついたのでございます。そこで、われわれといたしましては、できるだけ近江鉄道に新幹線が沿いまして民地をつぶすことを少なくする、これがまた沿線の移転家屋、支障家屋その他の点から見ましても一番被害が少ないというようなことが考えられましたので、採用線路を設定いたしたのでございます。
 そういたしまして、近江鉄道に対しましては、いろいろ比較検討をしたけれども、この線が一番地元の方々にのみ込みやすい、また農地をつぶすことも一番少ない、また今まででき上がっておりました沿線の町の形態をつぶすことも一番被害が少ない線であるから、この線に沿って私たちは線路を決定したから、近江鉄道の用地を買収し、またその他踏切の改良その他につきまして、私たちは近江鉄道と協議したいということを近江鉄道に申し込んだのでございます。
 そういたしましたところ、近江鉄道といたしましては、これまた全面拒否をして参ったのでございます。さようなことで、自分たちだけが犠牲になって線路を作られては困るということの観点からいたしまして、全面的に協議を拒否して参りました。しかしながら、私たちといたしましては、その他に線路を移すというごとは非常に支障が大きくなりますので、鋭意近江鉄道に対しまして説得をいたしまして、この近江鉄道に並行する路線の決定を承諾してもらうように働きかけたのでございます。
 そういたしましたところが、近江鉄道といたしましては、それでは自分のほうの条件があるということでございまして、まず第一に言って参りましたことは、話は少し前後いたします――少し申し落としましたが、拒否いたしましている間に、近江鉄道といたしましては、自分たちは新幹線に対して全面的に反対するわけではないのだが、自分たちの線路に乗りかかってくるような構想が困るのであって、数百メートル離してくれという話がございました。しかしながら、この離すということは、地元との問題がございますので、これは私たちとしては承諾することができませんので、どうしても近江鉄道に並行する線を強硬に申し入れたのでございます。
 そういたしましたところ、近江鉄道といたしましては、最初に条件として出して参りましたことは、近江鉄道は、さように大きな鉄道が乗りかかってこられたのでは、運営することができないから、全面的に買収をしてくれという申し入れがございました。しかしながら、この申し入れにつきましても、私たちといたしましては、聞く筋合いのものではございませんので、これを拒否いたしました。そして、買収はいたしません、だから並行するということで承諾をしていただきたいということを、なお執拗に近江鉄道と折衝したのであります。
 そういたしましたところ、近江鉄道といたしましては、しからば補償を出してくれというような話が出て参ったのであります。その補償に二色ございまして、一つは、近江鉄道は間の構造が地平の線路でございます。畑の地区から約五十センチないし一メートルの高さの線路でございます。また、そこを並行して通ります新幹線の線路の高さは、平均いたしまして約六メートルの高さでございます。これは、六メートル以上のところもございますが、最小六メートルの高さを通るような格好に相なりますわけでございますので、近江鉄道と新幹線とのレールの高さが、一番小さいところで五メートルないし五メートル五十の高さの差が出てくるわけでございます。そういうようなものを作りますのに対しましては、近江鉄道といたしましてはいろいろの障害がある、これに対して補償をしてもらわなければ承服はできないということを言って参ったのであります。その補償の項目が二項目ございまして、一点といたしましては、踏切が見通しが悪くなる、その他というようなことで、そういうような物理的と申しますか、そういうものにつきまして二億六千万円の補償をほしい。それからまた、今までそういう平らな所を走っておりましたところが、そういう谷間になりまして、ほこりをかぶりましたりいろいろなことになりますので、お客さんが減ってくるということを申しまして、この補償が、最初は一億五千万円の損害があるということを言って参ったのでございます。でございますから、二億六千万円とプラス一億五千万円、合計約四億一千万円の補償をしてくれということを言って参りました。しかし、これに対しまして、私たちといたしましては、さような大きなものに対して補償するわけにいかぬということを言っておったのでございます。そうこういたしまするうちに、今度は、さようなことで話がまとまらないのなら、自分たちといたしましては、そういうこまかい問題で議論をしておっても話がつかないから、近江鉄道を高架にしてくれ、新幹線と同じレベルにそろえてくれ、そういうことのほうが安全でもありますし、いろいろな点において地元の方もよりよい状況になりまするので、並行区間を並ぶような高架にしてくれという要求が出て参ったのでございます。これにつきましては、私たちといたしましては、一応理屈のあることでございますので、ひそかにこの高架にいたします金がどのくらいかかるかということを算定をしてみたのでございます。そういたしますと、約四億金がかかる、こういうことが――これは近江鉄道に発表したのではございません、私たちが事務的に、内々におきまして、高架にした場合にはどのくらい金がかかるかということを算定をいたしましたところが、約四億金がかかる、こういうことでございます。しかしながら、まことに近江鉄道に対しましては申しわけのないことを申すのでございますけれども、あの程度の鉄道だったなら何も高架にしなくてもいいのではないかということを私たちはひそかに考えまして、この四億は少し金がかかり過ぎるので、もっと安くこの問題をおさめられないだろうかということにつきまして折衝を重ねたのでございます。そういうような高架にしてくれと言って参りましたのが、三十五年の暮れでございます。約一年かかりまして、この問題につきまして折衝をして参ったのでございます。
 そういたしましたところが、先ほど申し上げました、収入減が一億五千万円、設備の増強費が二億六千万円といったのは、その後いろいろ調査をしてみた結果、収入減といたしましては、先般一億五千万円と言ったけれども、これは五億余りになるというような返事が来たのでございます。そういたしますと、七億数千万円の要求に四億一千万円ばかりのものが変わってきたのでございます。しかしながら、私たちといたしましては、あくまでさようなことに取り合う気持はございませんし、またその交渉の途中におきまして全面的に高架にしてくれというような話もありました。高架にいたしますと四億でいくのでございますので、四億以上の七億というような金を出すくらいならば、高架にしてしまったほうが国鉄のほうとしては安上がりでいい。しかし、なお一そうこの四億を安くいくために折衝いたしまして、現状のままの姿にしてできるだけ会社の説得をするということをやったのが、約一カ年かかりましてやりました。
 ところが、総額二億五千万円という数字におきまして会社が妥結をする様子が見えて参ったのでございます。そこで、私たちといたしましては、この総額二億五千万円ということであれば、まず私たちが全面的に高架をすれば四億かかるであろうということから見ますると、相当内ワクにこれを押えたのでございますし、もちろんこれは全面高架の問題ではないということで承知をして参りましたので、ここでもう一つ一押ししようという努力をしまして、まずしからば二億五千万円をあなたのほうでおのみになるということになるならば、七億数千万円の補償に対しまして二億五千万円ということできたのだから、これをあなたのほうはどう解釈するかという、折衝のうちに話が持ち上がったのでございます。そういたしましたところが、会社といたしましては、自分たちが最初二億六千万円設備改良その他にかかるというものが、この二億五千万円のワクにはめてみると一億五千万円になるということを会社のほうが申してきたのでございます。そこで、私たちといたしましては、それでは一応二億五千万ということにつきましては、あなたのほうから設備の改良その他につきまして一億五千万という数字が出てきた、この問題の一億五千万ということについては直ちに話がわかりました――これは近江鉄道の用地も使っておりますし、いろいろな問題が入っておりますので、話がわかりました。それでは一応一億五千万円を最初差し上げることによりまして工事に着工さしてくれということを話をしたのでございます。これが三十六年の十二月でございます。そのときに、一応設備改良その他につきまして一億五千万円の補償を払うことによって直ちに全面的に工事着工の承諾を得たのでございます。そうして同時に、残る一億につきましては、なおこの線路ができましたためにいろいろと支障を来たすことによって減収をするという問題については私たちも納得がいきかねるから、もう少し資料を突き合わせて調査をしようというようなことを申し残しまして、工事に着工したのでございます。そのときに、十二月に金を一億五千万円払いまして、年度内にこの話をつけてくれ、そういうことを目途にして協議をいたしましょうということで、工事に着工をしたのでございます。
 その後、現地におきまして、いろいろと調査をし、協議をいたしましたが、なかなか結論に到達をいたしませず、三十七年の三月になりましてもまだ結論が得られずにおりましたところが、近江鉄道といたしましては、総額二億五千万というものについて国鉄と当会社とが協議が整っておるのに対しまして、一億五千万だけ払って工事をやって、その後何ら誠意を見せてこないので、今までの話はやめて工事を中止してくれという申し入れが出て参ったのでございます。そこで、私たちといたしましては、工事を中止するというわけにも参りませずいたしますので、再びいろいろな資料をとりまして検討をいたしました結果、残りの一億を三十七年の六月に支払うという段取りに相なったのでございます。そのときに、もはやいかなる要求も今後はしない、二億五千万円において――これは、私たちといたしましては、いろいろ問題がごたごたいたしまして、再び全面高架というようなことを言い出されましても、問題が複雑になるということも考慮いたしましたし、また用地その他につきましても、沿線の地元の方と近江鉄道との言い分が食い違っておるところもございますしいたしますような問題が残っておりましたので、あとで何かこの問題につきましての要求がましきことが出てこられては困るということを考えましたので、これをもってすべてを打ち切りにするという一札を取りまして、三十七年六月に残り一億を支払ったのでございます。そういたしまして、その支払うときに、近江鉄道のほうの総額が四億を、私たちといたしましては二億五千万に妥結をいたしましたので、内訳を近江鉄道の出して参りました七億の内訳に合わせまして、一億五千万は設備改良その他、一億は減収その他ということで支払ってほしいという要求がございましたので、総額が二億五千万に押えられておれば、内訳は会社の最初に申し出ました姿にし、また会社の要求の姿に合わせてやるということが話を妥結させますのに便利であろうかというふうに考えまして、ただいま申し上げましたように、一億五千万は設備改良その他、一億円は減収その他に対する補償であるということで、二億五千万円を支払ったのであります。
 近江鉄道と新幹線との関係、またこれに対しまして二億五千万を支払いました経過の概要は、以上であります。
○岡三郎君 この近江鉄道というものは、資本金どのくらいの会社ですか。
○政府委員(岡本悟君) 資本金は三千四百万円でございます。
○岡三郎君 従業員はどの程度ですか。
○政府委員(岡本悟君) 三百七十八人でございまして、これは昭和三十六年度末現在でございます。
○岡三郎君 この会社の最近三カ年間の収支状況、決算状況ですね、これをちょっとお聞かせ願います。
○政府委員(岡本悟君) 最近三カ年間の経常収支はわかりませんが、昭和三十六年度について申し上げますと、運輸収入は、旅客が一億七千七百二十四万九千円、貨物が八千五百四十三万六千円、そのほかの雑収入を加えますと二億八千八百一万円、営業費は三億二千四百十一万九千円でございますので、差引三千六百十万九千円の欠損に相なっております。もちろん無配でございます。
○岡三郎君 そうするというと、この会社自体としては赤字である、三十六年だけれど。その前はすでに調査ができておるはずじゃないかと思うのだが、どうですか。
○政府委員(岡本悟君) 今手元に資料を持ち合わせておりません。もちろんわかりますので、後ほどお届けしたいと思います。
○岡三郎君 こまかい数字じゃなくて、ずっと無配ですか。
○政府委員(岡本悟君) ずっと無配であるように記憶いたしておりますが、あとで確かめまして御返事申し上げます。
○岡三郎君 この会社の設立はいつごろですか。
○政府委員(岡本悟君) 明治二十九年六月十六日でございます。
○岡三郎君 資本金三千四百万円になったのはいつごろですか。
○政府委員(岡本悟君) はっきりした資料を持っておりませんので、後ほど調べまして御返事申し上げます。
○岡三郎君 次に、近江鉄道の帯状の用地、これはどのくらいの坪数になるのですか。
○説明員(大石重成君) これは七キロ五百メートルでありまして、近江鉄道の言っておりますのは七千平方メートルであります。こちらで確認をしておりますのが――といいまするか、沿線の地元の方の言っております言い分から取りますと、三千平方メートルと言っておりますので、先ほど申し上げましたように、そのような点につきましてあとでクレームが出ないように、私たちといたしましては三千平方メートルを取りまして、近江鉄道の用地と確認をしたわけでございます。
○岡三郎君 ずいぶん弟があるけれども、それは一体どういうふうにしてその差が出てくるのですかね。
○説明員(大石重成君) これは、近江鉄道の用地のほかの民地を買収いたしますときに、先生方十分御承知のことを私申し上げて恐縮でございますけれども、買収いたしますときに両地主の立ち会いを必要とするのでございまして、このときに近江鉄道に立ち会ってくれということを申し出ましたところ、近江鉄道からは立会人が参りませんでした。そこで、私たちとしましては、あなたのほうが立ち会いをしないならば、沿線の地主の方のおっしゃることをもって確認をいたしまして、近江鉄道のほうの財産の区分点をきめますということを、近江鉄道のほうに念を押しまして、それでよしということになりましたので、私のほうが、沿線の地主の方から申し出られました数字からいくと三千平方メートルになっておるのであります。あとで近江鉄道が言っておりますのは、その沿線はここまでだということを、境界の食い違ったことを申しておりましたが、それを含めますと七千平方メートルになっておりますが、沿線の地主の方から私どものほうの聞き取りといいますか、立ち会い確認によりまして三千平方メートルと確認をしたのでございます。
○岡三郎君 そうすると、確認ということは、近江鉄道のほうは七千平方メートルになる、そこで調査するために立ち会いをしてもらいたいと言ったら、出てこなかった。それで、実際に調査したら、沿線の地主からの意見も含めてみると三千平方メートル、こういうことですね。
○説明員(大石重成君) そのとおりでございます。
○岡三郎君 それで、これは全部が近江鉄道の用地ですか。
○説明員(大石重成君) 新幹線の用地のうち一部が――近江鉄道の用地だけに新幹線ができたのじゃございません。新幹線の用地は、近江鉄道の用地とそれに沿いました民地との両方にまたがっておるわけでございます。
○岡三郎君 それで、その民地のほうには坪どのくらいで払ったのですか。
○説明員(大石重成君) ただいまはっきりしたことがわかりませんが、私聞いておりますのは、平米二千円から二千二、三百円の間だと思います。
○岡三郎君 二千円から二千二、三百円。
○説明員(大石重成君) これは後ほどよく調べましてお答えいたします。
○岡三郎君 近江鉄道のほうにはどの程度払ったのですか。
○説明員(大石重成君) 近江鉄道のほうは、先ほど申し上げましたように、二億六千万円という数字が出て参りましたのを、一億五千万円にこれを圧縮をいたしましたので、用地その他につきましては平方メートル七百七十円でございます。
○岡三郎君 そうすると、設備改良というのがその他の費用というわけですか。端的に言うと、土地の分は幾ら、それから設備改良の分は幾らと、こうお答え願いたい。
○説明員(大石重成君) これは、先ほど申し上げましたように、二億五千万円というものを最初に頭をきめまして、一億五千万円を設備改良ということにし、その他を減収補償というような向こうの申し出た姿に変えましたので、この変えて向こうに支払いましたときの内訳を申し上げますと、用地費が約七十万円、その他が設備改良でございます。一億五千万円の中が、七十万円の用地費ということにし、その他が設備改良、増強施設などに相なっております。
○岡三郎君 設備改良というと、その内容をひとつ説明してもらいたいね、どの程度の設備改良になっているのか。
○説明員(大石重成君) これは、内訳を今申し上げますけれども、一億五千万円を――向こうの要求二億六千万円が出てきましたものをそのまま圧縮したような形に相なっておりますので、多少アンバランスのところがございますけれども、大きいものから申し上げますと、踏切が、今まで平面交差でございましたものが、そのそばに立体交差のものが並ぶということで、警報機をつけましたり、あるいは遮断機をつけたり、そういうようなものがおもなものでございまして、その踏切をいたします金が八千五百万円と……。それからもう一つ申し上げたいと存じますことは、こういう今私が申し上げますものを合計いたしますと一億六千七百万円になるのでございますが、これは先ほど申し上げましたように一億五千万円にしておりますので、大きい数字だけを申し上げますけれども、数字が少しずつ違っておることを御承知いただきたいと思います。踏切の設備が八千五百万円でございます。それからそのまた踏切を設備いたしましたのに対します補修費とかその他が七千二百万円、これらが一番大きなものでございます。
○岡三郎君 ちょっと、踏切を何する費用ですか。
○説明員(大石重成君) 設備をいたしまして、後にそれを補修していく、そのものの姿で完全なものに守っていくために多少の修理をいたしましたりするものの金をある程度つけてやったわけでございます。
○岡三郎君 それがおもなものですね。
○小酒井義男君 関連。説明を聞いておりますと、平面交差のところを立体交差にするわけですか。
○説明員(大石重成君) 平面交差のところは立体交差にいたしません。近江鉄道は平面交差で、新幹線は立体交差になっておるものでございますので、今までの平面交差の状況が非常に悪くなる、築堤の中に穴があいてそこからすぐに平面交差に出てくる、こういうふうに踏切の条件が非常に悪くなりますので、そこに警報機をつけましたり、あるいは自動遮断機をつけたり、必要によれば踏切警手をつけるというような設備の要求があったということでございます。
○小酒井義男君 何かそういうものの補償について、何年間どういうふうに補償をするというような基準でも国鉄のほうにあるのですか。
○説明員(中畑三郎君) 全部に基準があるというわけではございませんが、踏切の関係につきましては、道路と鉄道との交差に関する協定というのが国鉄と建設省で取りきめたのがございますので、大体それに準拠して積算をいたしましたわけでございます。
○小酒井義男君 それですと、大体何カ年くらいになりますか。
○説明員(中畑三郎君) 今回の場合は、大体十五年間ということにいたしました。
○小酒井義男君 人件費と補修をしていく費用との比率というのはどのくらいになるのですか。人件費のほうがはるかに大きいですか。
○説明員(中畑三郎君) 補償いたしましたのは人件費と物件費の双方でございますが、そのうち人件費につきましては、俸給が幾ら、諸給与が幾ら、あるいは間接の割掛費が幾らといったように、ただいま申しました協定で大体の基準額をきめておりますので、その基準の額を使いまして計算をいたしました。
○岡三郎君 先ほどの説明で、ほこりをかぶったり客が少なくなるというので一億五千万円、それが交渉の結果一億になったという話ですが、ほこりをかぶるというのは一体どういうことなんですか、レールの上を走っているのですからね。
○説明員(大石重成君) これは線路の高さが、先ほど申し上げましたように、五メートル高さがあるわけです。それから土地の構造物が、原則といたしまして、約七キロ半のうち約七キロぐらいは盛り土の構造でございます。その上を高速列車が走りますので、砂ぼこりが下の線路の上にかぶってくる、こういうようなことでお客が減るというようなことを申されまして、先ほど申し上げましたように、一億五千万を要求しておりましたのが、後になりましてこれを五億と言って参りましたので、私たちはこれに対して、さような毛のは考えられないという交渉をいたしたのでございます。それに対しまして、あくまで全面高架の四億以下にこれを押えるという、大まかなと申しますか、妥結の根本方針を念頭に置きまして、その内訳を、会社のほうの申し出の内訳に合わせた内訳を作って折衝いたしたのでございます。
○岡三郎君 工事の間においてはほこりが出るかもしれぬけれども、新幹線に車が走っていく段階になって、ほこりがもうもうと出るような工事なんですか。
○説明員(大石重成君) これはもう、私たちといたしましては、さようなものではなくやっておりますが、四億という数字を二億五千万に押えまして、そのときの内訳を、向こうが、そういうような自分たちが七億数千万円の要求を出してきた、そのひな形に合わしましたものでほしいということを言って参りまして、しかも、私たちといたしましては、その二億五千万ももっと時間をかしてある程度話し合いをしていきたいということで、最初に一億五千万を払いまして、工事を着工して参りました。後の残金を今度は旅客の収入減という姿で払え、払おうというような話し合いになりましたので、さような内訳を使ったのでございますが、私たちといたしましては、そのもうもうと砂ほこりのたつようなものは作らないということを十分説明をしたのでございますけれども、最後の姿はそういう姿であるということでございます。
○岡三郎君 それはそうだと思うのだ。七キロ半の間もうもうと汽車が通るたびにほこりをあげているという、そんなものだったら、新幹線名物になって、話にならぬと思うのだ。
 それで、話はまた別になりますが、客が少なくなるという――この平常の客と新幹線ができてからの客が少なくなるという、それは、伝えられているところによると、景色が悪くなる、こういうふうに言われているが、その間の説明はどうだったのですか。
○説明員(大石重成君) 景色が悪くなるというのは、少し話が大きくなっているのではないかと思うのでありますが、私たち、向こうのほうからの要求でございますと、観光客と普通旅客が減る、団体客も減る、こういうようなものをそれぞれ合計いたしまして、十五カ年間よこせ、それで五億一千万円減るという書類を突きつけられたのでございます。それを先ほど申しました二億五千万円の中にはめ込みまして、最後に一億という数字をこの姿にしてほしいという要求がございましたので、話を妥結させるという意味におきまして、観光客の減り方、一般旅客の減り方、団体旅客の減り方というものをそれぞれ按分をいたしまして一億円を算定した表を作って、内訳として会社に渡したのでございます。
○岡三郎君 その旅客が少なくなるという説明ですね、向こうの説明の根拠は何だったのですか。私が考えれば、新幹線と近江鉄道は客の奪いっこをする性質の鉄道ではないですね。近江鉄道に乗る人が、新幹線ができたから近江鉄道へ乗らなくて新幹線に乗るという性質の線路でないと思う。いわゆる普通に言われている並行線といっても、全然質が違う。そうなるというと、直接旅客を新幹線が取るのでなくて、ほかに理由が出てくると思うのですがね。観光客といってみても、新幹線へ乗って観光をするというわけには参らぬと思うのだ。そうするというと、巷間伝えられるように、景色代ということになると思うのだが、これは違うのかな。もうちょっと詳しく説明してもらわぬとわからぬ。なぜ旅客が少なくなるのか、向こうの言っている理由を説明してもらいたい。
○説明員(大石重成君) 近江鉄道からこちらの大阪の幹線工事局長のところに出て参りました書類、先ほど申し上げました、収入が五億一千四百万円減るといっておりましたものに書いてありますことは、新幹線敷設による当社沿線風致阻害、観光客減殺によって観光旅客運賃の収入減がある、こういうことを向こうは言っているわけでございます。
○岡三郎君 そこで、その景色代ということになってくるのですが、景色代に一億円払ったというのは前代未聞だと思うのですがね。先ほど大石さんが言ったように、これは旅客が少なくなる、客が少なくなるということで収入が減る、これならばある程度の筋が立つと思うのですが、それはどうして減るのか。私はその理由もようわからぬと思う、今の説明の中身では。先ほど申したように、新幹線と近江鉄道とは全然目的が違うし、旅客の取りっこをする線路ではないのだから、まあ景色のことがあるから乗る人が少なくなると言ったって、そういうものでもないと思うのだ。これはやはり金を取るためのごね代ですか、あなたの率直なところを聞きたい。
○説明員(大石重成君) 私が申し上げてどうかと存じますけれども、五億一千万円を、こういうためにお客さんが減って、その損害をこうむるから、その補償をしろということにつきましては、これは非常に数字が大き過ぎるというふうに考えております。しかしながら、私たちは、これを根拠にして算定の資料にいたしたのではなくて、先ほど申し上げましたように、全面的に高架にさせられた場合には四億かかる、これを四億以内に何とか押えていこうということに重点を置きまして、その七億数千万円出て参りましたものにつきまして、全面高架でいけば四億になるという、その内訳に入れていこうということで努力をいたしまして、二億五千万円のところで承知をさしたというようなのが折衝いたしましたときの重点でございます。
○岡三郎君 五億一千万円なんというべらぼうな金、こんなものは問題にならぬ。それを一億になったんだから、ずいぶん安くなったんだからいいじゃないかというふうに聞こえるがね。そうではなくて、今の話でいうと、高架にするというと四億かかる。ところが、あなたの説明では、この鉄道がにわかにここで高架にするほどの鉄道ではないということになれば、これも向こうのごねる一つの材料だと思うんですが、じゃ一般の沿線の住民が、鉄道が通るから響くから、みな木造家屋をやめにして、コンクリートで建て直してもらいたい、景色が悪くなるから、みな五階、四階にして、上のほうでよく見えるように、風通しのいいようにしてくれというふうになると思うんです、話の筋からいうと。高架でなくても、鉄道は本来の目的に使用できるわけでしょう。そうするというと、国の施策としてやる仕事なんですからね。そういうふうな建前で、ずいぶん住民もがまんしているのが多いと思うんです。ところが、私鉄が、こういうふうな国の仕事に対して、高架にしてくれとか、やれ何だとかいって、七億とか幾らとかいう要請をするということは、言語道断だと思うんだが、そういう数字がひょこっと出てくるから、二億五千万円はちょっと安いようにあなたたちは錯覚を起こすけれども、もっと基本的に考えてみれば、景色代一億円というのは、これはけしからぬ。だから、低くなって見通しが悪くなるといったって、これが鉄道本来の目的が達成できないというのなら、これはたいへんな問題ですけれども、そうでなくて、それは使用にたえて、十分間に合う。それに対する設備改良についても補償をする、そうしてそれに伴うところの費用弁償もしているわけですから、これを高架にすれば四億かかるのを、この程度になったんだから安いと思われる、その説明もある程度わかるけれども、向こうの言っていることはもともとふっかけですよ。そういうふうに、今の説明の中身からいってとれるわけですがね。しかし、今ここではこれ以上は申し上げませんが、先ほどのこの会社の決算状況、役員構成、こういったものについての過去三カ年間の資料と、それから、明治二十九年に設立されたといいますが、三千四百万円の資本になったのはいつ、それで、大体この鉄道の沿革をたどって、どの程度配当したことがあるのか、幾年ごろから無配になっておるのか。まあ俗に言うと、これは厄介会社、厄介になっておる会社と受け取れるわけです、説明を聞くと。だから、たまたま新幹線が通るので、得たり賢しというふうな印象を非常に受けるわけです。そういうふうな点で、今の内容の資料と、旅客、貨物、その他の収入、そういったものについての、やはり最近三カ年の傾向を表わした数字、それからその後における――三十七年の六月ですから、もうぼつぼつ一カ年がじきにたつわけです。そうすると、最近における乗客数というもの、こういったものについてひとつ説明資料を出してほしい。
○小酒井義男君 資料をひとつ。非常に珍しい書類だと思うので、近江鉄造の出した要求書をもらいたいんですがね。
○説明員(大石重成君) 小酒井先生のおっしゃるのは、向こうからこちらに出した書類でございますか。
○小酒井義男君 そうです。
○岡三郎君 それとあわせて、踏切、これは警報機をつけたり、また踏切の設備をする、そのための補修、こういうことで八千五百万円、七千二百万円――七千二百万円は十五年間、こういうことですが、こういう点について、どういうふうな施設をするのか、単価の状況を出してもらいたいと思います。
 だいぶ、今聞いたところでは、直接向こうへ行ってみぬと、なおこまかい事情はわかりませんが、何かつかみ金的な、いわゆる七億幾ら出して、高架の場合には四億幾ら、そう言ってだんだんだんだん、国鉄のほうが負けさしたのだか向こうのほうが折れてきたのかは別として、二億五千万円で結着をつけて、土地が七十万円で、今言ったような設備改良が一億五千万円のうちほとんど、こういう点で、あとの一億円が風景その他いろいろの理由があるわけですが、それは資料として今小酒井さんが要求しましたので、高架に向こうがしてくれと言ったときに、しなければならないものなんですか、これはどうなんです。
○説明員(大石重成君) これは、地元の方々が非常に踏切の状況が今までよりも悪くなるということで、しなければならないかというようなむずかしいものではないと思いますけれども、新幹線の他の一例、もう一つこういう例があるのでございますが、そこは約三キロ新幹線と私鉄が並行しておりますが、これは全面高架にいたした構造にしております。
○岡三郎君 それはどこですか。
○説明員(大石重成君) 京阪神鉄道でございます。
○岡三郎君 これは私鉄の規模が全然違うね。大体実情がわかりましたので、先ほどの資料をいただいてひとつゆっくり検討さしてもらいたいと思います。
○小酒井義男君 関連をして二、三お尋ねをしたいのですけれども、東京-大阪圏で私鉄と並行をしておる個所あるいは私鉄の上を高架で通過するような個所というものは、何個所くらいあるのですか。
○説明員(大石重成君) 国鉄と近江鉄道のように並行しております区間は、近江鉄道と、先ほど申し上げました京阪神鉄道、二カ所でございます。立体交差――交差をしております区間は、これは相当数ございます。十数カ所ではないかと思いますが、相当ございます。
○小酒井義男君 私は、この問題が新聞などで報道をされたことが、いろいろな影響を今後も与えることになると思うのです。実は、あれを見たときに、交通ジャーナルですか、運輸ジャーナルですか、あれを私も見たときに、まさかこういうことがやられておるとは実は考えられなかったのです。ところが、衆議院で質問が出て、そうしてそれが事実であるということを聞いて、実は驚いたわけでありますが、そういう条件の中でこれだけの補償がされるなら、もっと現実にいろいろ影響を受けておる者たちが補償をしてもらうのは当然だという、そういう気持というものが非常に強まってくるのじゃないかと思うのです。そういう点について、やはりこれは非常に私は問題だと思うのですが、政府のほうでどういうお考え方か。何か、衆議院の委員会では、この支払ったことに対して次官御発言になっておったようなんですが、どうなんでありますか。
○政府委員(大石武一君) ただいまの小酒井委員の仰せられたように、私も早い話がごね得だと思いますけれども、ごね得ということがあまり世間に宣伝されますと、これが悪例になるおそれは十分にあると考えております次第でございます。
○岡三郎君 ちょっと国鉄総裁に聞きたいのですが、先般の上丸子の補償の問題のときに、総裁は社会通念上と言われたが、こういうふうにお払いになるのは社会通念上妥当だと思いますか、どうですか。
○説明員(十河信二君) 先ほど大石常務理事から説明のありましたように、会社の要求、地元の要求等で、京阪神と同じようにこれを高架にしなければならぬというようなことは、どうも社会通念上あり得ないのじゃないか。したがって、大石常務が言われましたように、この近江鉄道の補償は、高架にするという費用をこれは最小限にして、これをより内輪に、できるだけ国鉄の負担を軽くしようということで努力いたしました結果、今申し上げましたような点で妥協をしたということだと思っております。その内訳の収入減や、先ほどお話ありましたような景色の何とかいうふうなことは、それはいろいろ問題になっておもしろくないと思いますけれども、全体をできるだけ圧縮しようということで努力をした結果、こういうふうに落ちついたのじゃないかと考えております。
○小酒井義男君 もう一点だけ、AFEシステムというのは、支払い方法か何かにあるのですか。
○説明員(大石重成君) これは、支払い方法じゃなくて、予算の執行権を総裁から現地の局長に落とします操作でございます。
○小酒井義男君 そうすると、それは一定のワクが現地に渡っておって、現地でそれを支払っていいということになるのか。これだけのものを限定をして要求をしてくれば、あなたのほうから現地へ落とすというシステムですか。
○説明員(大石重成君) 新幹線とかあるいは建設線といったようなものにつきましては、この場合でございますと、大阪の工事局長が、大阪の工事局長の所管の中の鉄道につきまして、新幹線を建設するためにこれだけの予算支出を認めるぞという事務的な操作が、AFEという操作であります。
  〔委員長退席、理事天坊裕彦君着  席〕
○小酒井義男君 これは、運輸大臣のほうは別に関係がなしにやれるのですか。
○説明員(大石重成君) これは運輸省とは関係がございませんで、国鉄総裁が部下の現地局長に予算執行権をゆだねるという操作でございます。
○小酒井義男君 資料をいただいてからまたお尋ねをしたい、資料を見た上で質問をさせていただくかどうか判断したいと思いますが、私はまあこれでやめます。
○相澤重明君 大石政務次官、地方鉄道軌道整備法、これの二十四条、二十五条、二十六条、どういう関係があるか、説明してもらいたい。
○政府委員(大石武一君) 非常に法律的なむずかしい解釈なものでございますから、当面の責任者である鉄監局長にお答えさせたいと思います。
○政府委員(岡本悟君) 地方鉄道軌道整備法第二十四条は、御承知のように、「補償」とという項でございますが、ちょっと読んでみましょうか。「日本国有鉄道が地方鉄道に接近し、又は並行して鉄道線路を敷設して運輸を開始したため、地方鉄道業者がこれと線路が接近し、又は並行する区間の営業を継続することができなくなってこれを廃止したとき、又は当該地方鉄道業の収益を著しく減少することとなったときは、日本国有鉄道は、その廃止又は収益の減少による損失を補償するものとする。」、いわゆる廃止補償あるいは減益補償というふうに言われておりますが、これは先ほど岡先生の御質問にございましたと存じますが、新しくあとからできました国有鉄道が並行いたしましたり、あるいは接近いたしましたりして、いわゆる営業上競合関係になる、つまり、今までAという私鉄に乗っておったお客が、新しく国鉄が線路を作って営業を開始したために、その客が新しい国鉄の線路のほうへ移ると、こういった場合の規定でございまして、岡先生のおっしゃるように、東海道新幹線は、これは営業を開始いたしましても近江鉄道の客を奪うという関係にはないわけでございまして、したがいまして、この地方鉄道軌道整備法第二十四条は、この際には適用がない。もちろん、適用がある場合には、国有鉄道は、私鉄側と協議が済みますというと、それを運輸大臣に申請して参りますので、これで初めて運輸省としては関係が出るわけでございます。
○相澤重明君 二十四条の今一の項の説明をしたわけですね。それに関係をして、補償をする場合に「五年をこえてすることができない。」、たとえば補償をした場合ですね、第二項はそう規定しておるわけだな。それから第三項、四項、こういうものも、五項を含んで、運輸を開始するというときに初めて今の運輸大臣の問題が出てくるわけですね、そうですね。それには今回の場合は該当しない、近江鉄道の場合は該当しないということになると、国鉄はこの法律関係としては、地方鉄道軌道整備法というような法律は関係がないと、こういう解釈をとっておるということですね。
○政府委員(岡本悟君) さようでございます。
○相澤重明君 運輸省もそのとおりの考えですか。
○政府委員(岡本悟君) そうでございます。つまり、一般的な損害賠償というふうな意味で支払っておるものと解釈いたしております。
○相澤重明君 今の議論については、いずれ私は決算委員会で、こういうことは決算上の問題ですからね、決算委員会でやります。ただその解釈だけ聞いておけばよろしい。それで、法律二十四条については、一般的な損害補償ということで、運輸省も国鉄も認めておる、こういう解釈ですね。
 それから二十六条、説明して下さい。
○政府委員(岡本悟君) 二十六条は、「減益補償金額」の算定方法でございますね。
○相澤重明君 そうです。
○政府委員(岡本悟君) これをずっと読んでみましょうか。
○相澤重明君 読んで下さい。
○政府委員(岡本悟君) 「第二十四条第一項の地方鉄道業の収益が減少した場合における毎営業年度の補償金額は、当該地方鉄道業の毎営業年度における益金が、その営業年度の営業用固定資産の価額に日本国有鉄道において同条同項の運輸を開始した日の属する当該地方鉄道業の営業年度の前営業年度末からさかのぼり既往三年間における営業用固定資産の価額に対する益金の平均割合を乗じて得た額に不足する金額以内において運輸大臣の定める金額とする。但し、毎営業年度における補償金額は、益金とあわせて営業用固定資産の価額に政令で定める割合を乗じて得た金額をこえてはならない。」と、つまり、たとえばこの国鉄が昭和三十七年度に営業を開始したということになりますと、前年度でございますから、昭和三十六年度、三十五年度、三十四年度と、三カ年間の平均の益金の割合を出しまして、それを営業用固定資産の価額に対してこれを乗じまして出した額に、差引いたしまして不足する金額以内において運輸大臣の定める金額とすると、こういうことでございます。
○相澤重明君 今鉄監局長の法律を読み、説明をしたことから考えますというと、これもこの法律は適用はない、こういう解釈でいいですね。
○政府委員(岡本悟君) さようでございます。
○相澤重明君 法律の適用であるかないか、そういうまた補償であるかないか、こういうような問題は、私ども参議院においては、三十六年度の決算が今審議中であります。総理大臣に対して総括質問をこれからするところであります。こういう問題については、決算上の問題でありますから、当委員会として、私はここで今質疑をする考えはございません。しかし、三十六年度の決算を政府が一般会計並びに特別会計を提案をしておりますから、したがって、その中で私どもは、今の政府の考え、国鉄の考えが正しいものであるかどうか、こういう点については決算委員会で審議をするにしても、いわゆる専門の問題は、これは常任委員会の問題であるから、疑惑のないように、また法律の適用が誤りないようにするのが私は当委員会の使命だと思うのです。そういう意味で、先ほどから御説明を聞いておりましたけれども、やはり問題は、支払いの方法なりあるいは金額の問題ということについては、どうもなかなか簡単に納得するような状況ではないようです、いろいろこの法律、条例等を総合してみるに。したがって、それがわかりやすくできるように、運輸省なり国鉄当局がひとつ資料でも作って説明をしたらばどうだろうかと思うのです。いわゆる巷間に国鉄の不信を出されるということは、私どもはまことに遺憾である。そういうことがあってはならない。必要な経費というものは、これはもう当然払わなければ、近代社会の中でなかなか工事を進めることはできない。しかし、それが必要な資金であるか、金額であるかどうかということは、先ほどのお話の法律関係等も、やはり十分適合できるようにしておかなければならぬと私は思う。
 いま一つ、政府がせっかく御出席ですから、運輸省にお尋ねしておきたいのは、公共用の事業のための用地取得に対する問題についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
○政府委員(岡本悟君) たしか私どもの記憶では、昨年の六月に仰せの公共用地取得に関する法律が成立いたしたと思いますが、当然東海道新幹線の工事の場合にはこれは適用があるわけでございます。そういうふうに解釈いたしております。
○相澤重明君 したがって、この次の委員会までに、いかがですか、今の関係の法律の条章を抜粋をして、それから国鉄が今回とられた措置について先ほど岡委員なり小酒井委員から資料要求がありましたが、それらの資料の提出をして、親切に説明をして理解を求められるようにする。私は、この常任委員会の場はけんかの場じゃないと思うのです。要は、いかにして問題を国民の各位に理解をしてもらうかということが、まず議員としてのあり方だと私は思うのです。そういう意味で、つまらぬ不信を出すだけが問題じゃない。あるいは、そういうことを宣伝するだけが問題じゃない。したがって、十分理解をしていただくように、やはり説明ができるように、資料を出すことが一番私は問題の解決になるだらうと思う。そろいう意味で、私は出していただく問題点として、今地方鉄道軌道の整備法というものを実は読んでいただき、また説明を求めたわけです。そういうことにひとつ頭を進められて、きょうは、まあ私がやるとなるとたくさんあるだろうし、ちょっとやそっとの時間じゃ終わらぬだろうし、それから予算の執行上という面でいけば、これは決算上の問題になるから、決算委員会で私はまたお尋ねする時期もあると思います。そういう意味で、議事を進行する意味で、以上の点を委員長と政府側に要求しておきますが、いかがですか。
○理事(天坊裕彦君) 今の点、よろしゅうございますね。
○政府委員(大石武一君) まことにありがたい御配慮でございます。そのように準備いたします。これは次の委員会と申されましても、問に合うように努力いたしますが、何せ一番理解しやすいようによく資料をまとめたいと思いますので、少し時間をおかし願いたいと思います。できるだけ早くやりたいと思います。

いままでも疑惑とか不祥事が国会で追及された例はいくらでもあるが、政府がここまで開き直るのは珍しいわ。

ウィキペディアに「真相は異なる」と書き込んだ方がこの国会議事録まで読んだのかどうかは分からんし、私は、彼が引用した国鉄の工事報告や鉄道ピクトリアルを読んだことはないので、一方的なことは言える立場にはないので、どなたかお詳しい方よろしく。少なくとも彼が正当だと言っている「防御補強」の根拠はインチキくさいし、「営業補償」も規定にもない例外で、会計検査院からは「不当」との指摘を受けているんだよなあ。

(なお、後掲の国会議事録では、磯崎国鉄総裁が「つかみ金」で理屈なんかつかないというような趣旨の答弁をしている。)

ところで、政府答弁中「御承知のように、相手がああいう名だたる強力な会社でございますから」ということで、「はて、近江鉄道とは、そんなに大きな会社だっけw」と思ったりするわけだが、その「名だたる強力な会社」は、ほかの場所でも似たようなことをやっているようだ。

長いので先に要約しておくと

新幹線が通る予定地の伊豆箱根鉄道の廃線跡に新線(下土狩線)の免許を申請して、許可のおりないままに、新幹線に支障となる工事を勝手に始めた。

・箱根の山に新幹線用の送電線を作るために国土計画の土地を通過する必要があるがそこの交渉がムニャムニャ

・他方、新丹那トンネルのトンネルズリ捨て場の払下げを受けようとして上記を交渉材料にしようとしている。

・近江鉄道も伊豆箱根鉄道も国鉄との連絡運輸に係る国鉄への支払金を滞納している。

堤さん一族が。

これこそ「封印された鉄道史」じゃないですか。小川裕夫さん如何でしょう?

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/043/0016/04306110016031c.html

第043回国会 衆議院運輸委員会 第31号
昭和三十八年六月十一日(火曜日)

    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国有鉄道の経営に関する件(東海道新幹線の予算に関する問題)
     ――――◇―――――
○木村委員長 これより会議を開きます。
 日本国有鉄道の経営に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。
○久保委員 東海道新幹線の工事に関連してまずお尋ねするわけでありますが、先般予算委員会でも若干質問がありましたので、多少重複するところがあるかと思うのでありますが、一応順を追うてお尋ねをいたしたいと思います。
 まず第一に伊豆箱根鉄道と新幹線に関係してでありますが、これは伊豆箱根鉄道が昭和三十七年の四月に下土狩線の免許申請を出しておるわけであります。まず第一に、この下土狩線の免許申請に関して運輸省の見解はいかようになっておるか、これをお尋ねしておきたい。
○広瀬説明員 免許申請は名古屋の陸運局に提出されまして、陸運局の手元にしばらくございまして、ごく最近本省に上がってまいりました。ただいま鉄道監督局において審査中でございます。
○久保委員 この会社は、すでに予算委員会でもお話がありましたとおり、免許を待たずして路盤を構築し始めたということでありまして、その中間において警告を発したというのでありますが、よろしくこれは法に照らして処断すべき性質のものではないだろうかと思うのであります。新幹線の妨害であるかどうかは別にして、免許申請中にもかかわらず、工事施行認可も受けずして――もちろん受けませんから。――それを路盤構築を始めたというのでありますから、当然これは法に基づいて処断をなし、その免許申請は却下すべき性質のものではないだろうか、かように思うのですが、いかがですか。
○広瀬説明員 名古屋の陸運局長から文書で工事中止命令を出しまして、これに従いまして会社のほうは工事を中止したということでございます。現在は工事を中止しておるという段階でございます。
○久保委員 鉄監局長は新任早々でありますから何でありますが、私がお尋ねしていることはそういうことではないのでありまして、地方鉄道法に基づいてまず処罰をしろということであります。
 それから、当然そういう不当な行為をしたものについては、免許の申請は一応取り下げることが当然ではなかろうか、こういうふうに思うわけですが、いかがですか。
○広瀬説明員 法に従って処断するかどうかという問題は、十分に慎重に検討いたしたいと思います。
 なお、そういうけしからぬ行為をしたからというお話でございますが、本省でいま審査中でございまして、十分慎重に審査をいたしておる段階でございます。
○久保委員 この伊豆箱根鉄道は、免許を受けずして、あるいは工事施行認可を受けずして着工したことは事実でございますね。そうですね。
○広瀬説明員 これはもう少しよく審査をしてみませんと、――どういう意図でどういうかっこうで工事をしたということをよく調べてみたいと思います。
○久保委員 ここに写真もございますから、この工事をしたことははっきりしているのではありませんか。ごらんになりませんか。ごらんにならなければ、この写真をお貸ししますからどうぞ、これとこれです。
○広瀬説明員 ただいま申しましたように、私まだよく――いま写真を見せていただきましたが、私自身まだよく検討しておりませんので、鉄監においていま十分に検討しておりますので、その上で結輪を出すつもりでございます。
○久保委員 政務次官、あなたも御存じないと思うのですが、これはもう工事を始めたというのです。一部は路盤が完成したのです。ここに道路がございます。道路に渡すところの橋げたはこの上に乗っかっているのです。かけるばかりになっている。この工事をしたいきさつについて調べてはおらないのでありますか。なぜ工事をしたか。ただあなたがおっしゃるとおり、書面で警告を発したということでありますが、書面で警告を発したからには、いわゆる工事を始めたから警告を発したと私は思うのですね。だというならば、何がゆえに工事をしたのか、これはお調べにならなかったのですか、いかがです。
○大石(武)政府委員 ただいま鉄監局長のお答えしたとおり、いま実態を調べておりますので、もう少し実態がわかりましたならば正確な内容と方針についてお答え申し上げたいと思います。ただ、警告を発したゆえんのものは、おそらくこうだと思います。鉄道建設の申請をしておる、そしてどうも鉄道建設に類似するような行為があったので、許可を得ずしてそのようなことをしてはいけないから、鉄道建設ならばそういうことをしてはいけないのだぞという警告を発したのだろうと私は考えます。処分とかいろいろな問題もございますが、それはやはりそれだけの法的な事実と根拠をつかまなければ、なかなかそういうことはできませんので、十分にこれを検討いたしまして、そのような場合にはしかるべき措置を講ずることになると考える次第であります。
○久保委員 鉄道の建設工事でなければ、陸運局はこれに対して警告を発する権限は何もありませんぞ。そうでしょう。たとえばそれが道路であるとかあるいは何か堤防であるとかいうことなら、陸運局長がこれに警告を発する権限はどこにもないのです。鉄道なるがゆえに――実体は鉄道の路盤です。はっきり言って路盤です。だからその辺は、いままでお調べにならぬというのはおかしいです。いかがですか。
○大石(武)政府委員 いまその係官が参りまして、詳しいお答えをすると思いますので、ちょっとお待ち願いたいと思いますが、当然考えれば、警告を発したことは、鉄道の路盤をつくっておるように感じられるので、私はそのような法律を犯してはいけないという意味で、万が一犯してはいけないという意味で警告を発したのだろうと思います。もう少し詳しいことは、いずれ係が参りまして詳しく内容を御報告申し上げます。
○久保委員 これは幾ら国会の論議でも、あまり持って回ったようなお話はもうやめたほうがいいと思うのですよ。鉄道建設にどうもなりそうだということで警告を発するという程度のものではないのですね。実際いって。申請をしていて、しかも非公式な話では、いわゆる東海道新幹線の横断をこれによって阻止しよう、もちろん話によってはということでありましょうが、そういう話が事実あったでしょう。お聞きになりませんか、いかがですか。これは国鉄から聞いたほうがいいです。いかがですか。下土狩の問題については、国鉄に従来どういう話がありましたか。いわゆる廃線敷の路盤、これを横断するについて、伊豆箱根鉄道との間の交渉はどうなっておるか、今日ただいまではなくて、いままでの経過はどうなっておるか、中畑さん、お知りでしょう。
○中畑説明員 新幹線の工事につきまして、その廃線敷を通る計画になっておりますので、会社に申し入れをいたしましたところ、会社側のほうで免許を受けて御殿場線のほうへ鉄道工事をやる計画があるのだということで、会社のほうの申し入れがございました
○久保委員 政務次官並びに鉄監局長、いま中畑幹線局長が言うとおり、伊豆箱根鉄道からは国鉄に対して、ここは免許を受けて鉄道を引っぱるから、そういうことになっておるからという話があったという。これは明らかに鉄道です。それでそこへ構築物をこしらえているわけです。廃線敷のままならいざ知らず、新しく廃線敷をあんこにして路盤を高くしておるわけですね。しかもこれは東海道新幹線よりははるか高く構築しているのです。新幹線の通過はわかっておるので、純粋にこの伊豆箱根鉄道をつくるというならば、新幹線の下をくぐらせるとかあるいはそれ以上の上にするかということでありますが、この写真でごらんのとおり、これは全然そういう意図はありません。これはもう単なる通せんぼうです。だからいまの中畑局長の証言のとおり鉄道建設なんです。鉄道建設の意図を持っているものを、どういう意図かわからないからということでは、これはどうもおかしいと思うのです。だから一つには、名古屋の陸運局長から文書によって警告を発した。それはいわゆる陸運局長の権限からいって、片方では事実免許申請を出しておる、免許申請を出しておるから陸運局長もこれを鉄道と認めた、だからこれはちょっと待て、免許を受けてないということになる。いまの中畑局長の話でも、ここは免許を受けて鉄道を敷くのだ、こういう話です。だから免許を受けずしていわゆる鉄道建設にかかっておるのでありますから、これは当然処断しなければいかぬ。何もふしぎはないのです。それを陸運局長から上がってきたからいまは鉄監の中で調査中だ、審議中だとかいうのは話がおかしいのです。審議中はいいとしても、第一段階としては地方鉄道法によって、これは処断しなさい。いかがですか。やはり法は明らかに適用すべきです。もっともたいした処罰じゃありませんよ。罰金にしてもこの会社にとればスズメの涙以下ですよ。しかし処断は処断です。しなければいかぬです。いかがですか。やってください。
○大石(武)政府委員 これは久保委員のお説のとおりでございます。おそらく名古屋の陸運局でも、これはどうも鉄道建設の路盤工事であるというような大体判定をしましたので警告を発したのだろうと思います。そのことにつきましてはその一切の関係の書類が最近こちらへ上がってまいりましたので、先ほど鉄監局長から答弁申し上げましたように、十分に検討いたしまして正しい筋に持ってまいりたい、こう考えております。
○久保委員 正しい筋というのは、私が言うことがまず先だろうというのです。免許するかしないかはそれからの話です。私はその免許申請を取り下げろ、却下しろというのです。それはまだ第二の問題です。まずもって免許を受けずして構築が始まったのですから、これは押えるのが当然だし、処分するのが当然だ。そんなことをやっていいんですか、それはどうなんです。だからこれは処断することがまず先決ですよ。その次には、私の言うとおりこういういわゆる免許申請を却下しろというので、これはいかがですか。
○大石(武)政府委員 この問題につきましては、いま所管がかわりましたが、前の民鉄部長にお答えさせたいと思いますが、しかしその趣旨はおっしゃるとおりだと思います。そういう二つの段階に分けることもお説のとおりでありますが、それもやはりしかるべき手続によりまして――と申しますのは、一応そのような疑いがあるというので陸運局長の手によって警告を発してその工事を押えたのでありますから、工事はとまっておりますから、あとはそのあと始末の問題でございます。その問題につきましても、かりに処分するにしましても、官僚独善でないように、十分に処分し得るような法的な根拠なり結論が出なければできませんから、そのようなことをいま検討しているわけでございます。なお、詳しいことにつきましては前の民鉄部長にお答えさせたいと思います。
○佐藤説明員 伊豆箱根の申請につきましては、御説明があったと思いますが、現在地元の陸運局で調査をして、調査書を申達するという段階になっておるわけでございます。その前に、実は線路用地の路盤工事というようなものが行なわれておるという現地からの報告がありましたので、名古屋の陸運局長は、これは地方鉄道法に違反の実態を生ずる危険があるから即刻中止すべきであるという警告を発しまして、その状態は中止をされ、会社から工事をやめましたという報告を受けておるわけでございます。したがいまして、現在の免許申請の取り扱いといたしましては、地方鉄道法に、ある欠格要件によって直ちに却下をするというような特別の規定がございませんので、申請書を本省に上げて、実態的審査をしてから後に、運審等の所要の手続を経て、免許の許否を決定するというのが現在の手続上は必要なことであろうかと考えて、私の在任中はそういう考え方で事務の取り運びをしておった次第でございます。
○久保委員 そういうめんどうな手続をやっていては、能率的な仕事ではないと思うのです。もっとやることはたくさんあると思うのですよ。そんな児戯に類したことにえらい人が手数をかけて、時間をかけてやる暇があるなら、もっと庶民に直結した幾多の仕事があると私は思うのです。こんな愚弄した仕事にきまじめに取っ組んでいくこと自体に私は問題があると思うのです。そんなものはやめたらいいです。そんなものは審議もへちまもありませんよ。なぜならば、東海道新幹線は、ちゃんと路線をきめて、国鉄からあなたのほうは申請を受けて認可しているんじゃないですか。そこへもってきて、こういう路盤工事をしてどうなるかということは、これは大体三歳の子供でもわかるはずです。こんなことで判を幾つも押したり、運輸審議会にかけたりして何になるのです。まず第一に処分しなさい。地方鉄道法三十八条によって百円以上二千円以下の罰金、大したことはございませんけれども、やはり法は正しく運用すべきだ。こんな子供のやるようなことにかかずらわっている手は、実際言ってないですよ。しかもこれは国鉄に聞くが、こういうものをやられながら、今日までべんべんとしているとは何だ。運輸省に注進したのか聞きたい。やり始まったら必ずやる、その交渉の過程でもはっきりわかるわけです。それをここまで路盤工事が進むまで黙っていたのかどうか聞きたい。いかがです。
○中畑説明員 折衝が難航をきわめるようになりましてから、運輸省にも御連絡申し上げまして御相談いたしました。
○久保委員 それはいつのことですか。
○中畑説明員 昨年の秋ごろだったと思います。
○久保委員 昨年の秋にはこの路盤はもう完成していた。そのときに初めて文書によって陸運局長が警告を発しているが、工事はどんどん進んできた。そうして昨年の秋には完成していた、そうでしょう、いかがですか。
○中畑説明員 会社のほうで御自分の用地にどんどん工事をやり始めておりましたことは、現地の幹線工事局の担当の者は知っておりましたけれども、私どもからああだこうだと言う筋合いのものでもございませんので、会社との折衝を続けるということのほかなかったような次第でございます。
○久保委員 そこに国鉄の卑屈さがある。会社の交渉はもっと前から始まっている。それで先ほどのお話のとおりになっているわけです。そこで路盤工事が始まっていることは事実です。いかがかと思うのではなくて、自分の身に振りかかる火の粉でありますから、しかるべき筋のところに注進に及ぶのが当然じゃないですか。それを黙って見ていて、路盤が完成してから初めて運輸省に行って、運輸省から警告を発してもらって何の足しになりますか。全体的な日本の経済から見ても、新幹線がだめになるか、伊豆箱根の路盤工事がだめになるかどっちかですよ。こういうむだな投資が、国家的見地から許されるかどうか。それを黙って見ていたところに私は国鉄の卑屈さがあると思う。運輸省もそのとおり、ただ単に法規によって、法規も正しく運用はしない、まあ見ていようか、そのうち何とかかっこうがついたら、警告でも発しようかと思っているのではないかと思う。どうなんです。すぐ処分しなさい。まず処分が先行だ。地方鉄道法三十八条によって処分する。その次に免許はもう審査の必要なし、却下。これが免許できますか。新幹線を中断するか、免許するか免許をやめるかどっちかですよ。こんなものを何も審査の必要はない。いまの路盤の形で下土狩線ができて、新幹線ができると思っておりますか。できないじゃないですか。そんなことで陸運局長がじんぜん日を送って、最近本省に上げてきた。断じてこれは許されない。やめさせなさい。政務次官、いかがでしょう。
○大石(武)政府委員 久保委員の御趣旨を十分に尊重いたしまして善処いたします。
○久保委員 ことばを返すようで失礼ですが、実際これは尊重するじゃなくて、尊重もへちまもないですよ。ここではっきり言明してほしい。国家的な経済からいってもこれはやめさせるべきだ。法を正しく運営するためにまず第一に処分する、これはだれに聞かれたってあたりまえですよ。
○大石(武)政府委員 久保委員のお話よくわかります。個人的に私どもは政治家としてはいろいろな意見も考えもございます。非常に同感するものはたくさんございます。しかしやはり行政というものは法律に従って、法律に準拠して行なわなければなりませんから、その手続を経てからしかるべき処置を講じたいと思います。
○久保委員 手続を経ることはけっこうです。尊重してじゃなくて、それは処分をし処罰することを前提にして、いわゆるあなたの手続を踏むことでありましょう。だから御答弁いただきたいのは、そのとおりだと思います、やります、しかし、それには手続が要りますから手続を踏みます、こういう御答弁をいただけばけっこうですよ。
○大石(武)政府委員 どうもこれはことばの上の使い方の違いだけだと思いますが、十分に御趣旨を尊重いたしまして、われわれの法的にできる範囲内の処置をいたしたいと思っております。
○久保委員 とにかくこういうことを各所にやられていたのでは、新幹線などは所期の目的どおりにはできないのはあたりまえですよ。
 そこで総裁に一言申し上げたいのでありますが、世の中には数多い人間がおります。(「そんなのは少ないよ」と呼ぶ者あり)いま關谷委員からちょっと不規則発言がありましたが、なるほど数少ないものでありましょうが、そういうものがえてしてこういうことになるのであります。もう少し国鉄は、もっと自主性と積極性を持って勇敢にやるべきだと思うのですが、いかがでございましょうか。
○石田説明員 御趣旨の点は私も同感であります。法において許される範囲内においてできるだけのことはいたしたいと思います。
○久保委員 いずれにしても、これは政務次官、あなたにこの問題でいろいろ問い詰めてもどうかと思うのでありますが、私ははっきり申し上げます。まず第一段階として三十八条の処分をすること、第二段階は手続を経たならば却下の方針で手続を踏むこと、これが至当と思いますので、くどいようでありますが、念のために申し上げておきます。これはいずれ近いうちに処分が決定されると思いますから、当委員会に御報告をいただきたい、かように思います。もちろん会期中にでございます。こういうのはあまり日にちはかからぬでよくわかることでありますから、どうぞそういう点でお願いいたします。
 そこで最近のこの地点の伊豆箱根との交渉はどうなっておるか、これは国鉄からお聞きします。
○中畑説明員 最近話が振り出しに返りまして、比較的順調に話し合いが進んでおります。まだ妥結の運びには至っておりませんが、何とかまとめることができるのではないか、そういう見込みに立っております。
○久保委員 もっと詳しく述べてください。
○中畑説明員 ただいまお答えいたしましたように、最近なりまして会社との話し合いが振り出しに戻ったと申しますか、国鉄が当初計画いたしておりました工事の計画で了承してよろしいといったような考え方に会社がなってまいりましたので、その線でもってただいま折衝を続けておるという状態でございます。
○久保委員 この問題については、向こうから折衝の値段は、どのくらいの値段でお譲りしますとか、出ましたか。
○中畑説明員 私のほうから交差になります廃線敷の用地を使用いたしますことになりますので、その用地の地積に対応する値段といたしまして六百万円程度の値段で用地の買い取りをいたして工事をいたしたいという申し出をいたしてございます
○久保委員 それは国鉄から六百万という話ですか。
○中畑説明員 そのとおりでございます。
○久保委員 それは何平米ですか。
○中畑説明員 ただいま地積の数字をはっきり記憶しておらないのでありますが、その辺の類地の地価と大体同じ値段にいたしまして計算いたしましたものが六百万円程度の金になるのではないかと思います。
○久保委員 そのときの条件は、いま構築された路盤についてはどうなっておりますか。
○中畑説明員 先生のお話の路盤は会社がかってにやったものでございますから、私のほうには何らの関係がないものと承知いたしております。
○久保委員 いや、何らの関係がないじゃないでしょう。金をかけた構築物が前にあるのですよ。これに対しての賠償なり取りこわしの費用とか、そういうものはどうなんです。
○中畑説明員 会社からそのほうの補償についての要求が出ておるように聞いておりません。
○久保委員 当該地点はいわゆる築堤によっておやりになるのか、それとも高架ですか、どちらですか。
○中畑説明員 高架でございます。
○久保委員 高架というとどの程度の高さですか。
○中畑説明員 その通過いたします地点に下のほうに道路がございますので、たしか九メートルくらいのかなり高い高架になるものと存じております。
○久保委員 当該地点に道路はあるけれども、私がさしておる当該の伊豆箱根の路盤のところは道路はありません。その地点はどうなるか、聞いておるのですよ。
○中畑説明員 その地点は、先ほども申し上げましたように、会社が工事をいたしましたそれとは関係なく、当初国鉄が計画いたしました工事計画で工事を進めるということで会社に申し出をしてございます。会社のほうもその国鉄の原案で考えてみようという話し合いで、ただいま折衝を進めておる状態でございます。
○久保委員 そうしますと、その路盤についても、将来折衝の過程では、補償なり何なりを要求される見込みはありますか。
○中畑説明員 会社からは格別の要求が工費担当の幹線工事局にただいまのところ出ておりませんので、おそらく話は出ないのではないかというふうに判断しております。
○久保委員 それはたいへんすなおな話です。すなおな話の裏には来宮の鉄道用地の問題がからんでおるそうですが、そうですか。
○中畑説明員 来宮の用地問題は、その件とは全然別個の問題としまして、会社のほうで使いたいという申し出はあります。
○久保委員 この来宮のほうはそれじゃ会社の申し出どおり認める方針でございますか。
○中畑説明員 ただいまのところ検討いたしておりまして、まだ結論を得ておりません。
○久保委員 大石政務次官にお尋ねするわけでありますが、この下土狩線と来宮の鉄道用地の問題を相関関係をつけまして、それで下土狩のほうは国鉄の大体要求どおりに折り合おう、しかし来宮のほうは用地は払い下げる、こういう運輸大臣のメモがあるそうでありますが、そのとおりですか。
○大石(武)政府委員 そういう話は聞いておりません。
○久保委員 メモは別として、そういう話を聞いたことはございませんか。
○大石(武)政府委員 そういううわさは聞いたことがございますが、われわれはそういうことは別に考えておりません。
○久保委員 これは中畑さんでは答弁ができないかもしれませんが、来宮の土地は、あなたの御答弁では、いま検討中というか、これはそういうことで伊豆箱根のほうへひとつ払い下げよう、こういう話し合いになっているそうです。そのとおりだと思うのですが、いかがですか。
○中畑説明員 具体的な先生のただいまお尋ねのございました点についての内容は、私、承知いたしておりません。
○久保委員 あなたのところでなければ、それじゃどこですか。そういう問題を扱うのはあなたではないですね、これはもっと上のほうですか。
○中畑説明員 事務上の手続といたしましては、来宮の土地と申しますのは、静岡の幹線工事局と東京鉄道管理局の両局で分けて管理いたしておりますので、もう一度使いたいという話でございますれば、両管理局に手続があるものと考えております。
○久保委員 この土地について、われわれは、現地を調査した際に、ある鉄道関係者からそういう話を伺っているわけです。これは大体そうだろうと思うのです。何か代償がなければすなおにおりるはずはない、この案件に関係している人の人柄を見れば、こういうふうに思うのが大体世間の通り相場になっているのです。そうですよ。しかもこれは、名前を出しては悪いのでありますが、前の常務理事から非公式に、これは払い下げあるいは貸し渡しの考えでおりますというお話を私は聞いた。非公式な話を公式に出しては悪いのですが、いかがですか。
○中畑説明員 ただいまお話の、前常務理事から格別私は話を聞いておりませんので、どんな話がございましたものか、一向に不案内でございます。
○久保委員 これは大石政務次官、あなたにお尋ねするのもちょっとどうかと思うのでありますが、まあ運輸委員会でありますから、やはり根掘り葉掘り聞かぬと、あとで禍根を残すもとだと思うのであります。やはりどうも取引があったように聞いておるのでありますが、運輸省も一枚加わったのじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょう。
○大石(武)政府委員 これは、私の知っている範囲では、そのようなことはございません。
○久保委員 前の民鉄部長は御退席になったが、国鉄の部長がおられるから、どうですか、あなたは聞いておられますか。
○向井政府委員 存じておりません。
○久保委員 もっとも存じておると言ったらぐあいが悪いでしょうから、しかし実態は、それじゃ国鉄の方針として前どおり再び貸すのか、あるいは譲り渡しをするのか、大体おおよその見当はどうなんです。いかなる点で調査をしておりますか、いかなる点で審議をしているのか、どういう観点から審議しているのかお聞きします。
○中畑説明員 将来伊東線の線路工事などの場合に、その用地がどういうことになるかといったようなことも検討をいたしまして、結論をつけたいと存じております。現在のところは、国鉄としましては、いま申し上げました伊東線の工事関係でどうなるかということの問題を除きましていたしますと、大体不用地であると考えてよろしいと思います。
○久保委員 ちょっと聞き漏らしたのですが、結論的には伊東線の問題があるからそれを中心に検討している、こういうふうにとってよろしいかどうか。そうですな。伊東線の将来についてはどういうことになるのですか。つけかえなり線増なりということは考えられないですね。考えているのですか。
○中畑説明員 直接私の担当でございませんのでお答えいたしかねますが、関東支社で具体的に検討しておると聞いております。
○久保委員 たとえば、伊東線の関係がなければ、これを払い下げるということになりますか。
○中畑説明員 その点はこの間も申し上げましたように、大体不用地ということになっておりますので、よく検討をいたしまして結論を求めるようにしたい、かように考えております。
○久保委員 よくわかりませんな。
 そこでこれは鉄監にお尋ねするのでありますが、来宮-十国峠の、途中の銀山というところまでは、これは鉄道でありますが、その先は索道という話でありますが、これは免許の申請は認可した。工事施行の認可にあたって、何項目か膨大な項目にわたって照会したのだが、いまだに返事がない、こういうことでありますが、こういう鉄道の認可にあたって、長年懸案になっているものがこんなにたくさんあるのですか。この認可は二十一年の九月に申請して、二十五年の二月に免許をしているということになっています。そこで途中いろいろな変更がありまして、三十年の三月に最終的な認可をした、こういうふうに書いてあります。それから三十三年の三月に工事施行認可申請のこれは追加申請が出ております。ところが三十五年の六月に民鉄部長から、二十五項目の照会をしたがいまだに返事がない、こういうふうになっているわけです。これは前の民鉄部長御退席でありますからなんでありますが、これは鉄監局長に、就任早々でたいへんなにでありますが、こういうことがはたして鉄道建設の意欲があるのかどうか、実際言って私は疑わしいのでありますが、当初の計画からいくと、とてもこれじゃ登山鉄道というか、そういうものの基準に合わぬということで突っ返しているのですね。そこで再三持ってきたんだが、最後には二十五項目にわたって質問しているわけですね。ところがいまだに返事がない。これはおそらく何か別な目的があるのではなかろうかと私は思うのであります。しかも今日こういうところから鉄道でやることが必要かどうか。りっぱな道路もできたし、十国峠の観光道路というか、そういうものもできているわけですね。しかも申請してから長年になっているのですね。こういうことを、しかも鉄道用地を借用したのは、その認可申請を出してから、古い昔これは出しているのですね。これははっきり言うと、国鉄もばかだから、これにまんまと貸しているわけですね。それで今度の新線工事になってから返せという。返せと言ったら、立ち入り禁止の仮処分をやってきた。話がついたかどうか知らぬが、二回目の日の前日に取り下げておる。取り下げた裏にはおそらく何かの密約がある。御案内のとおりこの付近は景勝の地であります。熱海の貴重な土地であります。実際鉄道などでやるべき筋合いのものではありません。はっきり言うとホテル街ですよ。こういうものを運輸省も国鉄も知らぬはずはないと思うのです。国鉄もずいぶんばかなことをしたと思うのであります。人に貸すときには十分用心して貸すべきだと思うのです。また財産を有効に使えということで幾たびか国会並びに行政管理庁その他からも注意が出ているわけなんです。しかもこれは使いもしない土地を借りていたのです。いままで一つも使っていない。それを今度返せと言ったら仮処分にしておる。何の意図があるのか。どう思いますか。
○広瀬説明員 免許あるいは工事施行認可申請の経緯は、ただいま先生のおっしゃったとおりでございまして、三十七年の五月に民鉄部長から二十数項目につきまして照会をいたしました。これに対しまして三十七年の九月に回答がございました。なお、いろいろ技術的な問題あるいはただいまおっしゃいましたような客観的な情勢の変化ということもございますので、この点についてただいま検討いたしておるわけでございます。
 なお、先ほどいろいろ許認可関係の事務が遅滞しておるんではないかというお話がございましたが、一般論でございますが、かなり時間のかかっておるものがございますが、鉄監におきましては、事務を促進しまして、従来に比べますとかなりスピードアップしておりますが、こういった問題点は、ぐずぐずしておりますと、いろいろ疑惑という点も生まれてまいりますので、今後さらに一そう事務を促進して、てきぱきと処理をしてまいりたいというふうに考えております。
 それからもう一点。先ほど政務次官にもお尋ねがございましたが、何か運輸省が一枚加わっておるのではないかというお話でございますが、これは前局長からもそういった点は何も聞いておりませんし、また運輸省の重要な問題につきましては、私官房長として大体のことは承知しておると思いますが、そういった話は現在まで何も出ておりません。
○久保委員 そこで免許をする場合に、工事施行の期限というのが条件としてあるはずだと思うのですが、それはいかがですか。
○広瀬説明員 もちろん一定の期限というものは付しておりますが、従来の例によりますと、いろいろな事情から期限の延伸を願い出ておりまして、やむを得ないというものはこれを認めております。そういう手続をとっておるものだと考えております。
○久保委員 本件はいつまでの期日をつけておるのでしょう。
○広瀬説明員 話は先ほどに戻りますが、工事施工の認可申請に対しまして、認可は出したわけであります。認可を出すにあたりまして、先ほど申しました二十数項目のいろいろ解明しなければいけない項目がございますので、これを照会をして、これについて先ほど申し上げましたように回答があったわけでありまして、工事施行認可の期限という問題は、したがって本件に関しましては一応ないということが言えると思います。
○久保委員 工事施行の期限はない、こういうのでありますが、たとえば免許申請をした場合に、大体何年何月から始まって工事の完成は何年何月までに終わる予定である、こういうものはとらないのですか。
○広瀬説明員 先ほどの私の答弁が少し間違っておりましたが、二十数項目につきまして、まだ完全に回答はきておりません。したがって回答がきてから、いつ着工していつまでに工事を完成しろということを言うわけであります。まだその段階に至っていない、向こうからの回答がまいっておらないというわけであります。
○久保委員 そうしますと、たとえば甲という鉄道事業者がある地点について工事の認可を受けた、しかし、これは実際においてやる能力も何もない、あるいはそういう考えもなくなってきたという場合に、新しい企業家が出てきてこの地点でこれならばできるということがあっても、もう重複いたしますから、免許の認可はしませんね。そうなりますと、単に権利をとるだけでそういう免許申請を出す場合が往々にしてあると思います。たとえば武州鉄道のごときは、これはあとの問題でありますが、これもどうもその後の事情を勘案すれば、土地の値上がりとかそういうものでさや取りをしようというもくろみが多かった。免許だけは受けよう、しかし工事の、いわゆる鉄道を建設するという本命については消極的である、こうなった場合に、この免許申請にあたって考えたところの目的というものは永久に達せられない、こういう矛盾があるわけであります。本件についても、私はどういう項目について照会をしたかわかりませんけれども、できないような目論見書を出し、あるいは工事施行の中身を出して、運輸省からおそらく指摘してくるだろう、これに対しては回答しないでそのままにしておけば、いつまでもこの免許は生きておる、こういうことになるのじゃなかろうか、眼光紙背に徹するような審理が私は必要だと思いますが、いかがですか。
○広瀬説明員 まず一般論を申し上げますが、いわゆる俗にいうつばをつける式の免許申請というものが従来もないわけではございません。私が前に民営鉄道部長をやっておりましたときも、そういった種類のもの、あるいはずっと前に免許をとりまして、まあ当時はやる意思があったのでございますが、いろいろ道路事情その他客観情勢が変わりまして、あまり価値のない、またしたがって免許申請者がこれを真にやるという意思が非常に薄いというようなものもかなりございまして、そういったものは免許を取り下げさせるというようなことでかなり大幅に整理した経験もございますので、本件を含めまして、そういった観点から真にやる意思のあるのかどうか、あるいは客観情勢の変化によって価値があるかどうかというようなことを至急検討いたしまして、極力整理といいますか、事務を促進して、実情に沿うようなかっこうにいたしてまいりたいというふうに考えております。
○久保委員 これは二十五項目ですかの回答を迫ったのでありますが、これは期限を付してありますか。
○広瀬説明員 本件に関しては期限を付しておりません。
○久保委員 これはどうして付さないのでしょうか。これは付さないのが普通だと思いますか。どうして付さないのか、なぜ付さないのか。
○広瀬説明員 一般的に照会をいたした場合には、大体すみやかに回答をもらう、従来もらっておりますので、特に期限を付していないということだと思います。
○久保委員 それじゃこれは条件つき工事施行認可を出したということでございますか。いかがです。条件つきで、二十五項目についての回答あり次第これは認可をした、工専施行認可をした、こういうことになりますか。このことはいかがですか。工事施行の認可はしないのか、したのか、どっちなんです。
○広瀬説明員 先ほどちょっと私が途中で言い直しましたので誤解があると思いますが、工事施行認可は出しておらないのでございます。二十数項目について照会を出して、その上で出そうということで、照会中でございます。
○久保委員 免許にあたっては工事施行の認可は期限を切りますね。そうでしょう。いかがですか。
○広瀬説明員 工事施行認可を出す場合には、免許の場合は期限をつけます。
○久保委員 それじゃその免許をしたときには工事施行の期限は、免許申請の期限はいつまでになっていましたか。
○広瀬説明員 いまちょっとこまかい資料を持っておりませんので、後刻いまの手続関係を全部調べまして御報告をいたします。
○久保委員 いずれにしてもそれは後刻資料をいただきますが、こういう長期にわたって質問を出して回答がないというのは、これは誠意がないということであります。これは地方鉄道法を改正して、そういうものはみんな免許失効という条項に当てはめるべきだと私は思うのです。政務次官、いかがでしょう。
○大石(武)政府委員 あまり法律的な具体的なことはわかりませんが、常識的にはお説のとおりだと思います。
○久保委員 そこで国鉄にまたお尋ねするわけでありますが、国鉄は先ほど言ったように、この当該地を貸すか貸さぬか、いま検討中だというが、私ははっきり申し上げておくが、この鉄道は大体建設する見込みはなさそうです。鉄道建設ならある程度協力してもいいと思うのでありますが、大体地点からいって違う目的に使用する、万が一施行認可もできて工事がやれるという段階になればあらためて考えていいのであって、いま貸すか貸さぬかなんということを考える必要は私はないと思うのだが、いかがでしょう。
○磯崎説明員(日本国有鉄道総裁) 私からお答え申し上げます。
 先ほど先生のお話のように、この土地につきましては多少のいきさつがあったことは事実のようでございます。しかし現在の、今日ただいまの段階で申し上げますと、私のほうから昭和三十三年十二月に使用承認を取り消すという通知、これは三十四年二月一日から使用承認を取り消すという通知を出しまして、それに対して会社のほうから延長願いが出ております。その延長願いに対してさらに三十四年三月に否認の通知を出しております。したがいまして、いまの時点におきましては、あの土地につきましては、全く会社の使用権なり一切の法律的な権限がないというふうに見ていいと思います。現在手元にあります資料によりますとそういうふうになっております。したがいまして、現在全くあの土地につきましては白紙であると申せると思います。今後工事が進みまして、あの土地が、一応新丹那トンネルのズリ捨て場として使った相当な場所、――約一万平米近い相当広い土地でございます。ズリを捨てましたので、いままでのくぼ地が相当平地になっているようで、土地の価値も相当変わっているのじゃないかというふうに考えます。一方、先ほどの御質問にありましたように、新幹線ができますと伊東線の問題はどうしても新しい問題として私ども考え直さなければなりません。現在の単線ことに熱海と来宮の間を現在線と併用して運転していくということは、将来の伊豆地方の開発にとりまして非常に輸送上大きな問題になりますので、この伊東線の複線化と申しますか、伊東線の改良は相当新幹線完成後の大きな問題として考えなければいけないというふうに考えられます。そういった諸般の事情を考えますと、たまたま法律的に現在用地が白紙であるということと、それから将来国鉄自体としてその土地を一部でもあるいは半分でも全部でも使う可能性が皆無ではないという問題等をいろいろ考えますと、一応いままでの多少のいきさつがあったにいたしましても、この際純粋な法律的な立場からこの問題を白紙に返しまして、新しい目でもって再検討する必要があるのじゃないかというふうに考えます。
 ただ、非常にこれは法律的にむずかしい問題でございまして、いまの運輸省のお話の免許があるかないかという問題、それから、これはちょっと私がいま考えた問題だけでございますが、会社側が免許を受ける期待権というようなものがはたしてあるのかどうか、すなわち国鉄の土地を借りた上で鉄道を敷設するという認可申請になっておるわけでありますが、その借りるつもりの土地が借りられなかったということは、はたして会社側が持っている免許を受ける期待権を侵害するかどうか、私どもといたしますと、十分そういう点を検討いたしませんと、いますぐにここでどうこう申し上げられませんが、ただいま手元にございます資料から申しますと、あの土地は現在法律的に全く白紙の問題である、全く国鉄が一〇〇%所有権、使用権を持っておる土地であります。それから、先ほど申しましたように、将来の伊豆の開発と関連して、どうしても伊東線の問題をこの際考え直す必要があると思うのであります。それから土地の価値が、先生も御指摘のとおり、非常に変わってきておると思うのであります。こういった問題等をすべて勘案いたしました上で、運輸省御当局の新しい鉄道敷設に対する御方針等も承りまして、十分法律的に間違いのないような処置を講じたい、講ずべきであるというふうに考えております。
○久保委員 そこで運輸省にもう一ぺんお尋ねするのですが、当該鉄道の建設について、工事施行認可にあたって二十五項目の回答を求めているわけなんですね。その回答の中には、国鉄の所有地が使用できるかどうか、そういう問題についての回答を迫っておりますか。
○広瀬説明員 ただいま手元に資料を持っておりませんので、二十数項目の内容を明らかにしておりませんが、工事施行認可に関連して質問を出しておるわけでございますから、当然経過地あるいはどの土地を具体的に使うかというようなことも聞いておるかと存じますが、これはなお調べまして後ほど御報告いたします。
○久保委員 それは鉄監局長がおっしゃるように、どういう土地を通るかというような、そんなことじゃないと思うのです。工事施行認可にあたっての質問は、いわゆる技術的な問題、特にそういう問題が多いのではないかと思うのです。私が聞きたいのは、国鉄の土地が使用できる見込みがあるのかないのかという質問をその中に出しているかどうかです。これは国鉄部長、わかりませんか。
○向井政府委員 二十五項目の質問書の内容を承知しておりませんので…。
○久保委員 いや全部でなくて、ぼくが質問する点……。
○向井政府委員 まだ質問書そのものを私は検討しておりませんで、調べればすぐわかりますから、御報告いたしたいと思います。
○久保委員 ちょっと質問中に電話で聞いてください。――そこで副総裁から、全く国鉄のものであって他人の容喙を一切許さぬ土地であるということだが、そのとおりだと私は思います。そこで中畑局長は先ほど、払い下げるかどうかについても伊東線の問題とからんで検討中だというのですが、その検討の必要はないと私は言うのです。ところが副総裁の答弁とあなたの答弁は若干違います。いまさら何も、鉄道建設に対して国鉄の所有地について従来どおりこの会社に貸すか払い下げるかなんというそういうものを頭に置いて、伊東線のつけかえなり線増というか、そういうものを検討していくというのは、それは全く誤りであります。私はおかしいと思う。いかがでしょう、必要ないじゃないですか。
○磯崎説明員 先ほど中畑総務局長から御答弁いたしましたのは、中畑総務局長はいままでずっとこの問題に関係いたしておりましたので、いろいろ過去のいきさつが頭にあったために、そういう御答弁を申し上げたと思うのですが、その点私がただいま御答弁いたしましたとおりというふうに御了承願いたいと思います。
○久保委員 そういたしますと、当該土地については一切もう考えておらぬ、こういうふうに了解してよろしいですね。だめを押しますが……。
○磯崎説明員 ただいま手元にございますいろいろな資料を見ますと、法律的に全く白紙の事態に戻つているというふうに私は了解いたしております。裁判上いろいろのいきさつなどもございまして、私の答弁に間違いないと思いますが、もう一ぺん法律的に検討いたしました上で御返事いたしませんと、またいろいろ問題を起こしますので、私のいまの認識では完全に一〇〇%国鉄の所有権の昔に返っているというふうに了承いたしておるのですが、さらに法律的にもう一ぺん検討さしていただきたい、こういうふうに考えております。
○久保委員 政務次官、私が申し上げるとおりだと思うのです。運輸省としてもそうだと思うのですが、いかがでしょう。国鉄は来宮のズリ捨て場をこの会社に貸すかどうかという観点から検討する必要は今日の段階では何もない、毛頭ない、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
○大石(武)政府委員 全くそのとおりでございます。

(略)

○久保委員 この問題だけで一応打ち切りますが、とにかく問題だと思うのです。貨物の輸送について処理しなければ、やはり東海道線の本命ではないだろうと思うのです。
 それから次にお尋ねしたいのは、近江鉄道の問題は先般肥田委員から御質問をいたしたようでありますが、結論的に言うと、二億五千万の補償というか何というかわかりませんが、その金は一応返してもらうというのが私はたてまえだと思うのです。はっきりしたもの以外は返してもらう。たとえば用地を使ったとか実際に踏切警報機をつけなければいかぬとかいうもの以外はですね。特にその中でも景色補償というか減収補償というかわかりませんが、そういうものは一たん国鉄の手元に返してもらうのが筋だと思うのです。これはいかがでしょう。政務次官、前回御答弁になられたからひとつあわせてお願いいたします。
○大石(武)政府委員 この問題につきましては井手委員からも御質問がございまして、いろいろわれわれも検討いたしております。そして不当な補償であるならば、当然これを返還せしめるのがわれわれの義務であると考えまして、その方向においていまいろいろ検討中でございます。まだはっきり法的な根拠はつかみ得ず、またどのような措置に出るかということは見当がつきませんので、明確なお返事を申し上げられないのが残念でございます。しかしこの補償という問題は、一般的に申しますと、御承知のようになかなかむずかしい問題でありまして、近江鉄道に関しましても、おそらく先日の委員会において国鉄の磯崎副総裁から御答弁申し上げたかと思いますが、補償という問題は、いろいろ法的な問題はございますが、一つは、やはり力ずくと申しては語弊がありますが、一つのやはりかけ引き、取引というものがあるように考えております。その意味において、国鉄は六億あるいは七億と吹っかけられましたそのいわゆる補償の問題を二億五千万まで下げたという努力は私は認めなければならぬと思います。しかしその内容に関しまして、もしこまかい項目について不当な問題があるならば、これは金額とは切り離して別に断固たる処置に出るべきだと思いますので、いまその検討をいたしておりますので、しばらくの御猶予を願いたいと思います。
○久保委員 二億五千万が妥当であるかどうかの中身というか計数的なものではなくて――計数的なものは前からも論議になっているとおり、これは全然積算基礎にはなっておらぬ。そうでしょう。景色補償あるいは減収補償というようなものは全然積算基礎になっておらぬじゃないですか。万が一、いわゆる力関係で、あなたがおっしゃるように、二億五千万、これでひとつ問題は全部解決というつかみ金によるところの交渉なら交渉でけっこうですよ。しかしいままでの当委員会の御説明は、景色補償なり減収補償を一億円入れて二億五千万ということでありますから、筋が通らぬということであります。ですからこういうものは一たんお返しを願って、あらためて、力ずくで、どの程度お払いになるのかわかりませんが、御交渉なさったほうが妥当だと思います。そうでないと、不明朗のままこれが処理されることは断じてわれわれは認めがたいのであります。二億五千万が妥当であるかどうか。妥当であるという証拠を出したんだが妥当でない。証拠というのは、当委員会へ国鉄から出した書類、二億五千万の内訳です。こういうもの自体に私は不信感があります。だから二億五千万をとにかくそういう形でお払いになったんだから、これは不当である、不正な支出である、だから返してもらいなさい、それであらためて近江鉄道との間の補償の問題なり何なり御交渉いただいて結着をつけるべきだと思う。ただということはないでしょう。筋としてはそうじゃないでしょうか。われわれは一文も払わぬでもいいとは言っていません。並行して走っているのだから、踏切の見通しが悪くなる、警報機をつける必要があるならそのとおりです。しかし景色が悪くなるとか十三年間とか二割五分とかいうような数字は、断じてこれは認めがたいし、世間に通用しないということです。いかがでしょう、くどいようでありますが……。
○大石(武)政府委員 私の申し上げますことが少し乱暴な、あるいは個人的な見解になった場合にはお許しを願いたいと思います。これを前提として申し上げますが、二億五千万という補償は、いろいろな理屈をつけてはございますけれども、根本はつかみ金じゃないかと思うのであります。つまり六億何ぼに吹っかけられましたものを何とかして削りたいという考えで二億五千万まで減らした、ただしその中のいろいろの理由、つかみ金でありますから理由をつけなければなりませんが、その理由に景色だとか補償とかいろいろな問題が出てきてこういうことになったんじゃなかろうかと思います。
 私も個人的に考えますれば、なるほどあなたのおっしゃるとおり一ぺん返してもらって、別にそれに妥当な金を、理由のある金を払うことが一番やりやすいと思うのでありますが、それも法的にでき得るかどうか。会計検査院にも報告済みになっておりますから、それができるかどうかということを検討しないと、ただわれわれだけの気持ちあるいはやりやすい方法だけではなかなかできにくいのが現状だと思います。そういう意味でいまいろいろ法的な根拠を検討いたしておるのであります。お説のとおり何とか筋の通ったものにいたしたい、こう念願しておりますので、もう少し時間をかしていただいて検討させていただきたいと思います。
○久保委員 政務次官のおっしゃるとおり会計検査院にも報告したというんなら、これは決算になったわけですか。――それでは聞きますが、何年に幾ら払って何年に幾ら払っておりますか。
○磯崎説明員 二億五千万円のうち一億五千万円は昭和三十六年の十二月でございます。それから、残りの一億は三十七年の六月でございます。その二回に分けて払っております。
○久保委員 三十六年の十二月に払ったのはどういう形でお払いになったのですか。これはなぜちびって払ったのですか。
○磯崎説明員 三十六年の十二月に払いましたのは一億五千万円でございますが、実はただいま政務次官から御説明のございましたとおり、当初の七億の要求あるいはその後の併設高架の要求等に対しましていろいろ折衝しておったようでございます。そうしていろいろの交渉の過程におきまして、とにかく全額二億五千万円程度でもって妥結しようというような話になった。ただそれにつきまして私のほうの現地の当局といたしましては、少しでもそれを安くしたいという努力をいたしましたが一方工期が迫っておりますし、何とか早く工事に着手したいということで、とりあえずそれでは一億五千万円だけ払う、一億五千万円払えば工事に着手してよろしい、こういう協定を三十六年の十二月に結んでおります。そして、それは当時の当事者から聞きますと、残りの一億は何とかもう少しまけさしたいという気持ちもあって、とりあえず会社が工事に手をつけなさいと言ってくれる最小限――会社から申しますれば最小限、こちらから申しますれば最大限の金を一応出して、それからあと半年ばかりの間に残りの金についていろいろ折衝したい、こういうつもりで一億五千万円を先に出しまして、それでもってとりあえず工事を始めたということになっております。
 この一億五千万円の金の出し方は、前回の委員会で肥田先生の御要求がありまして御説明申し上げ、資料も出しておりますが、三十六年の十二月に払いました金は用地費と用地附帯費という名目になっております。こまかく申しますと、一億四千九百五十万円が用地付帯費で、五十万円が用地費、こういう内訳になって私どもの支払いができております。その後種々折衝いたしまして残りの一億は――とうとう一億をそれ以上に切り下げることができず、約半年たちまして三十七年の七月に残りの一億を、これは用地附帯費ということで支払っております
。前回の委員会で矢尾先生の御質問に対しまして私からお答えいたしましたとおり、いままでのいきさつを私も書類あるいは関係者等に当たっていろいろ調べてみますと、やはりいま政務次官のおっしゃったとおり、二億五千万円という一種の全般的な金のワクとして話がきまったというふうないままでの経過になっております。当委員会で数回にわたって国鉄側の説明がまちまちであったという点につきましては、前回深くおわびいたしたわけでありますが、きょうまたこの席を拝借いたしまして、もう一ぺんいままでの説明が非常に不備であったという点につきましては、深く陳謝の意を表する次第であります。
○久保委員 そうしますと、副総裁、前回資料として出した積算基礎は誤りであった。そうでなくて政務次官が言うとおりいわゆるつかみ金であった。これで妥結をしたのであって、具体的にどのやつに幾ら払ったのではなくて、言うならばその中の五十万くらいがはっきりしたものであって、あとは付帯費というようないわゆる補償費だ、こういうことになるわけですね。そうだとすれば、会計検査院には国会に先般出した資料に基づいて説明をされているわけですね。これも同様ですね。
○磯崎説明員 その点については、実は私のほうの部内の処理の問題でございますが、いわゆるつかみ金という金を出す方法がございませんし、また慣例上たとえ一万円の金にいたしましても一応積算の基礎をつくって出すといういままでのやり方になっております。いままで国会に御説明いたしました景色補償の金その他につきましては、金を出すための一つの積算の基礎というよりも、支払いのための一つの調書であるというふうに了解いたしております。ただ、先生の御指摘のとおり、二億五千万円の金額自体の妥当なり妥当でないかという問題は、やはり問題として残ると思います。しかしこれは折衝の過程で一応不満足ながら両方で妥結をした金でありますので、部内の経理処理としてそういう方法をとりまして、その点につきましても非常に説明が不十分であったという点につきましてはまことに申しわけないと考えております
○久保委員 いずれにしても経理の処理としてそういうことをしなければならぬというところに問題があったかと思うのでありますが、会計検査院と国会にあの資料を提示して処理をどうなさるのですか。私が言うとおりに一ぺんお返し願うほかないのではないか。いかがですか。だから私は、当初あの資料ができたときに、つかみ金でしょう、泣く子と地頭には勝てないで、四億の補償が要求されたが、二億五千万円に値切ったのでありましょうとお尋ねしたのでありますが、そうではありませんと言われた。この処理はどうなさるのですか。
○山田説明員 会計検査院の検査対象になった当座でございますし、どういう見解を会計検査院が持っておられるかは私どもうかがい得られません。いずれ三十七年度の検査として対象になっていると思いますので、いま私ども検査院のほうとこの点についての直接の連絡はまだとっておらない状態でございます。
○久保委員 会計検査院の意向はわかりませんが、私も決算委員をしておりますから、いずれそういう報告が出ますれば審議しなければいかぬと思うのです。おそらく決算の面ではそういう決算のあり方はないと思います。やはりこれは私が言うとおりにならざるを得ないと思います。これはこういう一つの例でありまして、こういうものがたくさんあるのじゃないか。たとえばわれわれがどっかで見つけてきて、この資料を出せということになるとこういうものが出るのではないですか、いかがですか、ざっくばらんにお尋ねいたします。
○山田説明員 こういう事例と申します、金額の多寡は別といたしまして、いわゆるこれで話をつけたいというような性質のものは、最近用地買収に伴いまして従来よりも例が多くなっているかと思います。しかしながら、いずれもそれは単なるほんとうのつかみだけということではございませんで、近江鉄道の例が最も例外的なものだと私ども考えておりますが、一応先方の申し出の条件の中からこちらでいかにももっともだと思われるものを選んで、その支出の根拠にはいたしております。したがいまして、全然頭からつかみで幾らというような支出の例は、ほかには絶対にないと考えております。
○久保委員 道路公団とかそういうものもやはりこういうものでありますか。お聞きになっていますか。たとえば近江鉄道のような積算基礎で会計検査院なり国会に、要求があれば報告するのでしょうか、いかがでしょう。
○山田説明員 ほかのところは残念ながらよく承知いたしておりません。
○久保委員 そこで資料の要求を一ついたしておきますが、いわゆる補償費に類するものですね。これは用地費、それと用地附帯費というかあるいは工事附帯費というかわかりませんが、用地と工事ですね、この二つに分けてどの程度今日までに出しておるのか、そしてできますればその摘要を簡潔に書いていただきたいというように思います。率直に出していただいたほうがいいと思います。
 そこでもう一つ、新幹線のことでお尋ねしたいのでありますが、箱根付近の高圧線の電柱建設について、これはどういうふうになっておりますか。多額の補償なり何なりを要求されたり、折衝に長時間かかったりといううわさを聞いておるのでありますが、これはどうなんですか。
○中畑説明員 箱根山を通過いたします通過のルートについていろいろな折衝を重ねておるわけでありますが、その折衝をいたしております中に、国土計画興業株式会社が持っております山林の相当大きな部分がございまして、その通過の地点についての交渉が軌道にまだ乗らない状態でおりましたわけでございます。同会社が持っております山林の、国鉄としてなるべく技術的にも工事が楽であり、経費もかからないといったようなところを通りたいということで折衝をいたしましたところ、会社ではその地帯については山林を使用して将来のいろいろな計画があるからそれは困る、こういうことで、主としてルートの点についての話し合いがまとまらないで今日まで折衝を重ねてきておる、そういう状態でございます。
○久保委員 そうしますと、まだ解決はついておらぬのでありますか。
○中畑説明員 最近になりまして会社側のほうも国鉄の申し入れをやむを得ないということで譲歩をしてまいりましたので、話は軌道に乗ってまいりました。そこで工事担当の工事局から会社のほうへ具体的に鉄塔に使用する用地と、それから送電線を架設いたしましたときの、送電線の下の用地に対するいわゆる線下補償というものを計算いたしまして申し入れをして、会社で検討をいただいておる状態であります。
○久保委員 こまかいようでありますが、あとで資料をください。電柱は何本でどの程度用地をとるのか。線下はどの程度の延長で幅か。それであなたのほうでいま計算して要求しているのでしょう。そうでしょう。その額はどの程度か。それからもう一つ、これは何という会社です。もう一ぺんおっしゃってください。
○中畑説明員 会社の名前は国土計画興業株式会社と申します
○久保委員 責任者はどなたです、社長さんは
○中畑説明員 堤さんとおっしゃる方でございます
○久保委員 それで、国鉄に言うのでありますがこの会社自体には国鉄はあまり関係ありませんね。請負工事とか出入りとか、そういうものはありませんね。
○中畑説明員 少しも関係はありません。
○久保委員 しかしこの社長さんの関係する会社には関係ありますね。
○中畑説明員 この土地会社の社長をしておる方のおとうさんの堤さんの事業には非常に関係がございます。
○久保委員 それでこの会社とは国鉄は因縁浅からない仲だ、そう理解してよろしゅうございますか。
○山田説明員 御指摘の点は連絡運輸をやっているかどうかという点かと思いますが、その意味におきましては関係はございます。
○久保委員 自分の土地を売るか使わせるかということは、これはその人の固有の権利でありますから、これはどうしようもないと思いますね。しかし国鉄にも、連帯運輸しているならば固有の権利があるわけです。そこで私が言いたいのは、連帯運輸についてももう少し商業ベースでやったらどうか、こう思うのです。伊豆箱根鉄道にしても、修善寺まで東京から国鉄の車両を直通運輸しているじゃありませんか。あるいは先般肥田委員がお話ししたようで、この資料が出ておりますが、連帯運輸の清算金にしても、かように長い間とめておいて金利をとっておるという実態なんです。だから連帯運輸はとめたらどうですか、お客は別途の方法が幾らでもありますよ。連帯運輸するからお客に便利だとは今日言い得ないのです。なぜやりませんか。この工事をするにしても、先般来いろいろ御指摘があったようでありますが、幹線総局だけがやっておいて、あとの常務理事その他各部局は全部つんぼさじき、ちっともチームワークがとれていないのがこれなんです。これは今後、総裁改めますか、こういうものに対してもっと商業ベースでシビアーにやりますか。いかがです。
○石田説明員 詳しいことは私は存じませんので、よく調べて善処いたしたいと思います。
○山田説明員 僣越ですが、ちょっと補足させていただきます。連絡運輸をいたします場合の料金その他は、一定の基準がございまして、甲の会社に特に安くするとか、乙の会社に特に高くするというようなことはいたしておりません。
○久保委員 高い安いの問題ではなくて、理由は幾らでもありますよ。運転は国鉄の車両運行の都合により取りやめたいという申し入がなぜできないか、そうでしょう、一つの例です。あるのじゃないですか、いかがでしょう。
○山田説明員 一般的に申しまして、連絡運輸をやめるということは、旅客輸送、貨物輸送に相当大きな影響がございます。それで従来も滞納が常に行なわれておるというような会社に対しましても、この連絡運輸をとめるというのはいわば死刑の宣告にもなるようなものでございますので、もちろん滞納につきましては延滞利子は徴収いたしておりますが、極力あらゆる方法で取り立てるようにいたしております。たまたま近江鉄道につきましては、三十六年以前には滞納がなかったわけでございます。最近セメント輸送が相当出たというような状況でございまして、連絡運輸をとめるということはやはり大きな目から見て国民経済に与える影響が大きいかと存じますので、当時の担当者としてはそこまで考えなかったと想像されるわけでございます。
○久保委員 なるほど、あなたがおっしゃるのも一理ですよ。私もあえてそういうことをしろとは言いません。ししか、やはり商業ベースでものを運ぶという場合には、これは取引ですよ。総裁はもう財界で長いことおやりになっておるからおわかりでしょう。ところが一方的な要求だけ聞いてそれでやっているからこそ、こんな問題が出てくるんじゃないでしょうか。全体の国民大衆の立場からいってもそれは当然許さるべきだし、正当な方法だと私は思うのです。対抗手段を持ちながらあえてしない、これがいわゆる官僚主義だと私は思うのです。今日国鉄が諮問委員会から何か答申を受けたようでありますが、なるほどその中身も大事でしょう。しかし、その中身を審議、検討する前に、そういう姿勢を正さなければ、今後国鉄がいろいろなことをやる場合に私企業から妨害が入ってくる。これは事実でしょう、私は一つずつあえて述べませんが、それがなぜできないかというのです。その自主性がないところに諮問委員会の答申を受けてどうのこうのと言ったって、実際いって始まりませんよ。収益性を上げるといっても、収益性を上げようと思えばみんな通せんぼうされてしまう。これに対してシビアーに商業ベースでやれる態勢にありながらこれを傍観しておる、私はそう思うのです。これは総裁、いかがでしょう。
○石田説明員 あなたの話を聞いておるというとごもっとも千万でありまするが、しかし、連絡運輸については、ちゃんとこれに関する了解、規則というものがあります。片方の近江鉄道の例の問題なんかでも、そのほうで国鉄がぎゅうぎゅういじめられておるがゆえに、連絡運輸のほうでどうするということは、国鉄としてすべきことかすべからざることか、これは慎重に考えなければいかぬ。どうも江戸のかたきを長崎でとるようなことでございますから、これはこれ、それはそれと別個に私は考えるべきものじゃないかと存じております。これは私の常識です。
○久保委員 総裁の常識は一般的な常識で、私もそう思うのです。江戸のかたきを長崎で討つようなことは断じてやるべきでない。これも商業道徳に反するのです。しかし世の中は広いですから、そういうあなたのおっしゃることで私も同感のことが通用しないというのが今日じゃないでしょうか。それにはそれでやはり考えざるを得ないじゃないでしょうか。連帯運輸は私は一つの例を言ったのでありまして、連帯運輸をとめろとは決して言いません。その他の方法があるじゃないですか、そういうことを言いたいのです。まあまあ世の中は商業ベースで、道徳も守り得ない今日でありますから、よほど気をつけてやらぬと経営者としての責任を問われますぞ。だからそういう点で私は言っておる。まことに総裁のおっしゃるとおり、それがほんとうです。ところがほんとうなところが通らぬのです。通らぬから通せんぼうが来る。これは大体私はキリスト教か神様か知りませんけれども、私は私でやりますといったんでは世の中は渡れないんじゃないですか。数多い問題ではないのでありますが、私はそう思う。
 
(略)

○肥田委員 先般近江の鉄道連帯清算金について資料の提出を求めました。いまここに一枚の資料をいただいておりますが、これについて若干の説明をしていただきたいと思うのです。それはまず清算の方法ですね。これは先ほども言われておったように、格別それぞれの各社について特別な取り扱いはしておらない、こういうふうにおっしゃっているのです。それはよくわかるのですが、この表を見ると、原則的な清算の方法というものはどうなっておるのですか。たとえば三十四年度、三十五年度はいわゆる完全納入がされておる。三十六年度では五千七百六十六万三千九百十五円というのが滞納になっておる。そしてその次には、三十七年四月から三十七年十二月までは、ここで何か各月清算が行なわれておるようですね。この清算の方法は各月清算をたてまえでやっておるのですか、それとも相手が納入しなければそのままになって、いつかの時期に清算するというようなことになっているのですか、その点はどういう扱いをされておりますか。
○山田説明員 この表のつくり方はちょっと不手ぎわでございまして申しわけございませんが、原則的には毎月の清算になっております。それでこの前も申し上げたかと思いますが、約二百社ばかりの連絡会社がございますけれども、その大部分が国鉄が受け取り勘定になっている会社でございまして、近江鉄道もその受けとり勘定になる会社の一つでございます。三十六年度末に滞納額五千七百余万円あげてございますが、これも三十六年度毎月表示したほうがおわかりやすかったと、実はつくったあとで考えておる次第でございまして、その点、申しわけございませんが、三十六年度末に五千七百万円滞納が出まして、これは滞納が出るたびに督促をもちろんいたしております。そうしまして、三十七年度へ入りまして、四月の受け取るものが当然あるわけでございまして、それを五千七百余万円に加算いたしたのが四月末の督促額になるわけでございますが、それがやはり払われなくて、四月末には八千万円に達したということに相なります。五月に入りますと、五月にやはり受け取る五月分があるわけでございまして、それをまた加算して要求をしたと思いますが、その場合に、ある程度は払われたものと考えられますことは、五月末の滞納額が八千七百万円で、約七百万円程度の滞納額の増加になっておりますので、これは五月にある程度払われたものと思われます。それから六月末の滞納額が五月末と同額でございますから、六月の納入額一カ月分は、こちらの要求どおり支払われたものと考えられまして、七月から以降、月末の滞納額の残額が減っておりますのは、それぞれその月の納入分プラス滞納額をなしくずしに会社としては国鉄に払っておりまして、それで十二月末に一千万円を残し、そして今年の一月末にはそれがゼロになっておる。それからずっといまに至るまで滞納がございません。そういう状況でございます。
○肥田委員 それから、参考のためにお伺いをしたいのですが、この表によるところの連絡清算ですね、この扱い方というものは、国鉄当局としてはこれは一本ですね。なるほどこの新幹線の工事局と、それから一般営業のほうと、これは一本ですからその点はいいのですが、それはここでどういうふうに区別をされるのですか。ということは、先般差しつかえがあったらいけませんから、そこまでは触れないと思うのですが、たとえばこの清算をさせたという、こういう表現は、これはどういうところから出てくるのですか。本来二本の別なルートからやられるべきものなんですね。なるほどこの出る金も違います。これは、新幹線総局で持っておるところの金と、それから国鉄の営業に入ってくる金とは違いますから、それはどういうところからそういう表現が使われたのですか。ただ、言葉のあやでそうなったのですか。私はそう理解をしたいのですが、その点はどうなんでしょう。
○山田説明員 私の説明が不十分でございましたので、ここで見出しにございます連絡運輸清算金と申しますのは、これは一般的に使う用語でございまして、先ほど申しましたような、国鉄が受け取り勘定になるか支払い勘定になるか、その受け取り勘定と支払い勘定とを差し引いた清算の額という意味で、ここに清算金と書いたのでございまして、この前の御質問にございましたような、現地のうわさで、この近江鉄道から取り立てるべきたとえばこの五千七百万円、これを近江鉄道に支払った二億五千万円とをバランスして清算したという意味の清算ではございません。なお、先生からただいま御指摘がございましたように、この連絡運輸清算の事務は、これは本社の経理局でやっておりまして、それから近江鉄道に支払いました二億五千万円の支払い事務は、大阪の幹線工事局でやっております。事務としても全然別途の事務でございまして、したがって関係者も、ほかは近江鉄道に二億五千万円がいつ支払われるか、そのこと自体知らない状態でございますので、たまたま現地で支払った金で延滞金を払っただろうというようなのは、私は憶測にすぎないと思います。
○肥田委員 それからもう一つ、これは参考のためにお伺いしたいのですが、近江鉄道の営業状態というのですか、これは三十四年度、三十五年度、三十六年度とありますこの連絡清算金の請求額というのは、結局国鉄当局に支払われるべき総額ですね。ですから、この表で見ると三十四年度については四千四百万、その次三十二五年度については九千二百万円何がし、それから三十六年度には急速に二億六千八百万円何がし、こうなっていますけれども、そうするとこの三十七年末におけるところのものと三十六年度というものとは、三十六年度のほうが多いのですね。この数字で見るとそういう状態です。
 それからもう一つ、上昇率はいいですけれども、近江鉄道の営業キロ数、これは実は近江鉄道の実情というものはわれわれもよくわかりません。その他のところはほとんど知っておりますけれども、参考のために聞いておきたいのですが、近江鉄道の営業キロ数、それからいわゆる連絡旅客数ですね。それから貨物、先ほどおっしゃっていたようにセメントとその他米、麦その他の農作物がありますが、そういう貨物の輸送キロ量、こういうものについて参考のために、ひとついまわかっておればお聞かせをいただきたいと思います。それからもしいま数字がわかっていなければこれはあとでけっこうですが、私が知りたいと思うのは、近江鉄道というものが、実際に連帯上のどれだけの影響というものがあるのか。それから先ほど久保委員が言われておったように、この清算方法についても、くしくもここで考えられるのは、先ほど副総裁がおっしゃったように、三十六年度の十二月に一億五千万円国鉄のほうから近江鉄道にとにかく金を出しておる。それから三十七年の六月に一億円出した、こういう関係の中からやっと清算の形態がとられておるというのがこの数字の上に出てくる実情ですから、したがって将来の近江鉄道とそれから国有鉄道との連絡清算というもののやり方については、大いに検討の必要があるだろうと思う。そういう点について参考のために旅客数量、それから貨物キロ量、こういうものの資料をひとつお願いしたいと思います。
○山田説明員 詳細な資料ではございませんけれども、近江鉄道の収支状況を、これは会社からとったものでございますが、三十四年度が鉄道営業だけで見ますと千七百万円の損になっております。それから三十五年度は二千五百万円の欠損、三十六年度が三千六百万円の欠損、それから国鉄がもらいます金で三十六年度に大幅にふえたのは、これも詳細な資料は手元にはございませんが、国鉄が三十六年度から運賃の値上げをいたしましたので、したがってその分がこの増加額の大部分になっておると思いますし、それから会社自体としましては、貨物輸送量が非常にふえまして、したがって国鉄の線に入ってくる貨車数が非常にふえた。それが国鉄に対する会社からの清算支払いの増加の大きな原因かと思います。なおこのような滞納が生じましたので、現在はここにございますように、一月末から滞納がゼロになっておりますが、将来また滞納されては困りますので、現在約六千三百万円の銀行保証を提供してもらっておりまして、将来滞納が出まするならば、その銀行保証でもって取り立てるという対策、措置を講じております。
○肥田委員 もう少しお伺いしておきたいのですが、何ですか、このいまの答えていただいた数字は、いわゆる逐年欠損ですね。そうすると、こういうのはどう理解したらいいのですか。この逐年欠損というのは、いわゆる近江鉄道の欠損ですね。鉄道自体の欠損という数字はどこから出てきますか。
 それからもう一つ、欠損という状態の中で、さらにいわゆる近江鉄道に対して、これは話が戻りますが、先ほどの問題の焦点になっておるところのいわゆる減収補償というものですね。これはどう理解をしたらいいのですか。これは先ほど何か磯崎副総裁が、いままでのちぐはぐの点の清算という意味で、とにかくいままでそういう面があったということを言われたんで、ちぐはぐと思う面の清算は、それで私もよかろうと思いますけれども、そういう関係は一体どう理解をしたらいいんですか。逐年欠損を出しておる、たとえば欠損というのは、いろいろ決算報告のやりくり方があるでしょうから、私もその決算報告に出てくるものが欠損だというふうには正直にとらなくてもいいような気がします。けれどもこの公式に出しておる決算報告は、欠損だ、それは三十四年、五年、六年もみな欠損だというときに、さらに、その欠損が上回るからということで、補償ということばが出てくるのか、そういう点、何かほかに私らの理解のできるような内容がありますか。
○山田説明員 会社自体の欠損の内容、どういう原因でそういう欠損になったのか私ども存じませんのですが、国鉄と会社の関係から申しますと、国鉄に入れてもらう金でございますね。ここにあげてございます、たとえば三十六年度で二億六千八百万円、これは近江鉄道から国鉄に入れてもらう金でございます。これはいわば近江鉄道が国鉄にかわってお客なり荷主から国鉄の運賃分を取り立ててもらっておった金でございますから、これはもう会社を素通りして、国鉄にもらう性質のものでございます。したがってこれは会社の損得とは全然関係がない性質の金でございます。そういう国鉄との金を全部支払ったあと、会社自体の経営で欠損が出るか、あるいは損になるか利益が出るかは、これは私ども会社自体の内容を監督しているわけでもちろんございませんし、単に決算報告書で拝見するだけのことでございますので、運輸省の民鉄部では、あるいは詳細に御承知かとも思いますが、そこまでは私ども検討はいたしておらない次第でございます。
○肥田委員 それでは運輸省の民鉄、きょうは見えていませんか。――次官ですね。これは次官にひとつルートということでお願いしておきますが、近江鉄道の決算報告書というものがあるでしょうから、それを一部見せていただくようにお願いしておきます。終わります。

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