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2014年2月15日 (土)

相模鉄道と駐留軍(進駐軍)

相模鉄道は、営業エリア内に、厚木基地を抱えているため、引き込み線があったりすることは知られているが、かつては、座間の進駐軍(駐留軍)専用の路線バスを営業していた。



運審第九十七号

  昭和二十八年二月十日

運輸審議会会長 木村 隆規

 運輸大臣 石井光次郎殿

    答 申 書

相模鉄道株式会社の自動車運送事業免許申請について

昭二八第五〇〇四号

 一月十七日付自旅第三二号をもつて諮問にかかる右の事案について、当審議会は書面審理により審議した結果、次のとおり答申する。

   主 文

 相模鉄道株式会社申請の次の区間における一般乗合旅客自動車運送事業は、運送する旅客の範囲を駐留軍軍人及び軍関係者に限定して、これを免許することが適当である。
(1) 横浜市保土ケ谷区川島町二二四五番地から神奈川県高座郡相模原町上矢辺六〇〇番地まで(二一キロ)
(2) 横浜市中区日の出町一丁目二番地から同市中区伊勢佐木町一丁目二九番地まで(〇・八キロ)
(3) 横浜市西区浅間町五丁目三七九番地から同市西区伊勢町三丁目三五番地まで(一・四キロ)

   理 由

 申請者は、その乗合自動車の既免許路線を短絡及び延長して、相模原町の駐留軍部隊(Y・E・D)-横浜市P・X前間(三一・一キロ)一日四往復(但し、土曜七往復及び日曜八往復)の乗合自動車を運行しようとするもので、運行期間は免許の日から昭和二十八年十一月末日までとし、主たる輸送対象を駐留軍軍人及びその関係者とするものである。
 現在、この輸送需要に応じた輸送は、Y・E・Dの軍用車が行つているが、この申請は駐留軍部隊長からの要請に基くものであり、また、この路線は神奈川中央乗合自動車株式会社の既免許路線二〇キロ及び横浜市営バスの既免許路線が六キロ競合しているが、Y・E・D、淵野辺キヤンプ及び横浜P・Xのほかは停車せず、交通目的を異にしているので、運送する旅客の範囲を限定するにおいては、既存交通機関に対する影響はほとんどなく、適切な計画と認められる。
 従つて、この申請は道路運送法第六条に規定する免許基準各号に適合するものと認められる。

「Y・E・D」とは、横浜技術廠(Yokohama Engineering Depot) で、現在の相模総合補給廠である。

(参考)相模原市に所在する米軍基地の概要http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/beigun_kichi/004195.html



「キャンプ淵野辺」は、既に返還されて、相模原球場JAXAの宇宙科学研究所になっている。

https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/dbps_data/_material_/localhost/kikaku/1130nobe_seibikeikaku.pd00/pdf/camp_fuchif

「横浜P・X」とは、伊勢佐木町の「松屋(のちの横浜松坂屋)」におかれていた米軍の購買部(post exchange)とのことである。

(参考)http://www.city.yokohama.lg.jp/somu/org/housei/sisi/pdf/no11-hada.pdf

http://www.yohidevils.com/index.php?q=gallery&g2_itemId=4466

戦後直後の既得権保護バリバリの運輸行政の中で、神奈中帝国のど真ん中に路線を開設したというのは凄いことなのではないかと。。。まあ「米軍のご指名」という錦の御旗なのだろうが(それだけ相鉄が米軍に気に入られる(信用を得る)実績があったのだろうか?)。。





運審第三百十二号

  昭和二十九年十二月二十五日

運輸審議会会長 木村 隆規

 運輸大臣 三木 武夫殿

    答 申 書

相模鉄道株式会社の自動車運送事業の免許申請について

昭二九第五六四八号

 昭和二十九年十二月三日付自貨第六八四号をもつて諮問された右の事案は、審議の結果、次のとおり答申する。

   主 文

 相模鉄道株式会社申請の神奈川県高座郡座間町座間キヤンプから横浜市中区間門町二丁目一七六番地まで(三六・四キロ)の間における旅客の範囲を座間キヤンプ及び上瀬谷通信隊の駐留軍軍人、軍属及びその家族並びに軍関係者に限定する一般乗合旅客自動車運送事業は、免許することが適当である。

   理 由

 申請者は、現在旧横浜P・XとY・E・Dとの間及び相模原ハウスと厚木航空隊との間の限定バス事業を経営しているが、このたび横浜市、座間キャンプ間の軍用バスの運行が廃止されるので、これに代つて、旅客の範囲を座間キャンプ及び上瀬谷通信隊の駐留軍軍人、軍属及びその家族並びに軍関係者に限定して、横浜市、座間キヤンプ間に一日二往復乗合自動車を運行させるため、この申請に及んだものである。
 従来横浜地区に点在していたアメリカ極東軍諸施設が座間地区に集結した結果、座間キャンプ及び上瀬谷通信隊の駐留軍軍人、軍属及びその家族並びに軍関係者で、通勤、娯楽その他の用務のため、横浜市、座間地区間を往来する者が相当あるので、従来この旅客の需要に応じていた軍用バスに代つて、申請者がこの間にバスを運行させることは、輸送需要に対し適切なものと認められる。
 申請路線は、横浜市、下鶴間間横浜市のバス路線と横浜市、座間キヤンプ間神奈川中央交通株式会社のバス路線と、競合しているが、申請者が駐留軍軍人、軍属及びその家族以外の軍関係者まで輸送対象としても、運賃その他の事情から輸送分野が自ら分たれ、申請者のバス運行により、この区間の供給輸送力と輸送需要との不均衡を生ずるとは認められない。
 したがつて、この申請は、道路運送法第六条第一項に規定する免許基準各号に適合するものと認められる。

「相模原ハウス」とは、現在の米軍相模原住宅である。

(参考)相模原市に所在する米軍基地の概要http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/beigun_kichi/004195.html






「上瀬谷通信隊」については、「はまれぽ」に記事があった。
http://hamarepo.com/story.php?page_no=1&story_id=1415





一方、横浜市中区間門は、本牧地区の米軍関係施設・住宅があった場所だ。
http://honmoku-street.blogspot.jp/2014/02/blog-post_12.html
によると、米国人子弟用の学校もあったとのことなので、スクールバス的な役割もあったのだろうか?


他方、会計検査院における不当事項として国鉄から相模鉄道を介して厚木基地へ物資を輸送している際の契約が問題とされている。

昭和28年度  第3章 政府関係機関の会計

  第2節 各政府関係機関別の不当事項

   第2 日本国有鉄道

    不当事項

     その他

(2224) 機関車直通運転契約を改訂しないで不利となっているもの

 日本国有鉄道東京鉄道管理局で、昭和25年9月以降相模鉄道株式会社と機関車の直通運転契約を締結しているが、その約定内容が実際の輸送状況と一致しなくなったのに改訂の処置を講じなかったため28年度中だけでも約330万円不利な契約となっているものがある。

 右は、連合国軍用資材約7万トンを日本国有鉄道相模線所在の各駅から厚木駅を経由して、相模鉄道株式会社線相模大塚駅および同駅から分岐する連合国軍専用側線(鹿島組専用側線を含む。)に輸送するにあたり、会社側にその輸送能力がないため、その要請により日本国有鉄道所有の機関車による直通運転を行うこととし、25年9月、連絡運輸取扱細則に基いて会社との間に直通運転に関する契約を締結し、日本国有鉄道は、直通貨物について国鉄線(相模線各駅から厚木駅までの間)内の貨物運送料金を収めることができるほかに、この契約により会社線内については機関車運転料として厚木駅、相模大塚駅間(6.6キロメートル)を1往復3,920円(26年11月以降4,200円)、専用側線内(2.6キロメートル)1往復1,680円(26年11月以降1,800円)の計算で収入金を収めることとしたものである。しかし、右連合国軍用資材の輸送はその後逐次減少し、27年10月ごろには既に国鉄線内においては、このため特に貨物列車を編成して運転する必要がなくなったため、本契約による直通運転列車は機関区所在地茅ヶ崎駅から厚木駅まで14.2キロメートルの間を機関車だけで運転し、この機関車を厚木駅と会社線相模大塚駅との間および専用側線の貨物列車けん引用に使用しているにすぎず、事実上直通運転を廃止している状況であり、したがって、国鉄線内での貨物運送料金は全然収めることができなくなっていたのであるから、遅くとも27年度中には直通運転契約を機関車の貸渡契約に改訂すべき事態であったと考えられる。いま、仮に28年度分について機関車の貸渡形式によった場合の収入額を機関車の直通運転契約による収入額と比較すると、

貸渡の場合 3,796,000円
直通運転の場合 2,854,800円
差引 941,200円
の収入増加となるばかりでなく、直通運転のために日本国有鉄道で支弁した石炭費約170万円、人件費約70万円計約240万円(28年度分)は機関車の貸渡契約によったとすれば負担する必要がなかったものである。






第022回国会 衆議院決算委員会  昭和三十年七月三十日
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/022/0106/main.html
○大沢会計検査院説明員

最後の二二二四号の機関車直通運転契約を改訂しないで不利となっておるものといいますのは、例の厚木の飛行場に当時いろいろな土工材料などを搬入する必要があったのですが、相模鉄道は電車線でありまして、その鉄道の機関車では牽引力が少いというので、国鉄の機関車で牽引して直通して持っていくというので、機関車直通運転契約というものを結んできたわけであります。それで工事盛んな当時はどんどんやっておったのでありますが、その後この飛行場工事も完了しましたために、最近機関車で直通して持ってくるものはほとんどない。しかし機関車はまだ相模鉄道の方へ貸与するために、毎朝茅ケ崎の機関庫を出て、厚木まで独走して、あとは相模鉄道の方の仕事をやっておるというような状態であります。もう直通運転の必要はほとんどなくなった。むしろこうなれば、機関車そのものを相模鉄道に貸与する――向うが必要ならばの問題でありますが、必要ならば貸与すればいい。そうすれば国鉄内部の機関車の貸与の料金、そうしたもので計算しましても、直通運転による収入に比べまして約九十四万円ほど、の収入の増加になる、こういうように考える次第でありまして、本直通運転契約をいつまでもやっておったのはきわめて遺憾であると存じます。



おまけに相鉄電車貼っておく。

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