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2014年3月21日 (金)

封印したい「封印された鉄道史」(小川裕夫)とウィキペディアと堤さんの所業(その2)

封印したい「封印された鉄道史」(小川裕夫)とウィキペディアと堤さんの所業 という記事を先日書いたわけで、そこではwikipediaと小川裕夫は、「近江鉄道の眺望権補償1億円の件は、新聞記事の書き方が悪いんだー風評被害だー」みたいなことを書いているが、それはおかしいんじゃないの?ということもご指摘申し上げたつもりである。

再掲するとwikipediaには下記のとおり書いてある。(注:下記はブログ記載時のもので、後日修正対応していただいております。)
かつて東海道新幹線の建設に際し、自社路線との並行区間で鈴鹿山脈の眺望が遮られるという名目で国鉄に交渉し、補償金を得たという逸話が伝えられているが、真相は異なる。詳しくは「近江鉄道本線」を参照のこと。
高宮駅 - 五箇荘駅間で東海道新幹線と並行している。この新幹線建設時に伊吹山鈴鹿山脈の眺望が失われるとして、近江鉄道が当時の国鉄に補償を求めたという話があるが、実際には新幹線によって交差する道路の安全確認が困難となり、踏切改良、警報器設置などの「防護補強工事費」および新幹線の「併設による旅客収入減」等への補償を求めた[2]というのが真相で、協議の末、実際に当時で1億円が支払われている。この時、影響の一つとして眺望も付記したことを新聞に「景観料」と面白く書き立てられて風評が広がったと、2000年に林常彦近江鉄道取締役(当時)は鉄道雑誌『鉄道ピクトリアル』で話している[3]

果たして実際はどうなのか。その新聞はそんなに不当なことを書いているのか?

朝日新聞1963年3月14日

近江鉄道眺望権補償 朝日新聞1963年3月14日

○岡本政府委員(運輸省鉄道監督局長) これも先ほど国鉄の方からお答え申し上げましたように、この地方鉄道軌道整備法二十四条の場合は、新しく国有鉄道が線路を敷設したために既存の地方鉄道がこれによって営業上の影響を受けまして、つまり今まで地方鉄道で運んでおった旅客が全部、新しく敷設された国有鉄道の線路に移る、あるいはそのために営業が成り立ち得なくなった、こういう場合とか、あるいはお客が減ってきて現実に収益が減ってきたというふうな場合でございまして、この近江鉄道と東海道新幹線の関係は、営業上の競合は全然ないわけでございます。つまり近江鉄道の言い分は、自分の線路で運んでおった観光客が、東海道新幹線の築堤によって観光価値が減少するために、その観光旅客が減るという主張をいたしまして、その補償を要求いたしたのでございますので、この第二十四条によるべきものではないというふうに考えております。

○十河説明員(日本国有鉄道総裁) 先ほど申し上げましたように、また同じことを繰り返すようでありますが、四億円、五億円と要求されたものを二億五千万円に切り詰める、圧縮して妥協をするためにそういういろいろな名義を使った。景色の補償とか何とかいう名目にはいろいろ問題があろうかと思いますけれども、やったことはできるだけ補償を少なく圧縮しようというためにやったことであると私は申し上げた次第であります。その名目にはいろいろの問題がありましょうけれども、それよりかできるだけ補償額を少なくしたいということに私は重きを置いているのですから、そういうことの努力を相当やったんじゃないか、そう認めておるということを申し上げた次第であります。名義については、お話の通りいろいろ問題があるかと思います。そういう次第でありますから、これはやむを得なかったのではないか、こう思っておるところであります。

運輸省の幹部が、「近江鉄道から、東海道新幹線の築堤によって観光価値が減少するために、その観光旅客が減るという主張をいたしまして、その補償を要求いたした」と答弁している。
また、安全施設に関する補償についても下記のように他にはそんな補償はしたことはないと述べている。

○大石説明員(日本国有鉄道常務理事) こういうふうに並行いたしまして相手の踏切を直す、またこちらの工事がほかの沿線の私鉄に影響を及ぼしまして、そこに補償を払うというようなケースはほかにございません。

読売新聞1963年6月6日

近江鉄道眺望権補償 読売新聞1963年6月6日

○磯崎説明員(日本国有鉄道副総裁) 三十六年の十二月に払いましたのは一億五千万円でございますが、実はただいま政務次官から御説明のございましたとおり、当初の七億の要求あるいはその後の併設高架の要求等に対しましていろいろ折衝しておったようでございます。そうしていろいろの交渉の過程におきまして、とにかく全額二億五千万円程度でもって妥結しようというような話になった。ただそれにつきまして私のほうの現地の当局といたしましては、少しでもそれを安くしたいという努力をいたしましたが一方工期が迫っておりますし、何とか早く工事に着手したいということで、とりあえずそれでは一億五千万円だけ払う、一億五千万円払えば工事に着手してよろしい、こういう協定を三十六年の十二月に結んでおります。そして、それは当時の当事者から聞きますと、残りの一億は何とかもう少しまけさしたいという気持ちもあって、とりあえず会社が工事に手をつけなさいと言ってくれる最小限――会社から申しますれば最小限、こちらから申しますれば最大限の金を一応出して、それからあと半年ばかりの間に残りの金についていろいろ折衝したい、こういうつもりで一億五千万円を先に出しまして、それでもってとりあえず工事を始めたということになっております。
 この一億五千万円の金の出し方は、前回の委員会で肥田先生の御要求がありまして御説明申し上げ、資料も出しておりますが、三十六年の十二月に払いました金は用地費と用地附帯費という名目になっております。こまかく申しますと、一億四千九百五十万円が用地付帯費で、五十万円が用地費、こういう内訳になって私どもの支払いができております。その後種々折衝いたしまして残りの一億は――とうとう一億をそれ以上に切り下げることができず、約半年たちまして三十七年の七月に残りの一億を、これは用地附帯費ということで支払っております
。前回の委員会で矢尾先生の御質問に対しまして私からお答えいたしましたとおり、いままでのいきさつを私も書類あるいは関係者等に当たっていろいろ調べてみますと、やはりいま政務次官のおっしゃったとおり、二億五千万円という一種の全般的な金のワクとして話がきまったというふうないままでの経過になっております。当委員会で数回にわたって国鉄側の説明がまちまちであったという点につきましては、前回深くおわびいたしたわけでありますが、きょうまたこの席を拝借いたしまして、もう一ぺんいままでの説明が非常に不備であったという点につきましては、深く陳謝の意を表する次第であります。

「これに何か問題でも?」という状況。私の先の記事には、詳細な答弁を引用してあるが、夫々の答弁とかけ離れたものではないとほぼ断言してよい。

元ネタの鉄道ピクトリアルの記事を読んでいないから断言はできないけど、結局当該新聞記事の裏取りをしていないんじゃないかなあ。

で、鉄道好きなwikipedia編集子が「マスゴミの風評被害によって僕の大好きな鉄道が貶められている!真実は鉄道関係者が語っているし、P誌なら間違いない!」とばかりに(新聞記事を読まずに?)「真相は異なる」と書いちゃう。

ところが新聞記事には、十河国鉄総裁や磯崎国鉄副総裁の答弁として引用しているので、「国鉄の総裁・副総裁が風評をまきちらしている」ということになってしまい、結果として「マスゴミsage、鉄道age」のつもりが「国鉄総裁・副総裁sage」になっちゃっている皮肉。

で、またそれを検証しない小川裕夫が「封印された鉄道史」だ!と書いちゃう負の連鎖だと。

あえて言うなら「眺望が遮られるという名目で国鉄に交渉し、補償金を得たという逸話が伝えられているが、真相は異なる。」のは確かに正解であって、「7億7千万の要求に対して、眺望権や安全設備の補償とかの名目で2億5千万も払っちゃったけど、その名目は法律にも根拠がないデタラメなものでした。ごめんなさい。」というのが真相だったというべきじゃないかなあ。

十河国鉄総裁は、事業費不足の詰め腹を切らされて引責辞任し、開通式にも呼ばれなかった悲劇の総裁といった取り上げ方がよくされるが、新聞記事にあるように「新幹線の事業費不足が審議されている国会において、近江鉄道には法律的に根拠のない補償金を億単位で支払ったことを「7億から値切ったんだからいいじゃないか」と開き直ったような答弁をするようでは見限られても仕方がないような気がする。

東海道新幹線50周年ということで、この辺もまた掘り返されるかもしれんが、国会議事録くらいはタダで検索できるんだから、ライターさんも手間を惜しまずにチェックしようぜ。

まあ、私も当該鉄道ピクトリアル誌の記事を読みもせずに上記のようなことを書いちゃうので同レベルですわな。でも図書館とかにあるわけでもないしなあ。編集部に「貴社の記事の真偽を検証したいのですが。。」とお願いしたら見せていただけるものなんでしょうか?

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コメント

当該のRP誌を所蔵しています。
この記事は、近江鉄道取締役の林氏と大学教授の今城氏の対談を収録していて、
当該部分は
今城「本当は新幹線と同じ高架にすればよかったですね」
林「当時そういう要望をしたようですが、地方の私鉄には配慮がありませんでした。新幹線については景観料のことばかり有名になってしまいましたが、これは新聞がおもしろく書いただけのことで、当社としては新幹線建設により被る影響の最後の一項目として挙げたにすぎません(以下略)」
となってます。
国会の議事録と比較すると、嘘は言ってないが事実の一部しか説明してない、という印象です。
新幹線の工事誌までは参照できていないですが、ウィキペディアへの執筆内容からすると
踏切の対策費程度の説明しかしていないのでしょう。
「真相」とまで書くのは踏み込み過ぎだと思いますが、RP誌と工事誌参照して書いているのは
かなりまともな方で、それ以外の情報に気付かなかったことまでは責められないように思います。
とりあえず当該部分については改訂してあります。

投稿: | 2014年3月22日 (土) 01時44分

お名前を書いていただけておりませんが、早速ご対応いただいた由。また、当該記事もご紹介いただき大変ありがとうございました。御礼申し上げます。

近江鉄道林取締役の「当社としては新幹線建設により被る影響の最後の一項目として挙げたにすぎません」については、

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/043/0016/04303260016013c.html
の大石国鉄常務の答弁「近江鉄道からこちらの大阪の幹線工事局長のところに出て参りました書類、先ほど申し上げました、収入が五億一千四百万円減るといっておりましたものに書いてありますことは、新幹線敷設による当社沿線風致阻害、観光客減殺によって観光旅客運賃の収入減がある、こういうことを向こうは言っているわけでございます。」と比べると

「最後の一項目にしては随分要求しすぎなんじゃありませんか?」というのが率直な感想ではありますが。。。

投稿: 革洋同 | 2014年3月22日 (土) 20時32分

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