「つばめマークのバスが行く」加藤佳一(交通新聞社刊)を読んで
労作にケチをつけるわけではなくて、「著者は分かってるんだろうけど、この書き方じゃ読者は分からんだろうなー」という部分があったので、補足してみる。
名神ハイウェイバスの開業と成長(124頁)
この年(注:1965年)の9月、名神高速道路の制限時速が100kmに変更されている。
(126頁)
高速道路の制限時速が100kmに引き上げられたことを受け、各メーカーは新しいエンジンの開発に取り組んだ。
これだと、名神高速は普通車も含めて当初の制限速度が100km/hより低く抑えられてたものが1965年に100km/hに引き上げられたように思えてしまうが、そうではない。
普通車はもともと100km/hが上限だったことに対してバスは80km/hに抑えられていた。これが解消されたのが1965年9月ということなのである。
例えば、高速道路調査会発行の「高速道路と自動車」1965年8月号には、特集記事として「名神高速道路のバスの最高速度80キロ制限批判」という題目のもと
・「切望される再検討」山上孝史(運輸省自動車局旅客課長)
・「高速道路のバスの最高速度」並木芳賢(日本国有鉄道自動車局総務課長)
・「高速バス百キロの主張」福島真義(日本乗合自動車協会専務理事)
・「80キロ制限の不合理性」大久保修(日本高速自動車株式会社常務取締役)
といったバス業界からの声が寄せられている。
そういった声を反映したからか、1965年9月1日に法定速度の引上が行われている。
(高速道路と自動車1965年12月号から引用)
この辺を念頭に置くと、労作がより分かりやすくなるんじゃないかな。
なお、「高速道路と自動車」には、上記の他にも高速バス関係の記事が掲載されているので、関心のある方は国会図書館あたりで探してみるとよいのでは?総目次(PDF)は高速道路調査会のサイトで公開されている。
| 固定リンク | 0
「道路」カテゴリの記事
- 上越新幹線燕三条駅と北陸自動車道三条燕ICの命名経緯を検証する(2023.06.24)
- 毎日新聞【⿊川晋史記者】「五輪が来たニッポン︓1964→2021 都市の姿、環境優先へ」とプロジェクトX「空中作戦」(2021.08.08)
- 階段国道339号に公共交通機関(JR津軽線と路線バス)で行く方法(2021.05.03)
- 階段国道339号にまつわる謎にチャレンジしてみた(2021.05.02)
「読書感想文」カテゴリの記事
- 福川裕一千葉大名誉教授監修の「ニッポンのまちのしくみ」が酷い(2020.02.07)
- 首都高 諸橋雅之室長の「オリンピックをやろうというときに、建設反対なんてヤボだ」発言を検証してみる(2019.10.20)
- 古市憲寿氏「東京五輪“負の遺産” 首都高とモノレール 五輪に間に合わせた急ごしらえの代償」を検証する。(2019.08.13)
- 「完全版 新宿駅大解剖」(横見浩彦・監修 宝島社・刊)表紙トップの上越新幹線ネタを検証してみる(2016.12.11)
- 「東京道路奇景」(川辺謙一・著)を読んでいて「東京都市高速道路の建設について」に関心を持った方に全部見せちゃう。(2016.11.22)
コメント