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2015年1月21日 (水)

圏央道はなぜ高速道路ではなく一般国道なのか?~「ふしぎな国道(佐藤健太郎著)」の不思議(その3)

 

「ふしぎな国道」講談社現代新書2282(佐藤健太郎著)の、気になる点を整理してみる続きものの3回目である。

 第三京浜道路、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、東海環状自動車道などは、ほとんどの区間が制限速度80kmあるいは100kmで、どこからどう見ても高速道路だが、実際にはそれぞれ466号・468号・475号というナンバーを持った一般国道だ。これらは東名高速や中央自動車道などと、何がどう違うのだろうか?

「ふしぎな国道」佐藤健太郎著14頁

高規格幹線道路の体系

http://www.mlit.go.jp/road/ir/kihon/25/3.pdf

 

 この高規格幹線道路を、高速道路(上記でいう東名高速や中央自動車道等)と一般国道自動車専用道路(圏央道、東海環状道路等)に振り分ける基準等について国会で建設省道路局長(当時)が答弁をしているので引用してみる。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/109/1350/10908251350003a.html

 

参議院 建設委員会 - 3号

昭和62年08月25日

○太田淳夫君 この四全総で高幹道路網の整備を打ち出しているわけですけれども、この高規格幹線道路という概念はどういうものであるのか、あるいは従来の高速自動車道とはどのように違っているのか、あるいは今回の法改正の対象となっている国土開発幹線自動車道とはどのような関係になっているのか、あるいはまたその高規格幹線道路となる路線の要件はどのような基準になっているのか、説明してもらいたい。

○政府委員(鈴木道雄君(引用者注:建設省道路局長)) 高規格幹線道路につきましては、第三次の全国総合開発計画、三全総で一万キロの高規格幹線道路網を将来策定していくというときに提言されておりまして、その定義でございますが、私どもといたしましては、全国の各都市間を結ぶ自動車専用道路ということで考えております。したがいまして、現在の国土開発幹線自動車道は当然国土を縦貫し横断している路線でございますから、高規格幹線道路の一つに入るわけでございますし、また、本州四国連絡橋も同じ高規格幹線道路でございますし、また、国土を縦貫あるいは横断をしない路線でありましても、各地域を結ぶ一般国道の自動車専用道路もこの高規格幹線道路ということで私ども定義しておりまして、まとめて申し上げますと、高規格幹線道路の中には、従来の国土開発幹線自動車道、それから本州四国連絡橋、一般国道の自動車専用道路、この三種類があるということになります。

 それから、構造的にはどうかということでございますが、いずれも定義のときに申し上げましたように自動車専用道路でございまして、そういった観点からいえば、一般国道の自動車専用道路も国土開発幹線自動車道路も自動車専用道路でございますので、構造規格からいえば、一級とか二級とか、その程度の差はありますけれども、同じ自動車専用道路ということで、同じ構造でございます。

○太田淳夫君 この一万四千キロの高規格幹線道路につきましては、国土開発幹線自動車道と一般国道の自動車専用道、このいずれかに振り分けて整備されることになっているんですが、この一系統の整備体系にした理由はどのような理由なのか。また、振り分けの基準というのは一体何か。さらに、そのいずれかに振り分けられることによって生ずるメリット、デメリット、こういうものはどういうような状況でしょうか。

○政府委員(鈴木道雄君) 二つといいますか、国土開発幹線自動車道と一般国道の自動車専用道路の差でございますが、国土開発幹線自動車道の定義といたしましては、国土を縦貫し横断する全国的な枢要な自動車道路網をなすという定義でございまして、今回選びました一万四千キロにつきましては、全国の各地から一時間で高規格幹線道路に達成できるというようなネットワーク的な面から選んでおりますので、必ずしも国土を縦貫しあるいは横断をしている分野に入らないということでございまして、そういう道路につきましては一般国道の自動車専用道路でやるということで、路線の性格に応じてこの両者を分けたわけでございます。

 それからもう一つは、国土開発幹線自動車道路になりますと、従来の所掌でございますと日本道路公団で全線プールということでやってきているわけでございますが、先ほど来御審議いただいておりますように、やはり道路公団の施工能力ということにも限度がございますし、国土開発幹線自動車道路で道路公団となりますと原則として有料道路ということになるわけでございますが、今度行うものにつきましては、過疎地帯においては必ずしも有料道路になじまない路線もあるということもありますし、また建設省の直轄の施行主体も大いに活用しようということもこの二つに分けた理由のうちの一つでございます。

 この鈴木道路局長の答弁を私なりに整理してみると、高規格幹線道路を国土開発幹線自動車道(いわゆる高速道路)と一般国道の自動車専用道路に振り分ける基準は

1) 「国土を縦貫し横断する全国的な枢要な自動車道路網をなす」という国土開発幹線自動車道の定義に合致するか?

 佐藤健太郎氏は、道路法第5条による国道の要件は説明するものの、国土開発幹線自動車道建設法第1条の「国土を縦貫し、又は横断する高速幹線自動車道」という定義には触れていない。「どこからどう見ても高速道路(ふしぎな国道14頁)」でも、国土開発幹線自動車道建設法の要件を満たしていないと「高速道路」とは認められていないようだ。

(国土を縦貫しあるいは横断をしている分野に入らない道路は、一般国道の自動車専用道路)

2) 有料道路としての採算から日本道路公団(当時)の全国プール制になじむか?

(過疎地の道路等は採算上有料道路として全国プール制になじまないので一般国道の自動車専用道路)

3) 施行体制として建設省(当時)が直轄工事をするか?

(建設省が直轄工事をする場合は、一般国道の自動車専用道路)

※3)は、新直轄制度導入後の現在は異なってくる。

というくくりになりそうだ。

 また、道路局長は「一般国道の自動車専用道路も国土開発幹線自動車道路も自動車専用道路でございますので、構造規格からいえば、一級とか二級とか、その程度の差はありますけれども、同じ自動車専用道路ということで、同じ構造でございます。」と答弁している。

 道路構造令を確認すると下記のとおりである。

道路構造令における自動車専用道路

http://www.mlit.go.jp/road/sign/pdf/kouzourei_2-1.pdf

ということで、「一見すると高速道路にしか見えない道路が一般国道(ふしぎな国道105頁)」であっても何ら不思議ではないわけだ。

 そして、高規格幹線道路のうち一般国道の自動車専用道路に振り分けたものを国道昇格の際に整理していくこととなる。

 

○一井淳治君 ちょっと質問を変えさせていただきます。

 県道等の国道昇格の時期でございますけれども、たしか昭和五十五、六年ごろに行われまして、それからなされてないわけでございます。そろそろ一斉昇格の時期が来ているのではないかというふうに思いますが、その時期やそれをなさる場合の進行順序についての御説明をお願いしたいと思います。

○政府委員(鈴木道雄君) 国道昇格につきましては、前回の昭和五十七年の四月一日に五千五百四十八キロを国道昇格しております。それで、現在、高規格幹線道路網が一応決定をいたしまして、今後具体的に第十次の道路整備五カ年計画でそれが事業に進めるわけでございますので、そういった中で当然全体の道路網の再編成という問題が出ております。来年、六十三年以降、五カ年計画の中で国幹道の拡大あるいは国道昇格を考えているわけでございますので、五カ年計画の前半の時期に、都道府県の要望等をも踏まえまして、今御質問の国道昇格の選定を行いたいと考えております。

http://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/1992_data/seminar9204.pdf

の「一般国道の路線を指定する政令の一部を改正する政令について」でこの国道昇格の説明がされており、一般国道の自動車専用道路については下記のように整理されている。

高規格幹線道路のうちの一般国道自動車専用道路  

※ 余談だが、圏央道は、国道468号となる前は、国道16号として建設されていた。

圏央道は国道16号だった

 そして、後に路線番号を変更しているのである。

国道番号の変更

 この辺を佐藤健太郎氏の「ふしぎな国道」から引用すると

 またこの時の国道指定では、圏央道(国道468号)、東海環状自動車道(国道475号)、京都縦貫自動車道(国道478号)など、一見すると高速道路にしか見えない道路が、一般国道の名のもとに指定を受けた。第三京浜道路(中略)も、建設から28年目にして国道昇格し、466号を名乗ることとなった。このあたり、いろいろ大人の事情があったことが窺われるが、詳細は表に出てこない。というわけで、450号以降の国道は、いわゆる高速道路に相当する道と、酷道区間を抱えた道(国道471号・477号など)が入り混じって現れるという、奇妙な状態になっている。

「ふしぎな国道」佐藤健太郎著105~106頁

 その1、その2と異なり、その3ではインターネットに公開されている資料で佐藤健太郎氏が言う「いろいろ大人の事情があったことが窺われるが、詳細は表に出てこない」「奇妙な状態」を説明してきたが、「ふしぎ」は解消されただろうか?(第三京浜の国道昇格の理由については私もわからないのだが)

 なお、第三京浜については、日本道路公団の「第三京浜道路工事報告」(神奈川県立図書館等で閲覧できる)に、建設時に「第三京浜を国道にしたくて縷々検討したが要件を満たさなかったので東京都道・神奈川県道にした」という趣旨のことが書いてあるが、それがどうしてひっくりかえったのかは私も関心があるところだ。

 

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