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2015年1月17日 (土)

新幹線と近江鉄道にまつわる「景観補償」の検証(蛇足)

新幹線と近江鉄道にまつわる「景観補償」の検証(その9)/多分(終)で締めたつもりが、締まらなかったw

 この、近江鉄道と新幹線のネタを始めたのは、もとはといえば、小川裕夫氏の「封印された鉄道史」の記述があまりにドイヒーだったからだった。もう11箇月も前なのか。

封印したい「封印された鉄道史」(小川裕夫)とウィキペディアと堤さんの所業

 せっかくなので、小川裕夫氏の記述の答え合わせをしてみよう。

 単行本でいうと144頁 Episode42【新幹線を走らせるなら1億円ください!】「近江鉄道眺望権裁判」の真相

 まず、表題から全く違うわ。なんでこれで「真相」と言えるのか?

小川裕夫氏 革洋同調べ
他方、滋賀県では新幹線と高宮駅-五個荘駅間で併走する近江鉄道が国鉄相手に訴訟を起こしている。 訴訟はおこしていない。通常の補償の交渉を行っているだけである。
これは新幹線の線路が高架線であるのに対して併走している近江鉄道の線路はそのまま地上にあるので、踏切や警報機の位置を変えたり新しく設置し直さなければならなくなったからだ。 踏切については請求項目に入っているが、それだけではない。詳細はhttp://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-1055-1.htmlにて。
その費用として近江鉄道は国鉄に1億円を請求した。 国鉄によると、当初は要求額総計4億1626万770円→後に7億7600万円を要求。詳細はhttp://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-1055-1.htmlにて。
近江鉄道が国鉄に提出した要望書に挙げた項目の中に、「近江鉄道の車窓から見える伊吹山や鈴鹿山脈の眺望が失われる補償」という文言が含まれていた。 「眺望が失われる補償」という言い方は近江鉄道も国鉄もしていない。直接的には旅客が減ることに対する補償である。
国鉄の大石重成新幹線総局長の国会答弁では
「近江鉄道は観光的な鉄道でございますので、お客さんが、沿線の景色をながめながら走っていくというようなことを大きな目的にした鉄道でございますのに、これが隣に大きな築堤ができまして、あたかも谷の下を走っていくような状況になったということによりまして、この営業上の損失と申しますか、観光客が減っていくというようなことの算定もいたしました。」
なお、近江鉄道側は、当初は「新幹線を現計画に依り敷設せらるるに於ては、当社鉄道は全く展望を遮蔽する高い壁を以って遮断され、当社乗客は窓外の眺めも不可能となり、斯くては交通の快適性と観光価値を奪い去られる結果となり、これは旅客輸送機関として堪えうる処に非ざる点を再三再四訴えている」と述べているが、最終的には「近江鉄道がもらった減客補償が゛風景補償″だなんて、まるで寝耳に水です」(小島正治郎西武鉄道社長のコメント)という立場に転じている。
当時、眺望料などという概念はなく、そうした聞きなれない権利が新聞に面白半分に報じられることになった。 繰り返すが、「眺望料」等とは国鉄も近江鉄道も言っていない。
ただし、国鉄側の国会答弁で「景色補償」という言葉を使っており、あえていうならば、悪いのは国鉄ではないか。
当時の新聞記事を検証したものはhttp://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-ffee.htmlにて。
なお、堤康次郎は「然るにこの国鉄交渉の真相を知らずして例の連中がまた事を構え、その結果国会論議の種とされ、答弁した国鉄側が不用意に景色が悪くなるから補償した分もあるなどと言うたので、新聞種にされた。」と述べている。http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-134d.html
もちろん、近江鉄道が眺望権を侵害されたとして国鉄(新幹線)を訴えたわけではない。現在でも近江鉄道が眺望権の侵害で訴えたなどと都市伝説のように語られているが、発端は当時のマスコミでの取り上げられ方にあったのだ。 そもそも「近江鉄道が国鉄を訴えた」という「都市伝説」を寡聞にして聞いたことがない。

なお、発端については、堤康次郎や西武の小島社長の上記のコメントもあるが、記事よりも国鉄である。
むしろ、この件を報道したサンデー毎日は「゛景色補償″とんでもない。われわれは一度もそんな要求を出したことはない。新幹線と名神高速道路の谷間に沈んで、斜陽化の道を歩かねばならぬあわれな地方鉄道だ。それを国鉄が不手ぎわな答弁をしたために、まるで不当利得をえたようなことをいわれ、まことに心外だ。まったく弱い者いじめだ」との近江鉄道山本社長のインタビューを掲載しているのである。http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-040a.html

 ということで、小川裕夫氏の記事の検証を終わる。「高宮駅」とか「五個荘駅」という固有名詞以外はほぼ嘘といっていいだろう。浅草キッドが東スポを評して「日付以外全部嘘」と言ったのを思い出す。というか、今回近江鉄道の件をいろいろ調べてきたが、小川裕夫氏の記事に沿ったものが見当たらないのである。いったい何を根拠にこんなデマを書いたのかわからない。

 

 ところで、堤康次郎氏ですらやらなかった、交差してくる新設鉄道に対する請求を実際に法廷に持ち込んだ鉄道会社があるのだ。

 それは、「走る平和相互銀行」こと総武流山鉄道(当時)である。ここは実際につくばエクスプレス(当時は「常磐新線」)建設に係る減収の補償請求の「調停」を裁判所に申し立てたのだ。これはまた別の機会に

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