フリーウェイは、高速道路とはちょっと違う概念なのか?~「ふしぎな国道(佐藤健太郎著)」の不思議(その4)
「ふしぎな国道」講談社現代新書2282(佐藤健太郎著)の、気になる点を整理してみる続きものの4回目である。
「ふしぎな国道」佐藤健太郎著236頁
なにが、「ちょっと違う」のかは、この本には一切触れていない。佐藤健太郎氏の「ふしぎな国道」には、このように「思わせぶり」に書いておきながら「検証不可能」」な書き方が目につく。小保方さんの一件で、日本の科学界における検証可能性についていろいろ議論されたところであるが。。。
私は英語は得意ではないので、参考著書を小まめに調べて引用するしか能がないので下記をご覧いただきたい。
1-1 高速自動車国道の意義及び路線指定
a 高速道路とは
(略)
「高速道路」は昭和30年代の新造語であるが、これはエキスプレスウェイ(EXPRESSWAY)という米語の訳語と云ってよい。米国の各州道路行政官協会(AA・SHOと略称されている)によれば、「全面的または部分的に出入制限を行い、一般的には交差点を立体交差とした、通過交通用の、往復分離した幹線道路」と定義されている。出入制限とは、「沿道の土地の所有者あるいは居住者その他の者が、その道路に近接し、乗下車する権利、空中権あるいは眺望権を、公共の権力によって全面的にもしくは部分的に制限すること」とされている。
さらに、全面的な出入制限においては、選ばれた公共道路とは接続路(これがインターチェンジである)を設け、かつ平面交差や私設の出入路の取付を禁ずることによって通過交通に都合がよいようにするものであり、また部分的な出入制限においては、選ばれた公共道路との接続路のほかに若干の平面交差や私設の出入路の取付が認められ、通過交通に優先権を与えたものだと説明されている。完全な出入制限をした高速道路をフリーウェイ(FREEWAY)とも呼んでいるが、その意味からは、わが国の高速道路はすべてフリーウェイである。部分的出入制限は、わが国でも自動車専用道路に関して認められており、例えば横浜新道や小田原厚木道路などの一般有料道路に幾つも例がある。
わが国での法律上の名称である高速自動車国道は、欧州系の呼び名に近く、英国の高速道路のモーターウェイ(MORTORWAY)、ドイツのアウトバーン(AUTOBAHN)、イタリーのアウトストラーダ(AUTOSTRADA)、フランスのオートルート(AUTOROUTE)など(いずれも直訳すれば自動車道路の意)に通じている。通称は米国系、法律上の名称は欧州系、というと、自らわが国の高速道路が両者の影響の所産であるという歴史的経緯が示されているようである。ついでに、高速道路に関係のある外国語を少し御紹介しておこう。パークウェイ(PARKWAY)は、高速道路の一種であるが、特にトラック、バスなどの商業車の通行を禁止したもので、通常公園または公園状に開発された地帯に設けられたもので、ニュージャージー州のガーデンステートパークウェイなどは有名であるが、この名称は有料制には関係がない。
有料道路はトルロ一ド(TOLLROAD)と総称されるが、かつて料金所に踏切遮断機のようなポールをおいて、料金を支払ったらこれをはね上げて通過させる方式がとられたことから、ターンパイク(TURNPIKE)、つまり回転ポールという意味の語が有料道路の名称になり、米国ではペンシルヴァニアターンパイクなどの有名な高速道路の名称に使われている。わが国の高速道路は、すべて有料制で運営されているから・ターンパイクと云ってもよいかも知れないが、方針として料金所には遮断機を設けないことにしている。
ハイウェイ(HIGHWAY)というのは、幹線の都市間道路の総称であり、ローマン・ロードが、高く盛り上げて造られたところから発していると云われている。高速道路もハイウェイの一部ではあるが、出入制限の性格が盛られていない点が物足りない。わが国の高速道路を、ちょっとしゃれて英語で呼びたいと思われる方々には、やはり「フリーウェイ」をおすすめしたい。
「高速道路のプランニング」日本道路公団理事 三野 定 監修 全国加除法令出版刊 1~2頁
三野氏は、建設省でワトキンス調査団に携わり、後に日本道路公団に転じた高速道路建設の創世記から実施段階まで勤めたエキスパートである。
そこでは「わが国の高速道路はすべてフリーウェイである。」「わが国の高速道路を、ちょっとしゃれて英語で呼びたいと思われる方々には、やはり「フリーウェイ」をおすすめしたい」と述べている。
一冊だけでは偏っているかもしれないので、他の論文も探してみようと思う。
7. 高速道路の問題と今後の路面交通の在り方
路面交通需要に対して, 積極的な供給策は駐車場の整備と, 高速道路の建設である。 高速道路は他の一切の交通路線とは立体交叉をなし, 沿道とも絶縁された高速で走行しうる構造をもつた自動車専用道路である。 これは一般街路に比して, 高速性, 安全性, 大量性で秀れている。 欧州では自動車道路 (Motor Way英, Reichoutobahnen独, Autostrade伊) と言われ, 米国ではExpress way, Park way, Throughfare, Free wayなどと都市によつて夫々呼称が違つている。 最近特にFree wayと呼ぶ都市が多くなつたが, この言葉が高速道路の性格を最も適確に表現している。 即ちFree wayとは『沿道の土地所有者が採光, 換気, 出入に対し一切の権利を有しない帯状の交通用の公共用地である』。 つまり一切の障碍から自由な高速度自動車専用道路というべきものである。 これは鉄道と同じように通行料金をとる有料道路 (Turnpike) の場合が多い。自動車文化の国といわれる米国は, 又道路文化の国といつても差し支えたい。 即ち自動車の発達と道路の発達とが連鎖反応式過程を経て今日に及んだからである。 わが国が鉄道網によつて国の大本を支えているように, 米国では巨大な国土の交通と, 混乱した都市交通を支えているものは高速道路網である。
「大都市の都心路面交通の諸問題」清水馨八郎・著
清水氏の政治的な立場はさておき、本来の専門分野の話である。
「最近特にFree wayと呼ぶ都市が多くなつたが, この言葉が高速道路の性格を最も適確に表現している」んだそうだ。まあ最近とはいってもこの論文は随分古いのだが。
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上述したように佐藤健太郎氏が、何をもって「ちょっと違う」と言っているか分からないのだが、私の調べたところでは、実務者も学者も「フリーウェイ」がよいと言っているようだ。
ところで、佐藤健太郎氏の記事は、道路にちなんだ楽曲を紹介するなかで、松任谷由実(荒井由実)の「中央フリーウェイ」について触れたものであるが、「中央道は有料道路だから、フリーウェイじゃないよ」とドヤ顔でおっしゃる方をネット上等でお見かけすることがある。
上記の清水馨八郎氏の論文にもあるように、「free」は「一切の障碍から自由な高速度自動車専用道路」という文脈で使われており、「無料」という意味ではない。
英英辞典でしらべてみよう。
free‧way
a very wide road in the US, built for fast travel [↪ motorway, expressway, highway]:
freeway
(in the US) a wide road, where traffic can travel fast for long distances. You can only enter and leave freeways at special ramps
freeway
a wide road for fast-moving traffic, especially in the US, with a limited number of places at which drivers can enter and leave it:
freeway
a wide highway that is built for fast travel
Full Definition of FREEWAY
1: an expressway with fully controlled access
2: a highway without toll fees
「a highway without toll fees」という用例もあるので、「無料道路」でも間違いではないが、「フリーウェイ=無料道路」と決め打ちせずに文脈をよく考えて使った方がよさそうだ。
「文字通りフリーウェイである」という書き方を見かけるが、果たしてどうだろうか?
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蛇足だが、日本道路公団は「Japan Highway Public Corporation」
民営化後の高速道路会社は「NEXCO:Nippon Expressway Company」だ。
「通称は米国系、法律上の名称は欧州系」と「高速道路のプランニング」には書いてあるが、現場の看板は、「高速道路」も「自動車道」もまとめて「EXPWY = expressway」だ。
「高速道路のプランニング」の43頁には、「英文字で表示する場合、「自動車道」の部分はEXPRESSWAY(標識ではEXPWYと略す。)とする。」と書いてある。
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