土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について~草町義和 @kusa_yoshi 氏の記事に支援
昨日発売の『鉄道ジャーナル』6月号、未成線連載は茨城の加波山鉄道・土浦ニューウェイ・常南電気鉄道谷田部線です。このうち常南電鉄は「新発見」な物件も取り上げました。 http://t.co/zpNKvzhi1M
— 草町義和 (@kusa_yoshi) 2015, 4月 22
こんなツイートを拝見したので、私の「土浦ニューウェイ」手持ちネタをご披露して草町氏への支援活動としておこう。
まあ、次の計画図を見たら大抵の人はおなか一杯で、あとは字ばかりなので、読む気が起きない方はスルーしてもらってよかですw。
ネタ元は「道路セミナー」1979年1月号「筑波研究学園都市の新交通について」 茨城県土木部都市計画課新交通推進室長 中川三郎氏執筆
草町氏は鉄道ジャーナルの記事で「道路特定財源」云々と書いておられたが、道路特定財源なので、道路業界誌には記事が出ているのである。
この記事を丸写しにしてしまうと資料を探す楽しみが減ってしまうかもしれないので、(打つのも面倒だし)ポイントだけ引用しておこう。
四 新交通システム導入の必要性 ※(一)~(二)は省略
(三) 新交通システムの必要性
以上のような状況をみるとき、研究学園都市だけでなく、常磐線や土浦市における交通サービスを向上させるためには公共輸送機関の整備が不可欠となる。しかし、バスによる対処は、
イ バスの増発により、土浦市内はもとより学園東大通りや土浦学園戦の道路混雑が誘発される。
ロ バス発着場等の専用用地の確保が困難である。
ハ 経営再三、労働力の確保などに問題がある。
ニ 新都市と常磐線間の所要時間が長い。
などの理由からむずかしいと思われる。このように考えてくると、線輸送だけでなく、効果的な面輸送による新しい公共輸送システムの導入が必要となる。
「道路セミナー」1979年1月号「筑波研究学園都市の新交通について」から引用
ということで筑波研究学園都市の発展に伴い、土浦市(常磐線)との間の交通需要がバス交通では捌ききれないことを述べている。
なお、この元記事は全て「常盤線」となっており、引用者が「常磐線」に改めているのでお断りしておく。
(四) 新交通システム導入のメリット
新交通システム導入は、単に交通需要の面からその必要性を満たすだけではなく、種々の点でメリットがある。
イ 茨城県全域でみても、研究学園都市と常磐線が固く結ばれることによって筑波大学附属病院をはじめとする多くの新都市内施設を広く県民が利用できる。
ロ 研究学園都市周辺の県民の立場でみると、新交通システムとバス交通網の一体的整備によって道路交通は大きく改善され良好な生活環境が保持できるとともに、良好な交通サービスを享受できる。
ハ 研究学園都市の人々にとっては、東京や水戸が近くなり、現在のような陸の孤島のイメージが一掃され、定住者の定着が予想される。
ニ 走行時の騒音レベルは、電気駆動のため、一般の自動車に比較してきわめて少なく、騒音問題の解決にもつながる。
ホ 自動車の排ガスの規制が厳しくなっているが、電気駆動はその心配がなく、安全でクリーンなモータリゼーションの一助となる。
「道路セミナー」1979年1月号「筑波研究学園都市の新交通について」から引用
ということで、新交通システムはいいことずくめのようだ。
五 新交通システムの計画概要
交通需要の予測の結果からもわかるとおり、新都市と常磐線沿線の都市を結ぶ交通需要が多く、また、新都市内のそれも非常に多いこと、新都市内の土地利用が南北に長く、中心部の商業業務施設を中心に南北に教育、研究機関、住宅地が配置されるパターンであることなどから、新交通システムの路線の基本的パターンの一つとして、図―4に示すT型ルートが考えられる。昭和53年度予算要求においては、このうち交通需要の比較的多いと思われる筑波大学の北側から花室地区を通り土浦駅に至る14.6キロメートルのL字型部分について予算要求を行った。事業採択されたのはこのうち筑波大学附属病院から花室バスセンターに至る1.5キロメートルの区間である。この地域は研究学園都市の中心市街地を形成する地域であり、昭和55、56年頃には商業機能や生活関連機能も活動をはじめることが見込まれ、公務員住宅や各種の年施設の昭和54年度末の概成と相まって都市としての活気がみなぎると思われる地域である。
「道路セミナー」1979年1月号「筑波研究学園都市の新交通について」から引用
「図―4」を再掲すると下記のとおりである。
「事業採択されたのはこのうち筑波大学附属病院から花室バスセンターに至る1.5キロメートルの区間である。」というのが気になる。これは南北の路線であり、つくば花室トンネルとは直接関係なさそうだ。「花室バスセンター」とは、つくばバスセンターのことだろうか?
http://sim.nilim.go.jp/Tsukuba/Div02.htm に当時の路線図の一部が残されており興味深い。
さて、ここに導入される新交通システムはどのような形態を構想していたのかが気になるところだ。
五 新交通システムの計画概要(続き)
この事業化区間に導入するシステムについては検討中であるが、筑波研究学園都市の交通の質・量からみて、従来の鉄道型のシステムは適当ではなく、新しいバス型の機種が望ましいと思われる。
バス型のシステムについては、実用化された機種はまだないが、筑波研究学園都市内にある建設省土木研究所構内で実験中のデュアル・モード・バスはこの型の機種として開発の熟度の高いものの一つである。デュアル・モード型のシステムは、専用軌道と一般道路上の二つの運行モードをもつ特性から、多面でしかも多様な交通需要をもつ筑波研究学園都市にふさわものと考えられる。
「道路セミナー」1979年1月号「筑波研究学園都市の新交通について」から引用
当時、建設省土木研究所構内で実験中のデュアル・モード・バスについては、リンク先の記事に詳しい。http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00037/359/359-118909.pdf
事業規模や採算性はどう考えられていたのだろうか?
五 新交通システムの計画概要(続き)
次に、事業化区間についての経営収支をみる。前提条件として、総事業費42億円(うちインフラ部26億円、インフラ外部16億円)、インフラ部に対し2/3の国庫補助、交通需要3,600人/日(ピーク時片側300人)、運賃120円、建設期間を昭和53年度より昭和55年度、等とすると、経営的収支は累積で18年目に黒字に転換し、資金附sp区は単年度で10年目、累積で15年目に解消する見通しである。
「道路セミナー」1979年1月号「筑波研究学園都市の新交通について」から引用
と順調そうに見えた(だからこそ一部区間ではあっても事業採択された)にもかかわらず未成に終わったのは何故だろうか?
なお、この報文中、つくば科学万博については一切触れられていない。まだ開催は決定されていない時期である。
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「高速道路と自動車」1984年2月号「日本と欧米の新交通システム」建設省土木研究所道路部新交通研究室主任研究員 杉山保利氏執筆 には、下記の一覧表が掲載されている。こちらではデュアル・モード・バスではなくガイドウェイ方式の新交通システムとして記載されている。
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茨城県議会の議事録には下記のような発言が記録されている。
◯48番(足立寛作君)
かつて,昭和50年代の初めでありますけれども,土浦,つくば両都市間を結ぶ新交通システムの整備が急浮上したことがあります。それは,国補事業によって,茨城県南広域都市交通システム調査が行われ,土浦とつくば両都市間約15キロメートルの第1期事業といたしまして,花室バスセンターから筑波大学附属病院間約1.5キロメートルをデュアルモードバスで結ぼうとするものでありました。事業費も42億円ついていたわけでありますけれども,計画どおりの人口及び乗客数が見込めない,経営収支上も難があるといたしまして,昭和57年に事業休止となり,今日に至っております。
筑波大学附属病院から花室バスセンターの間だけ事業化されたが、昭和57年に事業休止となったと述べられている。では、いわゆる土浦ニューウェイやつくば花室トンネルは少なくとも新交通システム関係では事業化されていないということだ。
そういう意味ではwikipediaの「新交通システム未成線・筑波研究学園線(仮称)の転用道路。」という言い方は乱暴な気がする。事業化されていないものを転用しようがないのだ。「導入空間を活用した」ということはありうるだろうが。
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つくば万博関連でいけば、常磐道の万博用仮出口について書いた記事もあわせてご覧いただければ。。。
http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-b72e.html
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土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その2)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その3)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その4)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その5)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その6)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その7)
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