東京湾横断道路併用モノレール(未成線) 新横浜~アクアライン~かずさアカデミアパーク
[ベイスターズ応援ほっこりブログ]のはずが、[未成モノレール・新交通システムブログ]になってしまっている今日この頃ですが皆さんどんなもんでしょうか?
狙っているわけでもないのに、ネタが向うから飛び込んでくる感じです。
で、土浦ニューウェイを調べていたらたまたまヒットしたのがこれ。「東京湾横断道路併用モノレール」
東京湾アクアラインの通行料金が高くて交通量が少ない時に「軌道系交通を作れ」みたいな声が結構あったものだが、日本モノレール協会が真面目に考えていたよ。
日本モノレール協会の会誌「モノレール」1983年3月号「東京湾横断道路と併用モノレール」渡部与四郎(筑波大学教授・東京湾横断道路併用モノレール検討委員会委員長)著76~77頁から引用
そもそもこの構想の発端はなにか?
1 はじめに
現在,東京湾横断道路計画があり,日本道路公団によって調査がなされております。第9次道路整備五箇年計画をふまえて,当該計画も相当急速に固まりつつあります。この調査の中で,この横断道路に自動車だけでなく高速軌道交通機関併設の必要性が検討されてきたわけです。その一つの考え方として,将来の開発に伴う総合的な交通事情から考えてみて,モノレールが最適ではないかと言われてきております。そういうことで,今回,日本モノレール協会が,東京湾横断道路にモノレールを併設する場合について計画を自主的に検討することになったわけであります。
(中略)
東京湾横断道路にモノレールを併用したらどうかというアイディアは,最近の省エネルギーの要請の中で,交通騒音等の障害も少なく,大衆的な交通機関であって短時間でアクセスできるという形のものが大東京圏のこれからのあるべき再編成に寄与するのではないかということから始まったわけです。検討にあたっては,基本となる横断道路計画の道路構造との関係から跨座型モノレールの採用を仮定しており,まず需要予測を推定し,建設費を算定し,収支を検討するといった検討過程を通っているわけです。
(後略)
「モノレール」1983年3月号「東京湾横断道路と併用モノレール」72頁から引用
ということで、建設省や日本道路公団(いずれも当時)が検討していたわけではなく、モノレール協会が自主的に検討していた青写真ということか。もっとも検討メンバーは「学識経験者および企業の専門技術者をあわせた14名の委員と6名の作業班で構成されて」いたということなのであながち荒唐無稽なものではないようだ。
3 東京湾横断道路併用モノレール計画の検討
●目的
これは先程も申上げましたように跨座型モノレールについて、併設の可能性を事業,建設収支面で明らかにすることによって都市モノレールの設置をなんとか実現し,もって,大東京圏の交通の便益に寄与しようというものであります。
● 基本的考え方と路線計画
東京湾横断道路の関連地域ではいろいろな将来計画が立てられております。たとえば,港北ニュータウンから上総ニュータウンまで,数多くあるわけです。そういうことを念頭において土地利用を想定し,それによって交通ルートを考え,最適路線を選定し,結果として利用者数,運転計画,収支計画の段階に行こうというわけです。
このモノレール計画路線は,大雑把に言えば,新横浜駅に始まって川崎駅前を通り東京湾に出,羽田新空港へのブランチを考えながら東京湾横断道路15kmに載り,木更津側に上陸するわけです。木更津側については,内房線が走っていますので,その交差する所に新駅を造ることになると思いますが,その先は非常にフレキシブルな(弾力性ある)話でありまして,上総研究学園都市の構想による町づくりも考えられておりますので,この辺は相当に変化すると考え,その中心部と目される所まで交通サービスしようということであります。もちろん,これでやめるわけではなく,やがてはもっと延伸する可能性を持っています。図2に示しましたように,新横浜駅と川崎駅間約9km川崎駅から東京湾横断までは約10.5km,羽田新空港ブランチ5km東京湾横断道路が約15km,木更津側に上陸してから約7km,合計46.5kmのルートを考えたわけです。主要駅は7駅,中間駅は23駅,駅間距離は平均1kmと考えています。
「モノレール」1983年3月号「東京湾横断道路と併用モノレール」75~78頁から引用
● 沿線の現況と将来
このモノレール路線の沿線は,前にも述べたとおり膨大な人口を擁する首都圏の一環にある横浜,川崎の地域,および将来が期待される房総半島の南部といったそれぞれに特徴をもった所であります。新横浜駅は現在は「こだま」だけ停まるわけですが,「ひかり」も停車させたいとの運動が起っており,駅周辺は将来は商業流通業務機能を持たせようと期待されている地域です。
それから川崎の駅西地区は,首都機能を分散配置させるべき核都市の候補地の一つとなっている所で,特に,技術的な研究開発,中枢業務機能を集中させ,わが国の代表的産業研究のインフォメーション・センター的な地域にするという構想がある所です。また,川崎臨海部は,流通業務機能を充実させたいとしております。
羽田沖には新空港の建設が予定されていますし,今の空港の跡地も開発して有効に使おうということです。
木更津の臨港部については,卸売物流業務機能を入れ,いわゆる核都市に準ずる形でこれを育成しようとしています。木更津の内陸部については,先程も触れましたように,上総研究学園都市の構想を県で立てておりますので,それを受けて技術,情報,文化機能を新たに入れると,実質人口10万人位は定着するであろうと想定しています。
「モノレール」1983年3月号「東京湾横断道路と併用モノレール」78頁から引用
「上総研究学園都市」は、現在でいうところの「かずさアカデミアパーク」のこと。なかなか想定通りの開発とはいっていないようだが、モノレールが来ていれば結果も違ったかも?(共倒れしている可能性もあるが。。。)
現在の「かずさアカデミアパーク」の位置はこちら。モノレールの計画路線と見比べてほしい。
● モノレールの利用者推計
(前略)
1日の利用者数は,昭和65年には21万8千人,75年には37万3,300人という数字になりました。全区間にわたるピーク時1時間最大交通量では,65年に1万700人,75年に1万7700人です。それでは横断道を渡る同様の交通量はどうかというと,65年には3,700人,75年には9,000人と予想されているわけです。
「モノレール」1983年3月号「東京湾横断道路と併用モノレール」78頁から引用
この想定が多いのか少ないのか判断する物差しを持たないので分からないのだが、「アクアライン高速バスの利用実態に関する研究」http://www.trpt.cst.nihon-u.ac.jp/PUBTRPLAN/member/graduate/outline/2009%20B4/D-1.pdf によると「アクアライン高速バス乗客数は、開業した平成9年度の約 35 万人から平成 20 年度の約 400 万人にまで乗客数が伸びている」ということなので、1日約1万人以上が横断道路を渡っているということであれば需要予測はそれなりにいいところにいっているということかもしれない。
● 施設計画,実施方式
路線延長は46.5km,最少曲線半径100~50m,最急勾配4.5%~6%,軌道桁はPCを使い,その断面は850×1,500×20,000という形を考えております。しちゅはT型RC支柱で,橋梁部は箱桁でガードを張ります(図3~4参照)。車輌は,大型2軸ボギー跨座型殿堂車両6編成を考えています。信号保安設備は,複線自動固定閉塞方式とし,その他変電設備,車輌基地を設けるということになるわけです。
運転計画は,表定速度は30~60km/h,ピーク時運転間隔は8~10分,乗車効率は155~177%,総車輌数114~168両位と考えております。
(後略)
「モノレール」1983年3月号「東京湾横断道路と併用モノレール」78頁から引用
この後、事業費の説明等があるが個人的にあまり関心がないので省略させていただくが、この段階での試算では、最大に見積もっても単年度黒字転換は7年,累積で10年ということで、一般的なモノレールの場合はそれぞれ7年,15年が相場なので「おおよそ合格」ということだったようだ。
(追記)
東京湾を横断する道路・鉄道の過去の計画については、下記も参照されたし。
産業計画会議第7次勧告「東京湾2億坪の埋め立てについての勧告」 いわゆる「ネオ・トウキョウプラン」
http://criepi.denken.or.jp/intro/matsunaga/recom/recom_07.pdf
産業計画会議第12次勧告「東京湾の横断堤を~高潮と交通の解決策として~」
http://criepi.denken.or.jp/intro/matsunaga/recom/recom_12.pdf
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コメント
内房線への直通運転が出来ないと意味がない。モノレールより普通鉄道の方が妥当だと思う
投稿: | 2017年3月 7日 (火) 06時47分
モノレール協会が作った案ですからそれはモノレールになりますね。仕方ないんじゃないでしょうか。
投稿: 革洋同 | 2017年3月16日 (木) 00時29分