土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その4)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について~草町義和 @kusa_yoshi 氏の記事に支援
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その2)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その3)
と、土浦には一生で一度しか行っていないにもかかわらず、土浦の記事を集中的に書いてきたところである。
すると、参考にさせていただいたブログ「研究学園の生活」さんが、実際に現地で空地となっている導入空間について大変素晴らしいレポートをしていただいた。
そこで、返礼に、もういっちょ書いてみる。
土浦ニューウェイは、この悩ましい線形やバス停の長さから、ネット上では、「新交通システムとして作ったものを道路に転用した」とか「将来新交通システムに転用できるように作った」等と書かれている。
しかしながら、上記記事において「新交通システムは、土浦ニューウェイ以外の箇所で一部事業化されたものの、採算性の問題から当該区間については新交通システムとしては事業化されていない」ことを明らかにしてきたところである。
だが「将来は転用できるようにした」かどうかは分からなかった。ところが奥さん、いい報文が見つかったんですよ。じゃーん。
日本交通計画協会機関誌の「都市と交通」1985年6号に「土浦高架街路」茨城県土木部都市施設課長 田沢 大・著が!
この横断図だけでも燃えますわな。
例によって、字面ばかり長いので、結論だけ先に出します。ででーん。
さて、新交通システムが採算性の問題から断念されたのに、土浦ニューウェイは何故に作られたのだろうか?
2.事業の目的・必要性
都市計画道路・土浦東学園線は、県南の拠点都市土浦と国際的都市である筑波研究学園都市とを結ぶ幹線道路である。両都市を連結し、土浦市の新しい都市づくりの根幹となる土浦高架街路事業は、地方中核都市における全国初の試みとしても、注目されている。
(1) 中心市街地の交通混雑解消と商業の活性化
現在、土浦市においては、国鉄土浦駅周辺市街地域の道路交通混雑が著しいため、公共交通機関であるバスの機能低下が大きな問題となっており、良好な都市空間の確保と安全で快適な道路網の整備を図るため、土浦駅東口駅前広場整備、土浦駅西口駅前地区再開発等の都市開発事業が進められている。これらの整備計画とあわせて、土浦駅東学園線の一部を高架構造とすることにより、一般平面街路への通過交通の削減や、バスのサービスレベルの向上を図り、あわせて中心市街地における産業活動の活性化を図るものである。
(2) 中心市街地の交通混雑解消と商業の活性化
筑波研究学園都市は、首都圏における学術機能を中心とした都市開発区域として位置づけられており、県南地方の業務核都市である土浦市と、相互に機能を補完しながら発展していくことが期待されている。全国的な輸送網と筑波研究学園都市を結び、また、土浦市と緊密かつ迅速な連絡を図るうえからも、特急の停車駅となっている国鉄土浦駅と、筑波研究学園都市間を結ぶ交通軸の強化が不可欠である。
3.土浦高架街路事業の概要
本事業は、土浦・阿見都市計画道路3・2・30土浦駅東・学園線の土浦駅東口から桜川に架かる学園大橋までの延長約3㎞区間を整備するものである。当街路は、複断面形式の道路で、標準横断面構成は、平面街路部2~4車線、高架部2車線で、延長L=2,739.5mあり、途中3ケ処にバスストップを設置している。
4.都市景観
土浦高架街路は、土浦市の中心市街地に建設されるため、都市の環境や景観を配慮し、とくに高架構造物については、美観を重視して計画されている。
下部工においては、スマートなバチ形の橋脚を主標準横断図体として、その橋脚の大きさを均一化すると共に、断面を極力縮少するため、PC橋梁は、反力分散方式のゴム支承を採用している。
上部工においては、桁の支間長L=25m~31mの3径間連続PCホロースラブ桁及び4径間連続PCホロースラブ桁を主体とし、主桁形状は、圧迫感のないソフトな軽快さを出すため、下床版巾をしぼった逆台形とし、下部工のバチ形状と一体観を出すため、曲線ハンチをつけている。
特徴のある外観から「これは新交通システムの遺構に間違いない」と思われがちなのだが、実はなんてこたあなあい美観重視のデザインだっただけのようである。
ところが、ここからが本筋なのだが、「道路だけど、実は新交通システムにも転用できるんだもんね」と書いてあるのだ。
せっかくなので画像で紹介したい。「ソースを見せろ」とか串カツ屋みたいなことを言う御仁もいる世界だし。
6.新しい都市交通
(1)現状と課題(略)
(2)新しい交通システムの導入可能性調査
土浦高架街路は、平面部及び高架部ともに道路として共用(※供用の誤植か?)される。現時点では、基盤整備の状況や人口の集積度などから、需要、採算性の面から新しい交通システムなどの導入は困難であるが、将来、地域の需要動向に応じ、この土浦高架街路の高架部を新しい交通システムヘと順次切換えていく計画も考えられる。土浦高架街路の高架部は、道路橋仕様に基づき設計されているが、将来の新交通システム導入への構造的な可能性についても、検討をしている。
新交通システムの設計条件及び設計仕様は、「新交通システムの標準化とその基本仕様(日本交通計画協会、昭和58年3月)」を中心に、神戸のポートライナー、横浜のシーサイドラインの計画を参考に種々検討している。
新しい交通システムに切換える場合の荷重条件は、(表-3)のように定め、土浦高架街路の高架部にこれを載荷した場合、部材断面力等の過不足について検討した。
上部工について、許容応力度の扱いは、TL-20荷重と新交通荷重で設計した場合と同様であるので、断面力について比較検討を行った。
また、下部工については、上部工の死荷重反力がTL-20荷重で設計した場合が大となったため、新しい交通の計画時に必要となるであろう柱断面の破壊安全度の照査を行った。この結果、上部工及び下部工とも、許容値内であるので、将来の新交通へと切換えても、構造力学的には対応できるものと考えられる。
土浦の新しい交通システムの平面線形については、横浜の新交通システムを参考にして、道路線形との比較検討をしたが、緩和曲線のとり方や設計速度を調節することにより、新交通中心線を土浦高架橋中心線と同一にすることが可能であり、問題ないと考えられる。
これらにより、土浦高架街路の高架部については、本計画どおち(※どおりの誤植か?)実施しても、将来の新しい交通システムに対応出来るものと考えられるが、尚、新交通システムの基準は、現時点では統一されたものがないうえ、将来、もし土浦高架街路を新しい交通システムのインフラ部として使用する時点では、現行の基準が大きく改訂されている可能性があるなど、不確定要素が多いと思われる。
おもしれー。「ぼくのかんがえたしんこうつうしすてむにもてんようできるかっこいいどうろ」みたいなことを本当にやっちゃってるんだ。
あの中途半端に長いバス停は、4両編成の新交通システム用だったのだ。
しかし、この報文には、「科学万博」については、一言も触れられていない。
長くなったので、その辺を次にご案内しよう。
ところで、ニューウェイの施工中の写真等も載っているので、この報文は是非とも現物にお目通しくだされ。
http://www.jtpa.or.jp/contents/pdf/toshi06.pdf
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土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その2)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その3)
土浦ニューウェイ(筑波研究学園都市新交通システム)について(その4)
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