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2016年3月に作成された記事

2016年3月24日 (木)

国道昇格はどのようにして決められるのか?~「ふしぎな国道(佐藤健太郎著)」の不思議(その5)

 前の記事で1970(昭和45)年の国道昇格について紹介し、更に内閣法制局で審議した資料を読めばその考え方が分かる旨書いたが、何分読みづらいし、分量も多い。
 そこで道路業界誌から、その考え方を説明した記事を紹介したい。
 
 引用元は「道路セミナー」1969年12月号46~49頁である。引用にしてはちょっと長いがお許し下され。

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八ちゃんの勉強記(1)

<国道昇格の巻>

(筆記者) 愛野寿三

(略)

先生 (略)建設省は、十一月十四日(引用者注:昭和44年)に七一路線、延長五、八〇〇キロの国道昇格を発表したんだよ。そのことは新聞に出ていたからよく知っているだろう。

ハチ それくらいは知っていますよ。しかし、詳しくは知らないので、素人にもわかるようにひとつ教えてくださいよ。

先生 国道といえば、東名高連、名神高速とか高速道路も国道のうちだが、普通、国道というときは、「一般国道」のことをいうがね。この一般国道は昭和四十二年度末で全国に延長二万七、五〇〇キロメートルあるんだが、建設省は昭和六十年には、これを六万キロまで伸す計画なんだ。この六万キロには、東名、名神などの高速自動車国道計画の七、六〇〇キロメートルも含めての話だから、一般国道は差引き五万二、六〇〇キロメートルの計画というわけだ。

ハチ 昭和六十年というと一五年先だナ。えらく先まで考えるもんだね。というと、一般国道は、だいたい今の二倍にする計画ということになるナ。それだけの分を国道に昇格させる計画というわけだね。

 だけど、だいたい昭和六十年で国道六万キロで大丈夫ですかね。一五年先の六万キロはどうしてきめたんです?

先生 昭和六十年のことは、今でも道路整備は遅れているのに、一五年先を考える計画は大丈夫かという皮肉かね。昭和六十年頃には自動車保有台数がピークになると想定されているのも一つの理由だが、まあいいや。これはね、むつかしくいうとまず「昭和六十年における社会経済水準にふさわしい幹線道路網体系」を考えたわけだ。これは人間の血管にたとえると大動脈、動脈に当たるというわけだ。

 この幹線道路網体系は、いろいろ計算の結果想定すると日本国土全体において四十万四、六〇〇キロになるんだ。まあ大動脈、動脈は四十万キロメートルと覚えておくんだね。地球から月までの距離が約三十八万キロだから、相当の距離だということがわかるだろう。

 この幹線道路が四十万キロのうち、国道として、国が責任をもって整備すべきものをヨーロッパ諸国の例を参考にして六万キロメートルとしたんだよ。

ハチ ヨーロッパの何を見習うんですかね。

先生 先進ヨーロッパ諸国の幹線道路のうち、国道の占める割合をみると、イギリス、西ドイツ、フランス等は現在約一五%が国道なんだ。我国もこれにならって幹線道路四〇万キロの一五%とすれば六万キロが国道として整備するということになるんだよ。

ハチ というと昭和六十年になって現在のヨーロッパ並みになるというのかね。面白くネエが、外国に負けない立派な道路をつくってくれりゃ我慢しよう。頼みますよ。

 ところで、こんど国道へ昇格した五、八〇〇キロとはどういう関係ですかね。

先生 これは昭和六十年度に国道六万キロとなるには、まえに国道昇格した昭和三十七年以来こんどの昭和四十四年迄には、少くともGNPの伸びに応じた分だけは、つまり約六千キロメートルは国道昇格と……。

ハチ 一寸一寸まった、英語を使わずに話してくださいよ。なんですかそのGNPとは……。

先生 あっ、すまん、すまん。GNPとは国民総生産という略語で、この伸びが、いわば国全体の経済の伸び、ひいては国の発展状況の目安となるものだよ。だから六千キロメートルというのは、昭和三十七年から四十四年迄の七年間の国力の伸びに応じた分に当るわけだ。

 だから、建設省は今回六千キロを強硬に主張し、大蔵省と折衡の結果、大臣折衝まで行なわれ、ほぼ主張通りの総枠五、八〇〇キロメートルときめられたものだよ。

ハチ というとこれまでの七年間に経済成長した分だけを、後から追いかけてゆく国道昇格というようにきこえますな。これだといつも後手、後手ということになりませんかね。心配ですナー。(略)

(略)

先生(略)こんどの昇格要望は実に百八十九路線延長一万四、二三三キロあったんだよ。

ハチ じゃあ国道がどんどん増えるのは、建設省の責任範囲が増えることにもなるが、その地域の人々は喜ばれることになるんですね。

 こんど国道昇格は七年振りとさきほどきいたが、遠慮せすに毎年ドンドンやればいいじゃないか。

先生 すぐ調子にのるんじゃないよ。記録をみると、昭和二七年に道路法が制定以来一七年になるが、これまで国道昇格は三回しか行なわれていない。こんどで四回目だよ。そうすると平均四年に一回の割、まあオリムピックみたいなものかな。

 建設省も昭和六十年迄に国道六万キロ整備という目標を掲げているから、こんごはどんどん昇格したいが、その裏付けを国民全体で考えて……。

ハチ 建設白書の高福祉高負担だナ。まあ国民の負担はできるだけ軽くしてもらいたいナ。ところで、こんどの昇格五、八〇○キロは昇格要望の約三分の一に当るが、ウラミっこなしで全国一率に電子計算機かなんかでハジキ出すんですかね。

 それとも陳情の強い順とか……。

先生 君は役所の仕事を知らなすぎるよ。物事をきめるのには必ず法律に基づく基準があるんだよ。こんどの国道昇格は、むつかしくいえば道路法第五条の国道の資格要件に該当するものから選定されるんだよ。まずこの道路法第五条をみてみ給え……。

ハチ あー成る程、国道の資格が書いてあるですな……。「高速自動車国道とあわせて全国的な幹線道路網を形成し」ていて、しかも「県庁所在地と重要都市を連絡する道路」「重要都市、人口十万以上の市と重要国道を連絡する道路」「二以上の市を連絡……」「特定重要港湾、重要な飛行場、国際観光上重要な地……」「国土の総合的な開発……」……。

 こう読んでみると、全国的な道路網とそれを結ぶ重要な都市、港湾などとの関係を重要視しているんですね。そうすると全国からの要望路線を一本一本審査することになるんですね。前言全面取り消させて頂きます。

先生 だんだんわかってきたな。しかし、法律の要件だけでは選定の基準が大まかすぎるので、この法の精神にのっとり、更に詳しい基準があるんだよ。ハチ公ならどんな基準を考えるかね。

ハチ えーと、国道はかた寄ってはいけないので国全体の平均しなければならんと思うね。だからまず全国平均の網の目は必要だね。だけど、まてよ、全国平均の道路網といっても、面積の割に人口の多いとこと、少いところを同じじゃ不公平だナ。それから自動車が多いところは道路が必要だね。だけど、人口も多い自動車も多いところも道路が必要だね。そうすると全国平均の網の目が片寄ってしまうし……。

 いやまてよ、今は人口も自動車も少ないけど、将来の高速道路ができ自動車が急激に増えることが予想されるのも考えねばならんね。今は資源が眠っていて人口も減っていっているが、資源闘発に必要な道路もある……。 だんだんむつかしくなってきたな。

先生 だいたい議論のポイントは外れていないよ。だんだんわかってきたようだね。建設省は、国道昇格基準として「網価」、「路線価」という考えをとり入れてきたんだよ。

 この「網価」というのは、人口と面積と国道延長との関係を指数化したもので、この数字が大きいということは人口、面積の割にこれまでの国道網があらかったこと―つまり国道が少なかったということだね。

 従って網価が大きいものから優先ということになるんだね。

 「路線価」というのは、予定路線の沿線の人口、農工業生産額、交通量を数字で表わしたもので、その道路の利用価値だね。この路線価が大きいものから優先ということだね。

ハチ わしの考えも満更悪くはないんですね。ひらたくいうと全国平均の道路網、北海道も東北地方も四国も九州も平均した道路網が必要だというのは、「網価」の大きいもがとり入れればいいな。これは一つの過疎対策ともいえるな。「路線価」は人口や自動車の多い過密地域むけだナ。「路線価」だの「網価」というからややこしいがまあわしらの常識と同じだナ。だけど、「路線価」や「網価」が数字としていくら低くても、将来の資源開発とがは必要なのはどうするのかね。

 こんなのは国道にするのが国が当然とるべき政策と思うがね。

先生 鋭く切りこんできたね。ハチ公の出来が予想以上にいいそ。その調子その調子……。

 まあ、こんどの国道昇格は、要望路線の路線価が三〇〇以上、網価が五万以上のものを一応の合格点とするが、たとえ路線価、網価が低くとも、重要な飛行場とか観光地とか、資源の闘発に特に必要なものとか、将来の交通需要の著しい増大が明らかに予想されるものは、君のいうように当然とり入れて昇格させたんだよ。

(略)

ハチ (略)ところで、いつから正式に昇格が決るんですかね。

先生 建設省の原案が発表されたが、これから、建設大臣から道路審議会に諮問され、その答申をえて、各省との折衝をえて「政令」として内閣として正式決定になると思う。十一月下旬には正式決定をみるものと思っているよ。しかし、これが実際に施行され効力が発生するのは新年度の昭和四十五年四月一日からだよ。

(引用終わり)

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 上記の考え方が、前回の記事で紹介した国立公文書館デジタルアーカイブにて公開されている政令制定に係る資料にも実際に出てくるのだ。

http://jpimg.digital.archives.go.jp/pdf/H1530a01110000/091504425635.pdf

 例えば、「先生」が国道昇格の細目の基準として紹介している「網価」「路線価」の実際の数値が上記PDFの103枚目以降に網羅されている。(ただし、記事では「網価」「路線価」となっているが、PDFでは「網値」「路線値」となっている。)

 また、127枚目には「昭和44年における一般国道の昇格の延長枠」

 128枚目には「一般国道への昇格選定基準」といった興味深い項目が踊る。

国道昇格の基準 (1)

国道昇格の基準 (2)

国道昇格の基準 (3)

国道昇格の基準 (4)

国道昇格の基準 (5)

国道昇格の基準 (6)

 また、134枚目には「国道昇格について 道路局」というコンパクトにまとまったペーパーもある。

国道昇格の基準 (7)

国道昇格の基準 (8)

 「国道昇格路線をどうやって選定するか」を本当に知りたい方は、佐藤健太郎氏の本なんかに金を払うよりは無料で上記のPDFを読んだ方が絶対役に立つこと間違いなし。

 

※都道府県道の路線認定基準は、道路行政セミナーに、古い規定の解説が掲載されている。

・都道府県道の路線認定基準について(その1)

http://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/1992_data/seminar9211.pdf

・都道府県道の路線認定基準について(その2)

http://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/1992_data/seminar9212.pdf

・都道府県道の路線認定基準について(その3)

http://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/1992_data/seminar9302.pdf

・都道府県道の路線認定基準について(その4)

http://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/1992_data/seminar9303.pdf

・都道府県道の路線認定基準について(その5)

http://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/1993_data/seminar9304.pdf

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佐藤健太郎氏は「ふしぎな国道」のなかで、

「国道458号自体、国道が通っていない山形県の自治体の請願によって指定された道といわれ、国道としての必然性に欠ける面は否めない」(29頁)

「このように、国道はあちこちでぽつぽつと五月雨式に指定されるのではなく、10年に一度くらいのペースで、全国でまとめて一気に昇格する。国道指定は政令などの改正を必要とするため、まとめて決めてしまわないと効率が悪いのだ。」(103~105頁」

 といった浅薄な書き方をしているが、上記の先生とハチ公の会話を見ているとそんなに世の中単純なものではないということが分かるだろう。

 そして、1992(平成4)年の国道昇格でここにいう国道の目標約6万キロは達成されているのである。このことは以後国道昇格が行われていない事と大いに関係しているのである。これはおって紹介したい。

 「先生」に言わせれば「佐藤健太郎は役所の仕事を知らなすぎるよ」ということか。ハチ公のように「サトケンの出来が予想以上にいいぞ。」と言われる日は果たしてくるのだろうか??

 

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国道272号から300号は欠番になるはずだった?

 一般国道の路線を指定する政令の欠番といえば、

旧・一級国道の1号~57号+沖縄県復帰に係る58号

旧・二級国道の101号~271号

の間の「59号~100号」が代表的なものである。(路線延伸に係る再編や一級への昇格等に伴う欠番は除く)

 

 そして、その後の国道の追加指定にあたっては、272号以降の番号が割り振られているところである。

 ※一般国道の路線を指定する政令
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40SE058.html
 参照のこと

 ところが、1970(昭和45)年4月1日施行の国道昇格にあたっては、当初は「272号~300号」についても欠番とし、現在の272号を301号として路線番号を割り振ろうとしていたようだ。

一般国道の路線指定の経緯

※道路行政セミナー1992年4月号「一般国道の路線を指定する政令の一部を改正する政令について」から引用のうえ赤線を加筆

http://www.hido.or.jp/14gyousei_backnumber/1992_data/seminar9204.pdf

 国立公文書館デジタルアーカイブに残された内閣法制局の「昭和44年1級国道の路線を指定する政令一部改正案(※本来「一般国道の路線を指定する政令の一部を改正する政令」とすべきところを誤って「1級国道の路線を指定する政令の一部を改正する政令」とされている)」の法案審議資料

http://jpimg.digital.archives.go.jp/pdf/H1530a01110000/091504425635.pdf

によると、政令審査の当初段階(PDFの116頁目)では

国道の欠番

と、現在の272号~275号が301号~304号となっている

 その前には「別表271号の項の次に次の58項を加える」との一文がある。

 これは、法令の改正の仕方として説明するならば、「1960年改正以前の別表(国道の一覧表)が1号から271号まであったところ、その次に(272号から300号を欠番として)301号から358号までの58本の新規国道路線を追加する。」ということである。

 最終番号の358号は、現在の328号に該当する。

 それが、どのような理由かは明確ではないが、最終的に政令として交付される際には、272号から300号までの欠番を作ることなく、番号を前倒しにされたのである。

PDFの91頁目→修正作業中のもの。路線番号が上書きにより修正されている。)

国道の欠番2

 

PDFの13頁目→最終的な政令案)

国道の欠番3

 

 一級国道、二級国道の次に追加された国道は「三級国道」的なものとして考えていたのか、それとも追加する都度、キリのいい番号からつけていこうとしたのかは、この資料では分からない。

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 なお、この資料には

国道昇格候補路線

のように、「国道に昇格する路線が道路法第5条第1項の何号に該当するのか」といった詳細な資料が記載されており、国道昇格のいろいろな考え方が分かるようになっている。というか当時の建設省の法令担当者が政令改正にあたって内閣法制局の担当者に説明した資料が公開されているのである。

 

 佐藤健太郎氏が「ふしぎな国道」で、「本当にきっちりこの規定を満たしているのかわからない道もいくつか見られる。このあたり、役所のやることはきめが細かいのか粗いのか、どうもよくわからない。」と書いているが(94~95頁参照)、そんなことはなくて、まあ佐藤健太郎氏の取材のレベルが「きめが細かいのか粗いのか、どうもよくわからない。」ということも分かるわけである。

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