バスタ新宿は国道20号そのもの?~立体道路制度の活用~
バスタ新宿が4月4日に開業する。
ところで、バスタ新宿の記者発表は国土交通省東京国道事務所が行っており、そのタイトルには国道20号の「おにぎり」が付けられている。
バスタ新宿は、国道20号(甲州街道)から分岐しているから?そうではなく、バスタ新宿自体が国道20号なのである。(多分。当日官報告示されたら確認するので確定はちょい待ち。)
→オープン当日の官報で確認したら間違いなし!
→https://kanpou.npb.go.jp/20160404/20160404h06748/20160404h067480008f.html
バスタ新宿は「立体道路制度」を活用しているのだ。
立体道路制度とは、ざくっというと、道路法の「道路内私権制限」と建築基準法の「道路内建築制限」を規制緩和して道路と建物を共存させる制度だ。
詳しくは、国交省のサイトへ→http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/ppp/kenkyu/pdf04/6.pdf
立体道路第一号で有名なやつが阪神高速の梅田出口ランプだ。
(詳しくは→http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-2128.html)
バスタ新宿は、立体道路制度を利用して、JRの線路の上のうち進入路とバスターミナル等がある3階、4階だけを道路法の道路としたもの。そのため、道路財源を活用した旧建設省系の東京国道事務所の事業となっている。バスだからといって旧運輸省系の事業ではないのだ。
https://www.hido.or.jp/study/files/pdf/application_02.pdf から引用。赤線は引用者が追記。
東京国道事務所の記者発表資料から引用すると、下記【立面図】の赤線部分が「立体的な道路区域=国道20号そのもの」となるのだろう。(東京国道事務所で関係図面を閲覧して来れば確定できるが、趣味で本職の方の手を煩わせるのは本意ではないのでそこまではやる気なし。)
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ところで、立体道路を活用したバスターミナルというと、大阪の湊町にあるOCATが印象的だ。
ビルに入る直前にETCアンテナのガントリーがあるあたりが高速道路感が溢れていて猶更よいものとなっている。
下図のハッチの部分が道路(阪神高速道路)区域となる。
(財)道路空間高度化機構の「立体道路事例集」42頁から引用(御覧になりたい方は日比谷図書館で閲覧できますので是非。)
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また、立体道路制度を活用した駅と道路の交通結節点ということであれば、JR小倉駅と北九州モノレールの関係も素敵だ。
以前の記事でも書いたが、都市モノレールのインフラ部分(橋脚等)は、道路法上の道路なので、JR小倉駅の中に「モノレール=道路区域」が設定されている。
(財)道路空間高度化機構の「立体道路事例集」115頁から引用
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立体道路からは離れるが、渋谷の幻のバスターミナルということで「東急プラザは東急ターンパイクのバスターミナルになるはずだった」という記事を書いたこともある。
「汎交通」1958年5月号「渋谷周辺の交通事情と東急の計画」(馬淵寅雄 東急電鉄常務取締役・著)から引用
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バスタ新宿関係の記事では、以前「【暗渠】玉川上水と新宿駅南口地区の開発について(その1)」という記事を書いた。
バスタ新宿下には、もともと玉川上水が走っており、今回の工事に先立ち、移設しているのだ。
上図は、「日本鉄道施設協会誌」2008年1月号「新宿駅南口地区基盤整備事業に伴う玉川上水用地処理」森重達美、佐藤英明、柴田勇・共著(いずれもJR東日本東京工事事務所契約用地課)から引用のうえ加筆したもの。
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また、バスタ新宿の下には、上越新幹線新宿駅ができるはずだった。(高島屋タイムズスクエアの下にあらず。)
その辺は「上越新幹線新宿駅(地下3階)構想を図面で現認する (玉川上水と新宿駅南口地区の開発について・超番外編その3)」や「上越新幹線新宿駅は実際のところどうなっているのか? (玉川上水と新宿駅南口地区の開発について・超番外編その7)」あたりを見ていただければ幸いである。
バスタ新宿の工事に伴い、上越新幹線新宿駅がどのように考慮されていたかが気になる方もいらっしゃるだろうが、筆者の考えは消極的で「今回の工事で新幹線駅はもう作れなくなったのではないか」というところである。
「新宿駅貨物敷活用基本構想」から引用のうえ赤線を加筆したもの
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ところで新幹線新宿駅といえば、往時の国鉄の「大新宿駅構想」であるが、「交通技術」1975年4月号「新宿副都心総合整備計画の概要」にバスタ新宿とJR新宿ミライナタワーのような絵面が見て取れる。
そういう意味では40年前からの構想がようやく実現したということか。
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