阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(4)梅田出口
佐藤 今度は西梅田のビルなんですが、今の道路法改正後認可されたんですか。
岡山 そうです。
木内 そこはJRのコンテナ用地ですか、引き込み線跡地の西梅田再開発の・・・。
岡山 となりです。
木内 その再開発に関連してランプを作り替えたんじゃなかったですかね。それに関連してそういう問題が出てきたんじゃないかなと思ったんですが。
岡山 そういうことです。あそこは福島区になります。ビルの前の道路で北区と福島区に分れているんです。西梅田の再開発地区というのは10.6haあります。今日現場を見ていただいたときに毎日新聞社ビルがかなり出来ておりましたが、そのとなりはもともとオートガススタンドがあったんです。オートガススタンドとか自動車の整備工場とか、住宅とか社長さんの家とかそういうものがガチャガチャとありまして、そこに阪神高速のランプを架けると。どうしても阪神高速の高架下に建物を入れないことには移転ができないという事情があり、高速道路の下に建物を入れて下さいという補償を行ったんですが、高速道路の下に建物を入れるなら上までやりたいという話になりまして、ああいうビルになったというのが経緯です。
あのビルはもともとランプで交通量が少ないということもあり、上にもってきても安全だろうということです。
佐藤 道路法がどのように改正されて、ビルを立てるのにどういう便益を得られるようになったかということをご説明して頂けますか。
福元 道路区域は上下全体をやっておりましたが、道路法の部分的な改正に伴い、47条の5なんですが、立体的に道路区域を設定できるということになりました。
佐藤 これは平成元年ですか。その道路法は、道路を立体的に造ってもいいということですが、基本的にビルの中を通ってもいいとか、上を通っていいとか、その辺の具体的なことはあるんですか。
福元 道路法で、四つの法律が一体的に改正されまして、道路法では道路の上下空間に建築物を一体的に整備するようにすると、これは道路法の改正です。道路の上下空間に建築物を一体的に整備することができる、これが一つ。それから都市計画法と都市再開発法ですね、こちらの方で道路整備と併せた良好な市街地形成を図るために地区計画及び再開発地区計画の拡充及び市街地再開発事業に関する措置、これが片一方。それから建築基準法の改正がございまして、道路と一体的に整備される建築物の道路内建築物の制限が立体道路制度でやられた四法の関係です。
佐藤 道路法、都市計画法と建築基準法ともう一法は・・・。
福元 道路法と、都市計画法と都市再開発法、それと建築基準法の、この四法が改正され、それによって道路区域を立体的に定めることができる。道路を立体的に定めると危ないことがございますね、上から物が落ちてくるとか。そういうことは道路保全立体区域ということで、窓はこうしなさいとか、それと道路一体建物に関する協定、道路管理者と建物所有者との間で協定を結ぶ。そういうことによって確保していく、こういうことです。
福元氏が道路法第47条の5と述べているようになっているが、実際には第47条の7である。
(道路の立体的区域の決定等)
第47条の7 道路管理者は、道路の存する地域の状況を勘案し、適正かつ合理的な土地利用の促進を図るため必要があると認めるときは、第18条第1項の規定により決定し又は変更する道路の区域を空間又は地下について上下の範囲を定めたもの(以下「立体的区域」という。)とすることができる。
http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/ppp/kenkyu/pdf04/6.pdf
佐藤 では、この西梅田は具体的にどういう経過を経たのでしよう、阪神高速道路の下を使ったらどうですかという阪神高速道路公団の申し出に対して、下だけでなく上も使うよということで、ああいうビルになったということですかね。
岡山 そうですね。この法律ができる時期でしたので、どういう形の法律ができるかということはあらかた分かっており、建設省の指導もいただいて、ビルの中に建物を通すと、立体的区域でいくということです。あのビルは幅が11mから約14mですかね、それが幅、高さはTPの15.4から25.25と、これが区分地上権の設定範囲です。階数にすると5〜7階です。
佐藤 あのビルは全体で何階だったんですか。
岡山 全体で16階、ただこれは16階と勘定していいのか13階としたらいいのか難しいんです。道路が通っている部分は床がないので、登記法上の表示は地上13階になるんです。1階というのは床がないと駄目ですからね。高さは地上16階地下2階、ただしビルそのものは地上13階地下2階ということになります。
入口の看板には16階建てと表示されているが、登記上は阪神高速道路分の5~7階は勘定に入れないこととなり13階建てということなんだそうだ。
佐藤 道路の両側に部屋があったんじゃないですか。
岡山 コアです。エレベーターとか階段とか、道路部分が事務所になっているんです。
「改訂版 立体道路事例集」から引用
加藤 補償はどうなっているんですか。
岡山 あのビルは補償はしておりません。高架下にビルを入れるというシンプルな補償で考えております。 佐藤 区分地上権は取得されたのですか。
岡山 区分地上権は取得しております。
佐藤 今おっしゃった部分についての区分地上権の設定を、これは有償取得されたのですね。区分地上権の補償の考え万はあまり具体的には言えないかも知れませんが、どの様にされましたか。
岡山 立体道路関係の区分地上権というのは概ね25%〜33%くらいですかね、その辺が大体オーダー数字ですね。
佐藤 更地価格のでしょうね。これを区分地上権の補償費として地主に払ったということですね。
岡山 建設省の方で、立体道路制度が出たときにどう補償金を払うかを研究しまして、それは通達で出ているんですが、大体譲渡所得と不動産所得ですか、あの線引きは25%になっていますね。あれよりはちょっと上と、だからこれは対価補償にあたると、ただし率はいろいろあって難しいけれども、確かに対価補償だと、それなら25%よりちょっと上だと、まあ30%くらいかなと、税金なんかも考え併せて。立体利用阻害率を考えてそういうものから区分地上権は3分の1とか3割とか、それが一応の目安みたいですね。
佐藤 あの建物は容積一杯に立っているんですかね。
岡山 容積は一杯です。
佐藤 その区分地上権部分は容積に入っていないんですよね。
岡山 入っていません。
佐藤 そうするとドテッ腹を突きやぶられて若干不倫快ではあるが、容積は100%使えて補償額として3分の1ほどもらっていることになりますね。道路が真ん中を通っている弊害としては、騒音とか振動があるかも知れませんが。
岡山 ビルに荷はかかっていないから振動はないです。両方とも独立しているんです。
佐藤 少なくとも不快感はあるわけだけれども、経済ベースでいうと約3分の1程度の補償額をもらって容積満配のビルを立てることができるというのは得ですかね。まあ建築費が高くついたのかな。
岡山 建築費がものすごく高い。道路と一体となった建物というのは僕らもよく分からないんですが、うまく利用すると非常にメリットがある。あのビルも最初は四角いビルを考えていたらしいんですが、四角いビルではコア部分が作れない。丸型ビルであれより大きくしてもコアが増えるだけで事務所は増えないということです。だから道路と建物を合体させるのは敷地の位置形状、ビルの利用等が複雑に絡みあい、どちらがいいのかは非常に難しいと思います。
佐藤 さっき建物と一体になった支柱の話しをされてましたが、これは建物に全然荷がかかっていないんですね。」言い換えると建物の真ん中に大きな穴を開けておいて、高速道路を通しているということですね。
岡山 そうです。
「改訂版 立体道路事例集」から引用
「これは建物に全然荷がかかっていないんですね。」言い換えると建物の真ん中に大きな穴を開けておいて、高速道路を通しているということですね。」という状況がよく分かる。
以前「阪神高速道路 梅田出口:ゲートタワービルの立体道路について」
http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-2128.html
という記事も書いているのであわせてご覧いただければ幸いである。
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阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(1)イントロ
阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(2)船場センタービル
阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(3)朝日新聞社ビル
阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(4)梅田出口
阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(5)OCAT(大阪シティエアターミナル)
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