阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(5)OCAT(大阪シティエアターミナル)
よく見るとビルの入口に「ETC」のマークとアンテナが。
佐藤 次に湊町のプロジェクト、これはまだ未着手ですが、現場は見せていただきました。高速道路等が錯綜してますが、この場所にランプ、交通センタービルを造る予定をされているわけですね。このプロジェクトの構想、その他権利関係がいったいどうなるのかを説明いただけますか。
岡山 ここはJR関西本線終着駅の湊町駅で、面積は約17.5haあるんですが、17.5haのところを新都市拠点整備事業で、新都市拠点整備事業というのはヤードを整備していく時の事業らしいんですが、平成元年2月に大臣承認を取っております。その新都市拠点整備事業で阪神高速のオフランプと交通ターミナルセンタービルですか、それとを繋いで、2階部分にバスの駐車場、そしてシティエアターミナルにしたいということで、新空港ビルが難波にいるだろう、それが一番の基になっております。東京でいいますと箱崎ですね、箱崎によく似たものをあそこに造ろうという構想の基にやられているものです。
高速道路のランプは堺線の下り方向で、現在の環状線の方から分岐してきまして、そのシティエアターミナルビルの2階部分に入って、そこからまたスロープで降りて平面街路に出る。2階部分はバスターミナルです。
再開発前の湊町地区。駅が関西本線のJRなんば駅(旧湊町駅)である。
佐藤 2階にバスターミナルと阪神高速道路も入るわけですか。
岡山 ビルは真四角で、この一番西端が阪神高速道路になっており、ここから2階部分はバスターミナルと、断面でいきますとランプが下がってくるわけですね。それで建物の2階と一緒の高さのところがありますね、ここでバスターミナルとジョイントしている。阪神高速道路はここからビルの中を降りていく、こういう構想なんです。
「改訂版 立体道路事例集」から引用
ピンク色の部分が、前頁で触れた道路の立体的区域、すなわち建物の中であっても道路法上の道路となる部分である。
佐藤 このビルで新空港の通関手続ができるんですか。
岡山 箱崎みたいにそこまでやるのか、どこまでやるのかは分からないんです。
佐藤 チェックインとか手荷物手続きとかフライトに関する情報提供など都市における空港の出先機関としての機能を始め云々とパンフレットに書いてありますよ。
小川 パンフレットからいけばそういうことをやる感じですね。
チェックイン機能は結局できなかったはず。関空バブルを感じますな。箱崎も今やチェックイン機能は無くなってしまったことだし。。。
佐藤 これは阪神高速を経て湾岸線と結んでいるわけですか、湾岸には行かない...。
小葉竹 直接には行かないですね。
佐藤 でも新空港へはここから行けるんでしょう。
岡山 そこでバスに乗って、そのバスが平面道路を走って湾岸線に抜けるとか、堺線に抜けるとか、そういうことですね。
佐藤 阪神高速道路とこの湾岸線はこの近所では繋がらないのですか。
岡山 繋がらないんです。
佐藤 それでは一旦一般道路へ降りて、湾岸線に乗っていくとか...。
岡山 堺線を走るとか、そういうことですね。
ビルの裏側(南側)にバスターミナルからのバスの出口(右側)と高速道路の出口(左側)が並んでいる。
加藤 箱崎シティターミナルと同じと考えてよろしいんでしょうか。
岡山 まああれによく似たものだと、同じではないですね。
加藤 あれが出来たのは道路法の改正前ですね。同じではないんですね。
岡山 そのパンフレットを見る限り、シティエアターミナルとまるっきり同じ機能を持たそうということですよね。箱崎の場合は乗ったらそのまま首都高速道路で行けますが、ここの場合は阪神高速道路でそのまま行けないので、一部区間平面を走るか、ここで乗り換えて鉄道を利用することになります。
首都高速の箱崎ジャンクションとTCAT(東京シティエアターミナル)は上記のような関係である。「道路法の改正前ですね」とあるように立体道路制度ではなく、船場センタービルと同様に道路法の占用許可を得て作られている。ではTCATの登記はどうなっているのだろうか。
ところが、成田空港(新東京国際空港)のダウンタウンエアターミナルである箱崎の東京シティエアターミナルについては、首都高速道路6号線と主要な骨組みについて一体構造物として建設されたビルであり、柱等は道路の管理者(首都公団)の所有であるにもかかわらず、ビルの建物登記がなされている。
箱崎シティエアターミナルの事例の詳細については、誌面の都合上省くが、要点のみを言えば、違いとして、箱崎シティエアターミナルはすべての柱を道路の橋脚と共有しているものではなく、独自の柱もあるということが一点。もう一点、成田空港開港が遅れたため、船場センタービル等と違って、建物を建ててからどっこいしょと道路をのせたのではなく、始めに道路ができて、その橋脚を利用して建物が作られたということである。つまり、国電のガード下建物のように、既にある柱、壁等を一部利用して建てられた形となっている。鉄道ガード下建物の登記は、大審院の判例によって昔から認められているところである。
「道路敷地の空間利用 -代表的事例の紹介と分析-」 道路セミナー86年5月号10頁 建設省道路局路政課長補佐 倉林 公夫
あまり納得がいかない部分もあるが、箱崎はすんなり建物登記ができたようだ。
木内 現在 予定されている敷地の所有権者は、コンテナヤードの跡地ですからJR清算事業団ですか。
岡山 交通ターミナルのこの部分は大阪市が既に収得済みです。株式会社湊町開発センターになっていると思うんですが、それは大阪市の外郭団体で、ここを整備するために生まれた組織で、実際は大阪市が持っています。
佐藤 スロープも含まれてくるんですが、この区分地上権はどの範囲で、どの部分を持っているのですか。
岡山 公団はまだ区分地上権を設定しておりません。
佐藤 でも設定するんでしょう。傾斜がついているんでしょうがどんな具合に。
岡山 出来ます。区分地上権というのは上下の範囲を区切ったらいいんですね。上下の範囲ですから、真っ直ぐで区切らなければいけないので、階段型で区分地上権を設定していくのです。
佐藤 JRの湊町駅も区分地上権を所有するんですか。
岡山 JRさんはどうされるのか分かりません。
佐藤 でも大阪市にいったん売っているんですね。
岡山 そうです。売る時に駅が入りますよという条件付きで売っているのか、その辺は僕らにはよく分からないんです。
加藤 これは道路が建物と一体構造になっているものではないんですね。
岡山 なっています。
加藤 大阪へ来る新幹線の中で、「NBL(No.430)」の“道路法の一部を改正する法律の概要について”を読んで来たんですが、立体道路の場合二つのケースがあり、一つは道路と建築物が構造上分離しているケースと、道路と建築物がまさに一体的な構造となっている道路一体建物のケースの二つがある。区分地上権が権原となるのは分離のケースだけで、道路一体建物については不動産登記等の問題があり、道路側の権原は敷地の共有持分になることを付記しておくと、こう書いてあるんですね。これが実態だったら敷地については共有持分でやることになるのかなと考えたんですが、区分地上権ではなく、そういう意味合いでここに書かれているんですが。
佐藤 やはり区分地上権でやるんですか。
岡山 多分区分地上権でやることになると思います。だけど最終的に法務局とその辺調整した結果、共有持ち分にせいと言われたら共有持ち分にならざるを得ないでしょうけれども。
小川 そうですね、不動産登記法というのはそのへん硬直的なんですよね。定義に合わなければ出来ないというところがあるんですね。
木内 この湊町プロジェクトの場合は建物の所有者はどちらになるんですか。
岡山 湊町開発センターです。
佐藤 何年の建築予定ですか。
岡山 これは新空港関連で現在も建築していますが、新空港自体が延びているから何時になるか。平成5年か6年になるか、新空港ができた時には建物もできているでしょう。
木内 これができると新空港までどのくらい時間がかかるんですか。
小葉竹 40〜50分というところでしょうか。
木内 東京は確か1時間ぐらいでしたかね、箱崎から。
佐藤 ここから新空港まで40kmくらいあるのと違いますか。
小川 40kmぐらいですね。
木内 さっき西梅田でお訪ねしましたけれども、立体道路を造る場合は都市計画法とか都市再開発法の地域地区計画のようなスペシャルゾーニングによる都市再開発事業としてやられるんですか。
岡山 最低限高度地区にかかっていればいいんです、西梅田の場合は高度地区です。湊町は再開発地区計画ですね、りんくうは地区計画。
福元 りんくうにつきましては平成2年12月に地区計画が降りていて、ただし湊町はまだ未定で、確認されたところでは再開発の方で指定されたということです。
木内 西梅田はどうですか。
岡山 高度地区です。朝日新聞社も高度地区です。
道路部分は区分地上権で権原を設定したようだ。
佐藤 北と南にビルが二つできる予定とおっしゃいましたね。
岡山 交通ターミナルビルの南側ですね。
南がこれで、北の方は今のところはっきりとは決まってません。
佐藤 やはりビルにはなるんですか。
岡山 多分道路一体建物になるのではないでしょうか。
「北の方」は、現在は「湊町リバープレイス」になっている。上記の地図を見ていただいてわかるように、建物をグルグルと高速道路のランプが取り巻く形となっており、見事な道路一体建物である。
湊町リバープレイスの建設地である湊町地区は,戦災復興土地区画整理事業の減歩により生じた都心の貴重な区画整理公園予定地だった。当公園予定地に昭和37年に阪神高速道路のランプが都市計画決定され,当初の計画通りに整備したのでは公園機能の確保,地域の活性化に繋がらないと懸念され,平成元年に創設された立体道路制度を活用しながら,道路一体建物を建設することにより問題解決を図った。
リバープレイスと一体的になっている阪神高速道路の湊町出口
自動車専用道路のマークと「」の看板が。
東側には湊町入口が。
建物には阪神高速のランプがぐるぐると取り巻いている。
「改訂版 立体道路事例集」から引用
模型で上から見るとこんな感じ。
施工中の写真からは建物と道路の関係がよく分かる。
リバープレイスからOCAT方面を望む。ランプが入り組んでいてスバゲッティ状態だ。
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阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(1)イントロ
阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(2)船場センタービル
阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(3)朝日新聞社ビル
阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(4)梅田出口
阪神高速道路とあの建物の権利関係ってどうなってんの?(5)OCAT(大阪シティエアターミナル)
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