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2016年11月13日 (日)

西武新宿線の国鉄(JR)新宿駅乗り入れを整理してみる。(10)西武新宿線の地下複々線化による新宿駅乗り入れ

バブルの世の中になり、国鉄は民営化された。一方、西武新宿線の新宿駅乗り入れが地下複々線化構想によって戻ってきた。

1987(昭和62)年12月 特定都市鉄道整備事業の事業認定

1989(平成元)年3月 複々線化の事業基本計画の変更認可

1993(平成5)年3月 鉄道施設の変更認可

1993(平成5)年3月 環境影響評価書の告示

1993(平成5)年4月 都市計画の変更告示

西武新宿線 国鉄新宿駅乗り入れ計画 (73)

(1987(昭和62)年9月14日付朝日新聞から引用)

 新駅は靖国通りと新宿通りの間にできる計画だったようだ。

 「西武新宿線の国鉄(JR)新宿駅乗り入れを整理してみる。(7)地下道による西武新宿駅と営団地下鉄・国鉄新宿駅との連絡」で紹介した地下街計画のリベンジのようにも見える。

西武新宿線 国鉄新宿駅乗り入れ計画 (74)

(1992(平成4)年5月9日付朝日新聞から引用)

西武新宿線 国鉄新宿駅乗り入れ計画 (2)

(「JREA」1993年 Vol.6 No.6「西武鉄道新宿線複々線化工事計画」 林利喜朗(西武鉄道株式会社建設部部長)・著 21782頁から引用)

 今度は地下6階にホームを作るというのである。

 なぜこんなに深いのか?

 高田馬場駅を見ても地下2階を走る東西線を避けなければならないのは分かるが、それにしては深すぎやしないだろうか?

 上記引用元のJREA「西武鉄道新宿線複々線化工事計画」では、「縦断線形は当該区間に地下鉄12号線(※引用者注:都営大江戸線)や環七地下河川などの計画があり、また、上下水道管などの既存の施設が多く存在することから,平均40~60mと従来の地下鉄に比較して深い線形となっている」(21782頁)としているのだが、ひょっとしたら上越新幹線を避けているのではないか?

 以前「上越新幹線新宿駅(地下3階)構想を図面で現認する (玉川上水と新宿駅南口地区の開発について・超番外編その3)」でも書いたが、上越新幹線の新宿駅乗り入れ構想というものがあって、田端から山手貨物線の地下を通って新宿に至ることとなっている。新宿駅では、地下3階に上越新幹線が来ることになっているのである。

上越新幹線新宿駅位置図

 高田馬場駅の縦断面図を見ると地下2階・東西線~なぞの空間?~地下6階・西武新宿線となっており、なんとなく地下3階の上越新幹線の分を空けてあるような気がしないでもない。

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 この地下複々線化構想に対して、西武新宿駅周辺の歌舞伎町関係者は怒りの声をあげた。「西武新宿線の国鉄(JR)新宿駅乗り入れを整理してみる。(3)戦後新宿駅乗り入れの具体化へ」で紹介しているように、地元歌舞伎町とは「国鉄新宿駅へ延伸しても歌舞伎町駅は存続させる」と約束したからこそ、地元は区画整理中の土地の提供や都バス車庫の移転等の協力を行ったのである。急行線は素通りで各停しか歌舞伎町には停車しないのであればこれは約束違反だとの主張だ。

西武新宿線 国鉄新宿駅乗り入れ計画 (7)

(「政界往来」1992年9月号50頁から引用)

 「それなのに」と今日、憤りを隠さないのは歌舞伎町商店街振興組合の下村理事長である。

「いくら各駅停車用に地上駅舎を残すと言っても、急行と準急用のホームは地下に潜るから今の西武新宿駅に本駅としての価値を存続してもらわなければ困る。これは実質的な駅の移転であり、駅の廃止なんです」。つまる、西武新宿駅の地下駅化計画は「駅の廃止は考えていない」とした40年前の約束違反であり、信義にもとる裏切り行為だというのが地元の言い分なのである。

 しかも、歌舞伎町商店街振興組合は88年末に西武の堤義明社長に宛てて「西武新宿線の終着駅は西武新宿駅ビルを主体とする現体制を維持されたい」という要望を行っているが、回答はなく無視されてしまっている。

 

「政界往来」1992年9月号「西武新宿駅「地下化計画」にみる義明・西武の”ゴリ押し”商法」54頁から引用

 

 「40年前の約束」を再掲しておこう。

西武新宿線 国鉄新宿駅乗り入れ計画 (63)

 

 しかし、バブルははじけ、西武新宿線の地下複々線化構想はおじゃんになってしまった。上越新幹線の新宿駅延伸も音沙汰がない。

■企画され一部着工されたが中止されたもの

(略)

②新宿線地下化について

特々法ができたとき,それに併せて新宿線の直下地下線増工事(西武新宿-上石神井)に名乗りを上げ,都市計画決定もされ,特々運賃の加算も行われ,一部調査も行なったのですが地下水位の上昇や消防法による諸設備の設置費用増大などで,当初考えていた工費が倍増することとなってしまいました.一方輸送も減少しはじめたために結局中止することになりました.

 

「西武鉄道でのこと」 長谷部和夫(元・西武鉄道常務取締役) レイル51号 63頁から引用

西武新宿線 新宿―上石神井駅間複々線化計画 無期延期決定 費用の膨張理由に

 

 輸送力の増強を目指し、西武新宿―上石神井駅間の約十二・八キロの地下に、新たに急行線を走らせて複々線化する事業計画を進めていた西武鉄道は、建設費が当初見込み額を大幅に上回る見通しとなったことなどを理由に、事業の無期延期を決定し、十九日までに沿線自治体の中野区に伝えた。

 西武鉄道は八七年十二月、運輸省の特定都市鉄道整備事業計画の認定を受け、複々線化予定区間の運賃に十円上乗せし、工事費を積み立て。九三年に都の都市計画決定が下り、昨夏には建設省に工事施行許可を申請、手続きはほぼ整っていた。

 ところが、ラッシュ時の乗客数は九一年をピークに下降気味。当初は千六百億円と見込んでいた総事業費も、地下水の水位が予想より高かったことや、現在の西武新宿駅をJR新宿駅寄りに移動することにしたことなどから、約二千九百億円に膨れ上がることがわかった。

 このため、同社は複々線化を延期せざるを得ないとし、十九日には、特定都市鉄道整備事業計画の認定取り消しを運輸省に申請。これまで十円を上乗せしてきた区間では、乗客への還元を図るとしている。同社広報課は「計画を無理に進めれば、工事費の負担は運賃にはねかえり、逆にご迷惑をかける」としている。

 一方、中野区では、地下化により「ラッシュ時は一時間に通算五分しか踏切が開かない」(区都市計画部計画課)という状態が改善されるとして、事業着手に期待していただけに、神山好市区長は十九日、「(延期は)到底受け入れがたい」とのコメントを出した。区担当者も「遅れてもやるものと思っていた。公共交通機関として余りにも無責任」と批判、「都とも相談して、再開を迫っていく」と語った。

 

1995(平成7)年1月20日付読売新聞から引用

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(1)プロローグ

(2)戦前の新宿駅乗り入れ構想

(3)戦後新宿駅乗り入れの具体化へ

(4) 魑魅魍魎うずまく新宿ステーションビル

(5)新宿ステーションビルへの西武線乗り入れ

(6)新宿ステーションビルへの乗り入れ中止

(7)地下道による西武新宿駅と営団地下鉄・国鉄新宿駅との連絡

(8)西武新宿線の営団地下鉄東西線・有楽町線乗り入れ構想

(9)西武新宿駅の開発

(10)西武新宿線の地下複々線化による新宿駅乗り入れ

(11)西武百貨店堤清二による新宿ステーションビル乗っ取り失敗

(12)高島屋、西武に競り勝ち、新宿へ悲願の進出

(13)新宿駅東口2階の吹き抜けに西武新宿線が乗り入れるはずだったのか?

(14)新宿ステーションビルとベルクと井野家

(15・終)エピローグ

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