「東京道路奇景」(川辺謙一・著)を読んでいて「東京都市高速道路の建設について」に関心を持った方に全部見せちゃう。
「東京道路奇景」川辺謙一・著 草思社・刊 を読んでいて引用されている「東京都市高速道路の建設について」に関心を持った方もいらっしゃるだろう。太っ腹な私がそんなあなたに全部見せちゃう。
ただスキャンするだけじゃアレなのでところどころにネタというか解説も突っ込んでいこう。自分も過去にこの資料をネタに幾つかブログの記事を書いているので併せてご紹介したい。
首都高速道路公団ではなく、その設立前に東京都が作成している。
「昭和40年の交通危機」という言葉が出てくるが、首都高速は東京オリンピックを目指して計画されたのではなく、もともと、昭和40(1965)年ごろには道路交通がパンクするため、対策を講じなければならないということで着手されたものなのだ。
皇居の堀が見えているので日比谷交差点の風景かな?
戦前にここに防空壕の機能も兼ねた地下道の計画(宮城外苑地下道計画)があった。
「山田正男「宮城外苑地下道計画案に就いて」」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-6c82.htmlに紹介している。
「都市高速道路は高架式が普通です。」と見出しをつけておきながら、写真は掘割部である。都心の河川を干拓して高速道路を作るにあたって、関係者にこの写真を見せて「こんな風に出来ます」と説明していたのだろうか。(尤も、この写真は片側3車線なので随分イメージが異なるが。)
当初は、首都高速は「インターチェンジ」と「ジャンクション」ではなく、「ランプ」と「ジャンクション」だった。平成初期まではそうだったはず。
この写真も「高速道路同士を立体交差で接続するときはこうなるんですよ。これをインターチェンジというんです」なんて言いながら見せていたんだろうか。
(「ワイドミリオン全東京1/1万」東京地図出版・刊 1992年1月発行 から引用)
昭和28年4月28日に、首都建設委員会は「首都高速道路に関する計画」の勧告を発表している。 その路線図に着色して分かり易くしたものが下記の路線図である。
詳細は「昭和28年の首都高速道路計画」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/28-7e37.htmlをご覧いただきたい。
上段部分が、路線選定の考え方を紹介している。首都高速はオリンピックに間に合わせるために河川や運河の上を通ったのではなく、オリンピック決定のはるか前から河川や運河の上を通る計画だったことが分かる。
また、下段部分の「附帯意見」では
「2 皇居の南側において国会方面から銀座方面に通づる路線の計画につき検討する。」とある。
これの名残が、現在のJR有楽町駅付近の日比谷地下道である。
(「都市計画と東京都」都政調査会発行(1960)から引用)
※日比谷地下道は、上記「附帯意見2」の首都高路線の代わりに、都道として計画されたが、紆余曲折あって今のような中途半端な地下道ができたのである。
ブログでは「東京五輪関連:地下鉄と競合して未成となった銀座の地下自動車専用道路にして首都高速計画線の名残」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/--4890.htmlに記してあるのでご覧いただきたい。
同様に「3 外濠と日本橋河を利用する区間については神田川との治水上の関連を真重(ママ)に検討のうえ可能ならば河川を通すこと」としており、昨今非難されがちな「日本橋の上を通る首都高」は、本来は「日本橋の下を通る首都高」となるはずだったのである。
(「東京の都市計画に携わって-元東京都首都整備局長・山田正男氏に聞く」84頁から引用)
首都高の一番最初の路線網である。これの大判の青焼き図面を早大大学史資料センターで見たことがある。
右上に赤鉛筆で「大将用」と書いてある。西武鉄道の堤康次郎個人用ということだ。堤康次郎は多くの高速道路関係資料を収集していた。その目的は西武建設の名神高速建設工事であり、近江鉄道バスの名神高速への乗り入れであったりするのだが。
赤ペンで印が入っているのは芝のプリンスホテル等であろうか?
「民地の買収による都民の迷惑をできる限りさける」「多少の線形の屈曲を犠牲」とある。首都高はカーブが多くてなんだ!とお怒りの方は「都民の迷惑」も少しは考えた方がいいのかもしれない。
「高架構造物の路下を建築物として利用」という点についてはおって触れたい。
「あれ?都心環状線が無いぞ?」と気が付いた方はいらっしゃるだろうか?
実は、本来は放射路線となっている2号、3号、4号の一部が、通称「都心環状線」を形成しているのである。
(「伸びゆく首都高速道路」首都高速道路公団・刊から引用)
「高架下は軌道がない限り、駐車場に利用」って、軌道すなわち路面電車とは並存する気だったのか。東急玉川線と首都高3号渋谷線は結局玉川線が地下化して首都高と一体構造として整備ということになったが、都電もそのまま残す余地があったのだろうか?
「新しい街路にそつた土地の建物を中高層化して共同で店舗,住宅等に利用」というのはオリンピック前の青山通りの拡幅等でも採用された手法だ。
首都高では、結局高架下に建築が入ったのは箱崎のTCAT等少数に留まったのだが、当初は積極的に高架下に建物(住宅までも!)を作って積極的に利用する計画だったようだ。
首都高の高架下利用の経緯については「森口将之氏「首都高速ではない首都高速? 無料で走れるKK線が生まれた理由」は勉強不足」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/kk-9f0e.htmlにまとめてある。
上記は実際に首都高が高架下に店舗を建築した例である。
掘割式が「都市の美歓(ママ)上も、工事の点からも最も望ましい構造」だとのことである。
こんな光景は実際には見られないような気がするがどうだろうか。。。
先にも述べたように、オリンピック対策ではなく、昭和40年までに首都高速が出来ないと、都内の道路交通がパンクしてしまうのでその予防のための工程である。
首都高速道路公団ができる前に、日本道路公団が2号線等の一部に着工していた。
「首都高速道路を当初建設着手したのは日本道路公団(JH)だった」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-a9d4.htmlにそのあたりのことを書いてある。
当初構想では、1回70円程度の料金を10年前後徴収する計画だったようだ。ここが今とは随分違う点だ。
「東京都市高速道路の建設について」については以上である。振り返ってみると、川辺謙一氏だけではなく私も随分ネタに使っていることだよ。
(追記)
首都高速の設立当初のパンフレットを下記のとおりUPしたので併せてご覧いただければ。
・首都高初期のパンフ「首都高速道路公団のあらまし」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-2f3b.html
・首都高初期のパンフ「伸びゆく首都高速道路」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2016/11/post-8798.html
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「東京都市高速道路の建設について」とは関係ないが、「東京道路奇景」では、東京高速道路(KK線)を「都政七不思議」の観点から取り上げている。大変素晴らしい。
21世紀に入ってからというものの、「都市計画家・石川栄耀―都市探求の軌跡」中島直人、初田香成、佐野浩祥、津々見崇、西成典久・著 鹿島出版会・刊や 「自動車と建築-モータリゼーション時代の環境デザイン」堀田典裕・著 河出書房新社・刊 のように、ロクに調べもせずに、東京高速道路は素晴らしい!石川栄耀マンセー!な本ばかりなところで貴重なスタンスである。最近では「都政七不思議」にからめて東京高速道路を論じていたのは、素で私のブログくらいしかなかったから喜ばしいことである。
東京高速道路以外の「都政七不思議」に関心を持たれた方は、私の記事「「安井都政の七不思議」って結局どの七つなのか調べてみた。」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-c0c2.htmlを是非見ていただきたい。
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