首都高速の工事中に首相官邸から東条英機が作った防空壕が出てきた
今回は秋庭大先生ぽい「帝都の地下」ネタである。それも大先生の大好きな「首相官邸の地下」である。
まあ、題名のとおりでそれ以上でもそれ以下でもないのだが。
首都高速道路公団の広報誌「首都高速」のバックナンバーを見ていたら「秘密のヴェールをぬいだ防空ごう」の題字が飛び込んできた。
場所は
である。
首相官邸の南側が擁壁となってその下を首都高速道路都心環状線が走っている。ここを切り開く際に防空壕が発掘されたというのだ。
この記事のキャプションを転記してみる。
都心と渋谷を結ぶ高速3号線(延長6.30キロメートル)の建設工事は、その1部をオリンピックまでに完成するためいま急ピッチで工事を進めていますが、3月25日午後、永田町の首相官邸裏の工事現場にぽっかりと大穴があいた。
---縦1.8メートル、横2.26メートル、厚さ0.5メートルで固められた防空ごうはがんじょうそのもの。昭和17年に東条英機首相が空襲したの閣議用に建築した防空ごうあとだということ。
---官邸の食堂わきにある入口かららせん状の階段を下りて地下20メートルのところに閣議室(40平方メートル)が中央廊下をはさんで3室づつ6室、浄化装置、自家発電装置も完備されている。250キロ爆弾の直撃でも大丈夫だそうだが、これをこわすのがひと仕事。「東条さんも大変なものを残してくれたものです」と作業員はぼやいていた。
同じく首都高速道路公団の「首都高速」No47(1965年6月15日発行)において、公団の担当者が当時の工事を振り返っているのだがそこでも首相官邸の防空壕について触れられている。
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同様の戦争遺構は他でも発見されている。皇居の北の丸を横断する箇所でも防空壕が工事の支障となっていた。
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それなら参謀本部があった三宅坂インターチェンジ(ジャンクション)はもっとどでかいものが出てきそうである。
しかしながら「首都高速」の別の号によると「図面が消失してしまい地下の埋設管が分からなかった」とだけある。地下に何が埋まっているかわからないまま東京オリンピック開催に間に合わせるためにあの巨大な地下ジャンクション工事を発注していたということだ。(なおこういう場合にありがちなことだが、用地買収もしていないうちに発注している。)
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(参考)
山田正男「宮城外苑地下道計画案に就いて」
http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-6c82.html
以前の記事では、戦前の皇居前広場にいざというときには地下防空壕になる地下自動車道の計画があったことにも触れているのであわせてご覧いただければ幸甚である。
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(追記)
(RT)拙著『地図と愉しむ東京歴史散歩 地下の秘密篇』の記述どおりだったので嬉しい。https://t.co/aiXK9LyCH1 pic.twitter.com/GNwa7LQvGl
— 竹内正浩 #新刊 『天皇の旅と寄り道』2月上旬発売 (@takeuchmasahiro) 2018年1月28日
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