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2020年3月31日 (火)

東北新幹線よりも埼京線がうるさいのは正当なのか検証してみる

 例えば、Twitterで「埼京線、新幹線、騒音」と検索してみると、下記のようなツイートが上位に出てくる。

 この辺りの経緯はどうなっているか検証してみる。

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 埼京線(通勤新線)が、東北・上越新幹線を受け入れる代償とされていることについては、私のブログの読者には説明不用であろう。(尤も、国鉄は東北貨物線の旅客化等の増強策は検討していたし、埼玉県は都営地下鉄三田線の北進を検討していたので、埼京線が突然代償として湧いてきたわけではない。)

 しかし、埼京線の騒音が東北・上越新幹線よりもうるさいことについて上記のように揶揄するものが多い。

 実際にはどうなのか?試しに東京都の測定結果を見てみよう。

埼京線と東北新幹線の騒音 (7)

埼京線と東北新幹線の騒音 (8)

 都内での埼京線の騒音の測定結果は上記のとおりである。ちなみに当時の電車は後掲のように205系であり、開通当初の103系の頃は更にうるさかったものと推測される。

 では東北新幹線との比較ではどうか?

 東京都が同一の場所で測定した結果を比較してみよう。

埼京線と東北新幹線の騒音 (9)

埼京線と東北新幹線の騒音 (10)

埼京線と東北新幹線の騒音 (1)

 なるほど、東北新幹線よりも埼京線(205系)の方がうるさかったことがデータで確認できる。

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 では、建設当時に国鉄は地元自治体へどのように説明したかを見てみよう。

 ここでは、東京都へ国鉄東京第三工事局が公文書で申し入れたものを見ていく。

東北新幹線東京大宮間110キロ規制と線形 (14)

東北新幹線東京大宮間110キロ規制と線形 (3)

東北新幹線東京大宮間110キロ規制と線形 (5)

埼京線と東北新幹線の騒音 (6)

 国鉄は、東京都に対して「通勤別線の騒音・振動は、新幹線と同程度のものになる」と説明している。だから環境を守れるので工事させてくださいという位置づけの文書である。

 

 埼玉県ではどうか?

埼京線と東北新幹線の騒音

「東北・上越新幹線問題関連年表」畠中宗一・編 沖縄コレギア研究会・刊 33頁から引用

 

 戸田市には「通勤新線との複合騒音公害は基準以下を保つ

 浦和市議会には「通勤新線との併設で公害(騒音)はどうなのか」という質問に対して「両線とも70ホンづつで、併設すると3ホンのアップになる。しかし110kmなら70ホンでいける

 とそれぞれ説明している。

 

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 東北新幹線の騒音については、東京都民が提起した訴訟の和解で時速110キロと定められているが、埼京線についてはどうか?

埼京線と東北新幹線の騒音 (12)

「東北新幹線 上野・大宮間工事誌」から引用

 新幹線とは異なり、在来線については具体の数字は入っていない。

 これについて、東京都民側は下記のように説明している。

埼京線と東北新幹線の騒音 (4)

 「被害を未然に防いで」北区新幹線対策連合協議会・編 29頁から引用

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  浦和市議会に説明した「70ホン」は、とうてい遵守できていなかったとみられる。

  では、沿線住民は抗議しなかったのか?

埼京線と東北新幹線の騒音 (2)  

 「新幹線を「ノー」といった人たち-与野市における新幹線反対運動の足跡-」与野市新幹線対策住民委員会・編 148-149頁から引用

 埼玉県与野市(現・さいたま市中央区)では、国鉄に抗議し、国鉄は「誤算であったこと」を認め、車両整備等の対応をさせたという。 

  

埼京線と東北新幹線の騒音 (5)  

  「被害を未然に防いで」北区新幹線対策連合協議会・編 30頁から引用 

  また、東京都北区での交渉経緯について興味深いのは、国鉄民営化に伴い、環境問題について約束した当事者である国鉄東京第三工事局が交渉する当事者能力を失い、うやむやにされてしまったという点である。

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 このような流れからすると、埼京線が東北新幹線よりうるさいのは、当初の国鉄の約束をやぶってorなあなあにしていることが問題であろう。

 

埼京線と東北新幹線の騒音 (11)

1979(昭和54)年12月18日付読売新聞から

 建設当時に、東京都北区の住民が「国鉄は”環境は守るから”とだまし、開通させてしまえば”多少のオーバーは我慢しろ”という」と危惧したとおりになったわけである。

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 ところで、埼京線の地元東京都北区議会で興味深い問答が行われているのでご紹介したい。 


平成14年  6月 定例会(第2回) 06月19日-07号 

 

◆三十七番(中川大一君) 

 私は、大きく分けて二点について質問いたします。

 その第一は、新幹線及び在来線の環境問題等についてであります。 そもそも、東北・上越新幹線問題は、一九七一年に工事実施計画が許可され、翌年の一九七二年九月八日には、区民、区議会、北区の三者が一体となり、新幹線現在計画反対区民協議会を結成し、北区の総力をあげた、公害に反対し生活環境を守る大運動がスタートいたしました。


 その後、幾つかの曲折はありましたが、当時の国鉄が、住民や北区、北区議会に多くの約束をしたことによって、通勤別線、つまり、埼京線と併設で供用が開始されました。


 特に、環境問題について言いますと、北区新幹線対策連合協議会が、六年に及ぶ工事差止訴訟の中で、一九八四年十月三日に、東京地裁において、六項目の和解として成立したのであります。


 その主な内容は、一つに、騒音については七十ホン以下、振動については七十デシベル以下、北区内における列車速度は時速百十キロメートル以下とする。二つには、在来線の騒音振動対策としてロングレール化、レールの重量化、枕木のコンクリート化、ゴムパットの使用及び鉄桁対策等に努力するとともに、各種発生源対策の技術開発に努めるなどとなっております。


 この和解は、新幹線及び在来線鉄道について、住民と国鉄との間で取り交わされた全国初の公害防止協定であり、事実上、裁判の判決と同じ重みをもつものであります。


 その後、経営体がJR東日本に変わりましたが、和解内容を守る義務は継続しており、協定を一方的に破ることは絶対に許されないことは明瞭であります。


 これらの経過を踏まえ、今、北区政に求められているのは、新幹線の騒音、振動、速度など、その約束が全面的に守られてきたのか。科学的な検証が必要であります。特に在来線の騒音、振動対策は、その発生源対策の技術開発にも立ち入って到達点を検証することが重要であります。

(略)

 

 

 

◎生活環境部長(谷川勝基君)

(略)

 次に、在来線の速度、騒音、振動測定と、対策の検証につきましては、新設線や大規模改良線の指針を除きまして、在来線につきましては、環境基準等が設定されておりません。この点につきましては、特別区長会として、国に対し、これまでも、在来線の騒音対策として、環境基準等を設けて、新幹線に準ずる防止対策を行うよう適切な措置を講じられたいとの要望をしてきているところでございます。

 

 「在来線については、一部を除いて環境基準等が設定されていない。しかし、東京都の特別区長会は、在来線の騒音について新幹線同様の基準を設けるよう、国に要望している。」ということである。 

  これが当初からできていれば、「埼京線の方が東北新幹線よりもうるさい」という事象は起きなかった可能性があるのではないか。

  

  何かで「東京都北区住民と国鉄の和解で、新幹線は規制の数字を書き込めて、在来線は書けなかったのは、国の環境基準の違い(新幹線はあるけれど、在来線はない)によるもの」という趣旨のことを読んだような気がするけれども、はっきり思い出せない。

 

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 ところで、下記のようなことを本当に国鉄関係者が言ったのだろうか? 

 

  もし実際に記載されている書籍等が分かれば是非ご教示いただきたい。

 

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