日本縦貫高速自動車道協会の1957年のルート案~日本の戦後高速道路ネットワークの推移(2)~
前回の第1回では、国土開発縦貫自動車道のネットワークとその思想について紹介したところである。
で、その推進民間団体として「日本縦貫高速自動車道協会」も紹介したのだが、その縦貫道協会については、別のネットワーク案もある。
第1回で紹介したのは、1956(昭和31)年段階の案だったが、その1年後の1957(昭和32)年に発行された「第三の道 縦貫自動車道 早わかり」に掲載された「高速自動車道網計画図」を紹介したい。
本線となる「国土開発縦貫自動車道」については大きな変更はないと思われるが、支線扱いとなる「縦貫道に連絡する高速自動車道」については、随分なバージョン違いとなっている。
前回同様、背骨となる縦貫道と肋骨となる支線の路線図とあわせて紹介したい。
小学三年生1957(昭和32)年9月号から(田中清一氏が監修している)
○中央自動車道
支線が「高田ー長野ー磐田線」「富山ー福井ー米原線」「瀬田ー松坂線」「大阪ー新宮線」である。
大阪ー新宮線は国鉄紀勢本線沿いかと思いきや、紀伊半島を縦貫している徹底ぶりである。
○東北自動車道
支線が「能代ー毛馬内(けまない)-八戸線」「秋田ー盛岡ー小本線」「本庄ー平泉ー高田線」「鶴岡ー仙台ー石巻線」「新潟ー宇都宮ー水戸線」である。
北から順番に東西に線を引いてみました感があるのだが。。。毛馬内は現在の十和田インターチェンジである。
特筆すべきは、「新潟ー宇都宮ー水戸線」であろうか。前回の案では新潟へは磐越自動車道ルートだったが、このルートでは、宇都宮から国道121号から400号のルートに沿っているような感じだ。
また、本線である東北自動車道の起点(中央道との分岐点)は、調布、府中あたりということなのだろうか?
○北海道自動車道
支線は「上幌内ー大雪山線」「旭川ー美幌線」「阿寒岳ー網走線」「釧路ー根室線」である。
上幌内ってここだ。
トムラウシや石狩岳の間を縫っていくのだろうか?開拓路線としてもかなりの難易度であろう。
また、本線の北海道自動車道も中山峠を越えており、「縦貫道」思想に沿ってのルートと思われる。阿寒湖のあたりは国道241号~240号あたりのルートだろうか?
○中国自動車道
支線は「舞鶴ー姫路線」「鳥取ー勝田線」「津山ー岡山線」「米子ー新見線」「庄原ー尾道線」「大田ー十日市線」「大田ー広島線」「石見ー六日市線」「萩ー山口ー防府線」である。
他の地区に比べて随分密度が濃い感じだ。 それだけ中国道のルートが需要地から遠いということなのだろうか。
○四国自動車道
支線は「富岡ー高知線」「西條ー九万ー宿毛線」だが、九万ー宿毛なんて酷道ヨサクだし、「富岡(現・阿南市)-高知線」は酷道195号だ。
まあ、酷道のような山間部を開拓するのが縦貫道といえばその思想を体現しているのだろうが。
それに比べて高松の冷遇ぶりよ。
○九州自動車道
支線は、「佐世保ー久留米ー別府線」「宇土ー砥用ー延岡線」「川内ー加治木ー宮崎線」である。
川内ー加治木は、そんな端っこで肋骨線にこだわらなくてもと思うのだが、宮崎だけでは片手落ちということなのだろうか?
九州道の本線は、現在は八代から球磨川沿いに人吉・えびの方面へ向かっているところ、この絵では、阿蘇のすそ野から五木村附近へ直行し、人吉・えびの方面へ向かっている
まず計画の内容を申し上げますと、「国土開発縦貫自動車道建設法」に基いて、北海道の稚内から九州の鹿児島までの幹線高速自動車国道を、概ね日本列島の中央に近い、背稜山脈の南斜面を縦貫するように一本建設し、それに肋骨状連結路線を整備して、表裏日本両方の重要都市、重要地域を結ぼうというのです。
「第三の道 縦貫自動車道 早わかり」日本縦貫高速自動車道協会・刊 19頁から引用
皆様、肋骨ぷりはお楽しみいただけただろうか?
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