日本の初期高速道路7,600kmの路線網はどのような基準で決定されたのか
先の記事「法定の高速道路に成り損なった「未成高速道路構想」」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2021/01/post-73aac0.htmlにおいては、高速道路になれなかった路線構想を紹介した。
ところで順番が逆になるかもしれないが、「高速道路7,600kmの路線網はどのような基準で決定されたのか」について触れていきたい。
おさらいになるが、日本の高速道路ネットワークがどのように形成されていったかを国土交通省の資料から紹介する。
そして今回紹介しようとする7,600kmの路線網は下記のものである。
「ネット形成で考慮された拠点」という耳慣れない言葉が出てくるが、覚えておいていただきたい。
「高規格幹線道路網に係る国家政策の歴史的変遷」http://www.jice.or.jp/cms/kokudo/pdf/tech/reports/05/jice_rpt05_04.pdfから引用
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先の記事にもお出ましいただいた井上孝氏が 「国土開発幹線自動車道路網の設定について」というそのものズバリの報告を日科技連数学計画シンポジウムにおいて行っているので紹介したい。
経済的な条件等は割愛する。
先に紹介した路線図における「ネット形成で考慮された拠点」はここに対応している。
路線選定基準とは関係ないが、この段階では「②東京外郭環状」として、東京外環自動車道が独立した路線として扱われている。(マニヤの皆様はご承知のとおり、この後実際に国土開発幹線自動車道建設法が成立した段階では、外環道は独立した路線ではなく、東名、中央、関越、東北、常磐、東関東の各路線の起点部分に溶け込んでしまっている。この間に何があったのだろうか?)
参考記事「祝!外環道 三郷南~高谷開通!東京外環道って法令上の名称じゃないけどどうなってんの?」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2018/06/post-450c.html
ざくっと整理すると
・全国からおおむね2時間以内で高速道路に到達できるようにする。
・全国から主要拠点を4大都市圏+58箇所選定し、これら相互を結ぶ道路網仮案を設定する。
・この仮路線網から「交通需要」「カバーされる人口」「交通仕事量」の3つの指標から路線を選定する。
・北海道は人口、面積等の事情が異なるため補正する。
これらの作業により、下記の7,600kmの路線網が設定されたというのである。
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また、井上孝氏と一緒に7,600kmの高速道路路線網設定に取り組んだ山根孟氏(建設省道路局長、本四公団総裁等を歴任)は、「土木史研究におけるオーラルヒストリー手法の活用とその意義 : 高速道路に焦点をあてて」で下記のように触れている。
ここで山根氏の言う「グラフを書いてみると」に該当するのが、井上氏の報文中「図1 道路延長と交通需要指数の関係」である。
井上氏の報文に加えて山根氏の報文からもざっくり整理すると
・従来の縦貫道法や個別立法により既に成立している路線は「ギブン」とし、既定の縦貫道等に追加していくものとしていた。
・理論は国道の指定や諸外国との比較にも使われているものだった。
・採算性は考慮していない。
といったことが分かる。
「こんなもの後付けでもどうにでもなる」というむきもあろうが、建設省の公式見解はこれだということでそこはひとつ。
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コメント
鹿島町(現在の鹿嶋市)を鹿島市と誤植していたとは。
東関東道が佐賀までの計画とか恐ろしいです。
投稿: 横井屋 | 2021年2月 4日 (木) 19時12分
コメントありがとうございます
「鹿島市」は気づきませんでしたw
投稿: 革洋同 | 2021年2月13日 (土) 13時10分