富士スピードウェイのストレートは「飛行機の離着陸にも利用できるようにした」と大成建設富士スピードウェイ建設作業所長が土木雑誌に書いている。
「ボクのあこがれ♪ボクの恋人♪スーパーカー♪」
何を隠そう、スーパーカーブーム世代である。
学校の昼休みはスーパーカー消しゴムでレースをし、放課後は「サーキットの狼」を友達と回し読みし、夜はテレビで「スーパーカークイズ」を見ていた世代だ。
なぜ、こんなつまらない自分語りをするかというと、今回のネタは出オチだからだ。
表題のとおりである。
「土木工事施工例集 1道路・鉄道編」1967年 山海堂・刊を、「なんかブログに載せられるようなネタはないかなー」と思いながら頁をめくっていたら、こんな記事があった。
「富士スピードウェイ建設工事の計画と施工」著者は小林秀夫・大成建設株式会社富士スピードウェイ建設作業所長と内藤正昭・同社土木本部設計部係長のお二人である。
Wikipediaの富士スピードウェイの頁には、河野一郎だ河野洋平だと書いてあるが、実際に設計・施工したのは大成建設であり、その施工報告を、その名も「土木施工」という土木業界誌に載せ、その単行本化されたものが私の目にとまったというわけだ。
で、肝心なところはこれである。
メインスタンドの前面には前述のように各種自動車の最高スピードを追及できるように,延長1.6kmの直線コースを用意し,さらに,レース以外の競技や,飛行機の離着陸にも利用できるようにした。
「富士スピードウェイ建設工事の計画と施工」小林秀夫・大成建設株式会社富士スピードウェイ建設作業所長、内藤正昭・同社土木本部設計部係長
こういう重箱の隅のようなネタならWikipediaに載っているかなと思ったら載っていないし、検索してもヒットしないので、貴重なネタなのかも!と思い、あげときました。
というだけである。
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これだけなのだが、これで終わると本当に出オチの一発芸なので、私のブログらしいネタにも触れておこう。
土木の施工報告なので、当然竣工図面が載っている。
こっそり「大成建設事務所」と図-1の左上に書いてアピールしているところなんかお茶目だ。
サーキット好きな方にはそれぞれのコーナーのRなんかに需要があるのかしら。
縦断図があると「サーキットもやっぱり道路の施工なんだなあ」と思ったりする。
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富士スピードウェイというとかつては「30度バンク」が有名だったそうで。
30度バンク
富士スピードウェイの大きな特徴として、30度のカントがついたバンクコーナーがあった。これは前述の通り、元々同サーキットがオーバルコースとして計画されたことの名残と言われている。オーバルコースではコーナーでの減速を極力減らすため、コーナーにバンクを付けるのが普通である。
当時、国内でこのような急角度の路面舗装を経験した業者はひとつもなく、依頼された日本鋪道(後のNIPPO)は、ロードローラーをバンクの上からワイヤーで引っ張るという方法できり抜けた。しかし、もともと経験不足を起因とする勾配の設計が良くない上に、後に「馬の背」と呼ばれることになるこぶ状のうねりもあった。カントのついたオーバルコースで争われるオートレースの世界から転進した田中健二郎曰く、「完成当初にコース管理者に『基礎に杭を打ち込んだか?』と尋ねたら、『打ち込んでない』と言われ『こりゃ駄目だ』と思った」そうである。
Wikipedia「富士スピードウェイ」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%8C%E5%A3%AB%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4 2021年4月8日閲覧
その「ロードローラーをバンクの上からワイヤーで引っ張るという方法できり抜けた。」というのが当該報文にも掲載されている。
ところで、この本には「富士スピードウェイの舗装」という報文も続いて載っているのだが、それの著者は大成建設系列の舗装業者である「大成道路株式会社」の社員となっている。
なのでWikipediaの「依頼された日本鋪道(後のNIPPO)」という表現は要検証である。
また「杭を打ち込んでいないから駄目だ」旨の田中健二郎氏の発言を引用しているが、道路は杭の有無の問題ではなく、土をしっかり固めているかの問題であるので、これは残念ながら的外れな発言である。
Wikipediaの富士スピードウェイを書いた方はよく検証していただきたい。
それはさておき、施工写真だ。
「カント30°部分表層輾圧状況」とある。これがロードローラの作業だ。
「カント30°部分表層舗装状況」とある。ここでアスファルトをひいている。
そしてこれが「バンクの上からワイヤーで引っ張るという方法」の図解である。
舗装の機械は15°傾けて設置していたこともわかる。
ところで「後に「馬の背」と呼ばれることになるこぶ状のうねりもあった。」とのことだが、当該報文にはこう書いてある。
次に、平坦性は直線部で3mの直線定規で測定しても大半が5mm以下であった.また曲線部30°の斜面では8mm位のところもあったが,これは基層の上にスベリ止めを行ったので表層による不陸調整ができなかったためと思われる。
「富士スピードウェイの舗装」秋山次雄・大成道路株式会社工事部,研究所次長
だからなんだと言われるとアレだが、一応書いておく。
サーキットの舗装の話については、「日本では高速道路より先に鈴鹿サーキットが出来て、それの舗装を参考にして高速道路が作られた」というホンダの人の話を検証する」http://kakuyodo.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-68a979.htmlという記事も書いているのであわせてご参照いただきたい。
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コメント
興味深いお話です。
そういえば「そらまめスピードウェイ」
http://soramame-race-circuit.blogspot.com/
というブログが未成のレース場についてかなり触れているのですが
(流石に、富士スピードウェイで飛行機がって話はないですが)
限りなく未成道に通じるニュアンスがあり興味深いです。
投稿: 関山 | 2021年4月14日 (水) 13時37分
関山様 コメントありがとうございます。
さっそく見に行ってきました。
昔のインフラを当時の記事と地図等でおっかけるのは私等とも似た感じですね。
貴重な情報ありがとうございました。
投稿: 革洋同 | 2021年4月14日 (水) 20時55分